ワインにとって「古酒」というジャンルはとりわけ魅力に満ちた世界。また、ワインを飲み尽くした愛飲家だけではなく、ワインショップでは若い年代のワインラバーも興味を持つ人たちが増えてきていると聞きます。古酒関連の書籍の著書もある「秋津壽男」さんのが抜栓したワインは「シャトー クロ ラ マデリーヌ 1947」
「最高のワインを飲む」
「シャトー クロ ラ マデリーヌ 1947」
「戦後最高のワイン」「二十世紀最高のワイン」と呼ばれるワインが何本かあるが、そのうちの一つがサンテミリオンの「シュバルブラン1947」である。このワイン一時は一本100万円を超えていたこともある。この1947年はサンテミリオン全体に超当たり年で、周りのシャトーのワインも出色の出来であった。今回のワインはシャトー クロ ラ マデリーヌ 1947年である。6世紀から続く2.3haの小さなシャトーだが、オーゾンヌに隣接する好立地である。このボトルはシャトー元詰めではなく独占販売契約のベルギーネゴシアン詰めだ。
今回の舞台は「西麻布 すし拓」、鮨とワインのマリアージュを追及している稀有な店である。酢飯の酸、白身魚の磯の香りなどワインに合わすのがむつかしい要素が多々あり、特にウニ、数の子は特に難物である。拓さんは仕込み、下ごしらえからワインを意識され、邪魔しないだけではなく、ワインを引き立てる鮨を提供してくれる。今回ソムリエールでもある女性店主のプライベートな席に、特別に古酒を持ち込ませていただいた。華やかなブルゴーニュの古酒を楽しんだ後、見事に抜栓されデカンタージュ30分後にサーブされた。生姜の砂糖漬け、ドライマンゴーなどのドライフルーツ系の香りがトップにあるが、少しグラスをゆすると違うイメージがどんどん開いてきた。二杯目になるとプラムやあんずのコンフィチュールのような濃厚な果実味が現れてきた。赤身や中トロはもちろん、白身の昆布締めとも寄り添ってくれている。「偉大なワインとは単においしいことより、一杯のグラスの中にどれだけ複雑なストーリーを見せてくれるか」というのが私の持論である。