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東京で開催された「第8回トゥールーズ風カスレ世界大会」、優勝はあの日本のカスレの王様店。寄り添ったワインは「キュヴェ・ミティーク」

写真/山本育子
2024年2月22日、東京の代官山で「第8回カスレ世界大会」が開催された。日本での開催は初という記念すべき大会でもあった。その貴重な日本での大会の模様とそこで供されたラングドッグ=ルーションのワイン「キュヴェ・ミティーク」をレポート。まずは「カスレ」という料理について少し説明しよう。

コラーゲンやタンパク質たっぷり、パワーもつき肌にもいい!?「カスレ」とは?


フランスのオクシタニー地方(主に南西部のラングドッグ=ルション地方)の郷土料理。白インゲン豆、太いソーセージ、鴨のコンフィや豚肉(メインの食材はその地方によって変わってくる)などをブイヨンと脂でコトコト低温でじっくり煮込み、豆に味を染みこませていく。仕上げは土鍋に入れオーブンの上火(あるいは暖炉の遠火)で焼くことで、表面に薄い焼き膜がつく。こうしてコラーゲンたっぷりで熱々濃厚な「カスレ」ができあがる。カスレの語源はこの地方で造られる「カスレール」と呼ばれる独特な土鍋の名前からついたというのが通説。オクシタニー地方(フランス南西地区)の郷土料理ということで、ここの三大カスレ産地「カステルノダリー風」「カルカッソンヌ風」「トゥールーズ風」と大きく分かれる。どこの地方が元祖で、美味しいのかという結論の出ない話しも繰り広げられているそうだ。まぁ、これはラーメン好きな日本人が「味噌ラーメンがいちばん」「いあや、豚骨でしょう」「いやいや基本は醤油」と侃々諤々語ることとあまり変わらない郷土料理自慢は楽しい論争だ。

第8回トゥールーズ風カスレ世界大会、決勝は6名のシェフが渾身のカスレを披露

今回の大会は「トゥールーズ風」ということは、「鴨のコンフィ」が基本に入ることが特徴だ。この「トゥールーズ風」カスレの世界一を、多くのエントリーから勝ち残った6名(6店舗)が決勝の東京大会で競い合った。
フランスからはトゥールーズにある「ル・ジャンテイ・マーグル」のブラール・ロマンさんがエントリー。ミシュランガイドでも「特筆すべきは、陶器の皿に盛られたこの店の名物料理、鴨のコンフィとソーセージのカスレ。完璧な下ごしらえと高度な味付け」と高評価されている名店。日本からのエントリーの大注目は「代官山パッション」のパッション・パトリックさんに尽きるだろう。

日本のカスレの父、アンドレ・パッションさん

代官山の「レストラン パッション」は、オクシタニー地方生まれのシェフであるアンドレ・パッションさんが1984年に創業したお店。アンドレさんは「カスレの王様」と呼ばれた名シェフのマルセルさんに学び来日した。「アカデミー・ユニヴァルセル・ド・カスレ」創設者・会長として故郷の郷土料理の食文化「カスレ」の普及にもつとめ、またフランス料理を日本で広めた功績から、フランス最高勲章レジオン・ドヌール勲章を受章している。アンドレさんを日本のカスレの王様と断言しても過言では無い偉大なシェフなのである。開催国に日本が選ばれたことはアンドレさんの存在無くしてはあり得なかっただろう、と推測する。パトリックさんはその長男であり現在「パッション」とそのセカンド店「ル・コントワール・オクシタン」を司る総支配人。「故郷の郷土料理」、「自店のスペシャリテ(この言葉以上の愛情溢れる一品)」、「日本での開催」……と、パトリックさんに取ってはプライドと日本の「カスレ」を背負った「負けられない戦い」なのであろう。

シェフたちの緊張感とは対照的に大会はお祭り状態

160名が集まる会場はまさに壮観だった。そして、観客はそれぞれの楽しみ方で大会に参加していた。

2月22日、決戦の会場は代官山プラザ。エントリーされた6つのカスレから審査員10名が選ぶ「優勝」(来年開催される第9回世界大会にディフェンディングチャンピオンとして出場権が得られる)、そして観客全員に一人一票が与えられ、その投票で決める「一皿」の2つの賞がある。なお観客も着席のディナー形式で食し投票するパーティでもある。 観客が続々と会場に集まり始めると、その雰囲気が想像していた「大会」とは少し違うのだ。160名の観客の4割がフランス人という華やかさ、世界一を決める緊張感というよりも、記念すべき東京で開催されるイベントをとにかく楽しもうという賑やかなお祭りそのものだった。日本人のゲストも次第にその雰囲気に引き込まれ、笑顔と歓声に包まれた幸せな共有空間ができあがっていった。各カスレが登場するときは、カスレの歌をゲストはナプキンを振りながら歌うというまるでコンサート会場かのようである。

