イタリア赤ワインの王座の位置にあるバローロは北イタリアのピエモンテ州から生まれます。ピエモンテ州のランゲ地方にはいくつものワイン産地があり、そのうちのひとつがバローロ地区。この土地で14世紀から続く一族とは、一体どんな人たちなのでしょうか。
19代目のアルベルト・ディ・モンテツェモロさんは、父のジョヴァンニさんから引き継いで醸造とセールスの両方を担当しています。
「コルデロ・ディ・モンテツェモロ」の拠点は、バローロ地区の中でも西寄りのラ・モッラにあるモンファレットの丘にあります。この丘を1340年からずっと同家が守り続けてきました(16代目のルイジア・ファレッティまではファレッティ家が所有し、1941年からルイジアの孫のパオロ・コルデロ・ディ・モンテツェモロが継承)。
「自社畑の大半がこの一か所に集中しているので、栽培管理を行いやすいという利点があります。オーガニック認証も取得しています」とアルベルトさん。
オーガニック栽培をするにあたり、「植物が発するメッセージを読み取ることが大切」だとアルベルトさんは言います。じっくり観察することで、それぞれの畑や区画、あるいはブドウの木によって対処方法を適宜行うことが必要だということです。例えば、畝間には草を生やした草生栽培をするにあたっても、保水性や栄養分を加味して蒔く種の種類を変えているとのこと。どうすれば品質の高いブドウを得ることができるのか、常に研究しているそうです。
さて、拠点のあるラ・モッラから生まれるバローロは、繊細で飲み心地がよく、若いヴィンテージからでも楽しめるのが特徴です。
「バローロ モンファレット 2019」は、赤い果実の香りがしてなめらかな口当たりで、酸もタンニンも比較的ソフト。まさにラ・モッラらしい味わいの1本です。このワインは、ラ・モッラの14haの畑のすべての区画のブドウ(畑の向きもさまざまで、樹齢も10〜60年と多様)を使用している、「コルデロ・ディ・モンテツェモロ」のフラッグシップ的な存在です。
「バローロ ガッテーラ2019」は、モンファレットの丘の80%を占めるガッテーラMGAの11haの畑の中でも、古木で房が小さいブドウのみを用いて造られます。8区画を50〜60hlの樽で別々に醸造していて、そのうちの2区画は樹齢50年以上でワインに深みや凝縮感を与えています。こちらはとてもフローラルな香りが上品に立ち上り、スパイスも少々感じられます。ラ・モッラの特徴にしっかりとしたストラクチャーが加わっている印象です。
「バローロ エンリコⅥ 2019」は、ラ・モッラの南東に位置するカスティリオーネ・ファレット村のヴィレッロという由緒ある畑のブドウを用いたキュヴェです。祖父が1965年に2.2haの畑を購入したそうです。しかも樹齢50年以上と古木のブドウ。こちらはラ・モッラとは異なり、力強く豊かでストラクチャーがとてもしっかりしたワインができあがる畑ですから、数年間置いておいてゆっくり楽しむのをお勧めします。
<2019年の気候>
2019年は、温暖な冬で萌芽も早く始まったが、4〜5月に雨が多かった。夏は暑かったが適度に雨が降り暑すぎることはなかった。9月5日に強い雹に見舞われ、ドルチェットやシャルドネなどの早熟品種はすぐに収穫した。ネッビオーロはピンセットを使って被害にあった粒を除去するなどして対処した。9月後半の天候は良好で、ネッビオーロは10月9〜15日に収穫。
<補足:自社畑・管理畑>
ラ・モッラのモンファレットに28ha、ラ・モッラに長期契約畑6ha、カスティリオーネ・ファレットのヴィレッロに2ha、アルバに11ha(アルネイス、ドルチェット用)、ロエロに長期契約畑5ha(アルネイス用)
(Y. Nagoshi)
輸入元:スリーボンド貿易