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オクシタニーはワイン好きも、旅好きも惹きつける魅惑の地 Part 1

オクシタニーのワインで行こう

海外の酒を愛する者にとって、昨今の物価高や円安は他人事ではない。なかでもフランスワインにいたっては、コロナが騒がれる前から著名な産地や銘柄の値上がりは甚だしかった。「買う本数を減らすか」「別の産地国で掘り出し物を見つけるか」と揺れる前に、フランスワイン愛好家がもっともチェックすべきはオクシタニーだ。
取材・文/山本ジョー 記事協力/オクシタニー地方観光局 写真/G.DESCHAMPS – CRTL Occitanie

写真/G.DESCHAMPS – CRTL Occitanie

観光地としても魅力あるフランス南部
「ロクシタン」とのワードに聞き覚えはあるだろうか。日本でもわりと知られた自然派コスメ系ブランドで、意味は「オクシタニーの女性」。フランス語よりもラテン語に近いとされるオック語が使われるフランス南部のエリアは、オクシタニー(オック語ではオクシタニア)と呼ばれてきたのだ。
2016年にフランスの行政区域が見直され、新たに生まれた「オクシタニー地域圏」は、ボルドー地方の東側から地中海に到達するまでを広く包括するワイン生産地である。ワインの教科書上での分類としては、シュッドウエストの一部とラングドック・ルーションを含む。
カスレと楽しみたいシュッドウエストのワイン
ボルドーを流れるガロンヌ川を遡上すると辿り着く内陸地のシュッドウエストは、今でこそ航空産業が盛んな大都市トゥールーズを抱えているが、ひとたび郊外へ出れば手つかずの大自然が色濃く残る。

トゥールーズ・ブラニャック空港は、エアバス社の工場と隣接。

東京でオクシタニー料理を提供するレストラン「パッション」のシェフ、アンドレ・パッションさんは、トゥールーズよりさらに地中海寄りのカルカッソンヌ出身。だが、幼少時は海を見るチャンスも少なかったという。カルカッソンヌから地中海までわずか80km弱の距離ながら、半世紀前までは、鮮度の高い海の幸がカルカッソンヌへふんだんに届く物流すら確立していなかった。
その物流や移動の制限が、逆に固有の文化を守り続ける最高の条件になる。他所では見られない建築、食、そしてブドウの地場品種までもが、今はオクシタニーを訪問する人々の心をときめかせているのだ。とくに惹かれるのは、やはりカルカッソンヌへ行ったら絶対に食べるべきのカスレ。アンドレさんのお得意料理、現地でも味わってみたい。

カルカッソンヌ名物料理のカスレ。様々な肉や腸詰を白いんげん豆とともに煮込む。

ラングドックワインは日本でもお馴染み
一方、オクシタニー東部のラングドック・ルーションにもまた、この地でしか表現しえない食やワインが存在する。地中海沿岸かつピレネー山脈の麓とあって、海と山の食材は潤沢。隣国スペインの影響も色濃く、フランス内外から観光客がおしよせるリゾート地として発展してきた。温暖でさほど手間をかけずともブドウがよく育つことから、ワインの生産量はフランス全体の40%をも占める。おかげで、ラングドックワインは日本でも入手しやすく馴染みがあるも。

地中海沿岸のコリウール名物、アンチョビ。意外に合うのは、酒精強化の甘口ワイン

さて、ワイン産地としてシュッドウエストとラングドック・ルーションをあらためて眺めてみると、両者には共通点がある。それは、長きに渡り安いカジュアルワインの産地として認知されてきたことだ。
とはいえ、より上を目指す生産者の志や技術革新で、オクシタニーには高品質なワインが次々と登場している。新世界ワインが辿ってきた道と同じように、オクシタニーもまた世間のレッテルをはねのけ、高級感あふれるブランディングを構築しつつある。まさに「フランス内の新世界」というべきドラスティックな進化を遂げつつあるオクシタニーから、次回は現場の声を聞いてみよう。

オクシタニーはワイン好きも、旅好きも惹きつける魅惑の地 Part 2 の記事はこちら

オクシタニーはワイン好きも、旅好きも惹きつける魅惑の地 Part3の記事はこちら

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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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