知る人ぞ知るカスレが登場するときのテーマソング

エントリーレストランとシェフの名前は発表されるが、登場するカスレは順不同、審査発表までは明かされない完全ブラインド。一般参加者のお祭り状態とは対照的だったのは審査員10名のテーブル。エントリーされた6のカスレを「外見、香り、火の通り、味わい、余韻、バランス、白インゲンの滑らかさ、ジューシーさ、そしてトゥールーズ風カスレらしさ」などを真剣に審査する姿だ。

審査員はそれぞれ参加カスレを試食しながら語り合い採点していく。一般の参加者はみなさんそれぞれの楽しみ方。それがとても楽しそうで素晴らしい大会だった。

エントリーは次の6名。

当日のカスレ登場順に①「軽井沢ホテルそよかぜ」古越唯夫さん ②「セルリアンタワー東急」東宗史さん ③「代官山パッション/ル・コントワール・オクシタン」パッシヨン・パトリックさん ④「ブション・ドール~Chez Azuma」東敬司 ⑤「Le Genty Magre」ブラール・ロマンさん ⑥「Yasuyuki NONAKA(N’onaka)」野中靖幸さん※試食時はただカスレが運ばれるだけ。一切の説明は無い

そして……
会の終盤、アンドレさんが登壇し、各シェフにねぎらいの言葉と優勝者の発表となった。
一般参加部門で最も票を集めたのは「Le Genty Magre」のブラール・ロマンさん。名前が呼ばれたとき会場にいたフランス人の大歓声と拍手など体中を使って歓喜を表現。まさにワールドカップで優勝したときのようだ。

観客が選んだ美味しいカスレ第一位「Le Genty Magre」のブラール・ロマンさん
そして審査員が選んだ「第8回トゥールーズ風カスレ世界大会」優勝は「代官山パッション・コントワール・オクシタン」のパッシヨン・パトリックさん。こちらも会場全体が揺れるくらいの大歓声。その瞬間のパトリックさんは優勝という責任を全うできた達成感が喜びよりさきに表情に表れたようにみえた。
「トゥールーズ風カスレ世界大会」は前回大会はニューヨーク(米国)で開催され、今大会は日本で開催されたが、フランスでの大会も含めて、フランス以外の国が優勝することはかなりの難易度だった。そのようなことも考えると日本での開催で、日本が優勝、王者のタイトルが海を渡ったことは大変素晴らしい快挙でもあったのだ。

第8回カスレ世界大会優勝の「代官山パッション・コントワール・オクシタン」のパッシヨン・パトリックさん。

世界の「カスレ」を牽引する2店のワンツー・フィニッシュという結果に。
筆者も一般参加者で参加させていただいた。また、オクシタニーへ取材に行ったときには一日一食「カスレ」と決めて、さまざまなタイプのカスレも食べた。日本人シェフのカスレはどの作品も独自の工夫があり、本場のカスレに見劣りは一切しない秀逸なものだった。ただ、やはり、パトリックさんとブラールさんのカスレは頭1つ抜けていたと感じた。きっと審査も一騎打ちだっただろう。そのくらいの高レベルで審査員も苦労したのではないだろうか? 個人的には2番目に登場した東宗史さん(セルリアンタワー東京)のカスレ、山椒がアクセントとなって印象に残った。

主催者(フランス本国から来日)、参加者一同

優勝したパトリックさんは日本を代表する心意気でこの大会に臨み、そのプレッシャーは想像以上だったはず。ぜひ、次回、第9回大会でも存在感をみせ、連覇を期待したい。
心から「Félicitations(おめでとう)」。

ラングドッグ=ルーションのワインといえば「キュヴェ・ミティーク」

そして、今回の大会を盛り上げてくれたのはワインである。やはり、熱々のカスレをハフハフいいながら食べ、ワインが口中で一体感を持ったときの至福感といったら最高だ。カスレに合うワインはラングドッグ=ルーションの赤である(断言しよう!)。豚肉から抽出されるコラーゲンのとろみと旨味は、パワフルな赤ワインとは当然のペアリングなのである。いちばんのオススメは、今回の大会でも参加者が着席前からテーブルに鎮座していたワイン、「キュヴェ・ミティーク」である。

「ふくろう」のアイコンが描かれたテラコッタカラーのラベルでお馴染みの「キュヴェ・ミティーク」。ふくろうはローマ神話に登場する女神ミネルヴァの使いで、知恵の象徴として知られている。生産農家のワイン造りのノウハウ(=智恵)を結集してワイン造りをしているという「キュヴェ・ミティーク」を「ふくろう」が表現している。また、ラベルのテラコッタカラーは素焼きの粘土の色で、南フランスの豊かな大地(個人的にはカスレの土鍋色)をイメージ。

なぜ?「キュヴェ・ミティーク」

南仏ワインの知名度を飛躍的にアップし、実力を世界中に知らしめた功労者といえば、間違いなく筆頭は「キュヴェ・ミティーク」だ。
その魅力は、太陽をたっぷり浴びて健全に完熟したブドウのリッチな味わいと清々しいハーブ香に滑らかなタンニン、そして抜群のバランスの良さ。誰もが納得する高いコストパフォーマンスは、誇り高く情熱的なブドウ栽培農家や醸造家たちの固い結束に支えられて誕生する。1990年、先駆的なラングドックのワイン生産者のグループが新しいオリジナルのブレンドワインでラングドックにおける最高のワインを作ろうという歴史的な挑戦に着手したのが始まり。現在ではコルディエ社傘下となり、加盟している約4,100軒もの生産農家とともに、土地の伝統をベースに現代のニーズに合わせたエッセンスを取り入れたワイン造りを行っている。

 
作柄に左右されず高い品質を実現するため、毎年そのなかで特に出来が良い生産農家10軒のみを厳選し、熟練のブレンド技術を駆使して完成する超エリートにして手ごろな価格で日常の食卓をも飾ってくれる最強ワインが、キュヴェ・ミティークなのだ。赤ワインはシラーやグルナッシュ、カリニャンなど、南仏を代表するブドウの個性を巧みに融合させた緻密なバランスも大きな魅力。またグルナッシュ・ブランやマルサンヌ、ヴィオニエをブレンドした、キュヴェ・ミティーク白も南仏ワインの面白さに触れられビギナーから愛好家まで満足すること間違いなしだ。
ちなみに今回のカスレ世界大会では日本では未輸入という貴重なロゼワインもサーブされた。

大会は終わってしまったが、いつでもカスレとキュヴェ・ミティークを楽しめるお店、キュヴェ・ミティークとイタリアン料理を楽しめる編集部オススメの2店を紹介しよう。また、カスレではなくても、キュヴェ・ミティークはお肉を素材にした煮物(シチュー)や焼肉にももちろん相性◎なのでお家でもぜひ楽しんでほしい。ここは蘊蓄は抜きに、気負わずカジュアル。実力とセンス、遊び心を備えたこの1本にお任せ!なのである。

キュヴェ・ミティークを楽しめる編集部オススメの2店

ル・コントワール・オクシタン

住所/東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラスA-6
TEL/03-3476-5166
営業時間
ランチ  11:30〜16:00 (15:30 LO)
ディナー 17:30〜22:30 (21:30 LO)
代官山パッションのセカンドのフレンチビストロ。ワインも充実していて、樽から飲みたいワインを注いで飲むこともできる。もちろん、「カスレ」もオンメニューされているので、ここはぜひ注文してほしい。

https://pachon.co.jp/ja/jp-le-comptoir/

ガーリックガーリック 渋谷店

住所/東京都渋谷区松濤1-26-2-1F
TEL/03-5478-2029
営業時間
ランチ/12:00~14:30(LO:14:00)※ランチは土日祝日のみ営業
※アラカルトメニューのみ
ディナー/17:30-23:00(22:00 L.O.) ※土日祝日は17:00より
定休日/月曜日(不定休あり) ※月曜祝日の場合は翌日
渋谷の喧噪から離れたオシャレスポット松濤にあるニンニク料理の専門店。イタリアンをベースに青森県田子町産のニンニクを使ったさまざまな料理が楽しめる。キュヴェ・ミティークはまた力強い料理を受けとめてくれるので、相性◎だ。

http://garlicxgarlic.com/

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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