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WINE

「ヴィニェドス・ファミリア・チャドウィック」ライブラリーを試飲して確信するチリワインのラグジュアリーさ

文/山田 靖

チリワインがメインストリームに登場した2004年「ベルリン・テイスティング」とは?

「パリスの審判」と「ベルリン・テイスティング」は、ワイン関係者やワイン愛飲家では知らない人はまずいないであろう「ワインの価値観におけるターニングポイント」となった出来事である。「パリスの審判」はアメリカで映画化もされているので、観たことがある人もいるかもしれない。ひと言で説明すると、「ブラインド・テイスティング」で、カリフォルニアワインが名だたるフランスワインを抑えて白ワイン・赤ワインの両部門で1位を獲得した大事件(パリ・テイスティングともいう)」だ。そして、「ベルリン・テイスティング」とは、2004年にベルリンで開催されたブラインド・テイスティングで、チリワインの雄「エデュアルド・チャドウィック」のワインが名だたるボルドーの第1級格付けワインに圧勝した歴史的な出来事である。これによって、チリワインの世界的評価が変わったことは言うまでも無い。

このベルリン・テイスティング開催から20年目の今年5月、そのエデュアルド・チャドウィックが来日し、「ベルリン・テイスティング20周年記念イベント」がマンダリン東京で開催された。日本を代表するソムリエやワインジャーナリストなど、会場にはワイン業界全てが集合したと言っても言い過ぎはない顔ぶれが集まった。

とはいえ一般消費者にとってチリワインは、「コスパがいいそこそこのワイン」というイメージが強い。しかし実際の実力は世界基準以上と言えるし、世界基準がチリワインに近づいたという言い方もできるハイクォリティなワインを輩出している。ぜひ、いろいろなチリワインを試して飲んで欲しい。そして今回は、「ベルリン・テイスティング」の主役「チャドゥイック」を中心にその魅力を再確認してみたい。

以前に掲載されたWhy notマガジンの記事を少し引用しよう。

「コスパがいいチリワイン」とのフレーズで、すぐ思い浮かぶ価格帯とは? たとえば、5,000円クラスと想定される味わいの2,000円台ワイン、はたまた2~3万円クラスに匹敵する味わいの1万円ワイン……といったあたりか。ところで、チャドウィックは実売価格が5万円を優に超える超プレミアムワインである。そもそも味の質を価格で分けるのは無粋だと承知の上で、あえてチャドウィックの“実質味わい価格”は20~30万円とお伝えしておこう。

20~30万円との数字は、2004年に開催された「ベルリン・テイスティング」にちなむ。ボルドー5大シャトーやイタリアの銘醸ワインと、チャドウィックをはじめとするチリのプレミアムワインを並べてブラインドで試飲した結果、ナンバーワンに選ばれたのはチャドウィック。審査員の面々は、旧世界のワインに精通するイギリス人のワイン評論家やドイツ人のトップ・ソムリエであったにもかかわらず、彼らは数十万円の値が付くボルドーのシャトー物より高い評価を、同じカベルネ系であるチリのチャドウィックに与えたのだった。

2004年の「ベルリン・テイスティング」を今一度振り返ってみよう。当時過小評価されていたチリワインの実力を正当に認知して欲しいと、「ヴィニェドス・ファミリア・チャドウィック」の当主エデュアルド・チャドゥイックと「パリ・テイスティング」を主宰したイギリスのワイン評論家スティーブン・スパリュアが共催して、ヨーロッパを中心にワインジャーナリストやマスター・オブ・ワイン等36人が集まり、2004年1月ベルリンのリッツ・カールトンホテルでブラインド・テイスティングが開催された。登場したワインはチリワイン6種、ボルドー1級ワインやスーパータスカンなど10種、合計16種のワインだ。その結果は世界に衝撃を与えた。以下である。
1位 ヴィニエド・チャドウィック2000(チリ)
2位 セーニャ2001(チリ)
3位 シャトー・ラフィット・ロートシルト2000(フランス)
4位 セーニャ2000(チリ)
4位 シャトー・マルゴー2001(フランス)
6位 ヴィニエド・チャドウィック2001(チリ)
6位 シャトー・マルゴー2000(フランス)
6位 シャトー・ラトゥール2000(フランス)
9位 ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2001(チリ)
10位 シャトー・ラトゥール2001(フランス)
10位 ソライア2000(イタリア)
12位 グアド・アル・タッソ2000(イタリア)
13位 シャトー・ラフィット2001(フランス)
14位 ティニャネロ2000(イタリア)
15位 サッシカイア2000(イタリア)
16位 ドン マキシミアーノ ファウンダーズ リザーヴ2000

この結果の影響は計り知れず、チリのプレミアムワインの実力は世界に認知されることになった。
それから20年という節目の今年、チリプレミアムワインの再認知をという趣向でエデュアルド・チャドウィックが世界ツアーを行うことになり、その初回が東京で行われた。 今回のテイスティングアイテムは、世界ソムリエ協会会長の田崎真也さんと元フジテビアナウンサー、現・弁護士の菊間千乃さんが現地で試飲して選ばれた。今回の試飲リストは以下の通り。

 「ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ 1984」
 「ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ 2005」
 「ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ 2021」
 「セーニャ 1998」
 「セーニャ 2008」
 「セーニャ 2018」
 「セーニャ 2021」
 「カイ 2010」
 「カイ 2015」
 「カイ 2021」
 「ヴィニエド・チャドウィック 2000」
 「ヴィニエド・チャドウィック 2014」
 「ヴィニエド・チャドウィック 2021」

「ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ」
最初の「ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ」は、アコンカグア・ヴァレーの3つのブロックの畑から収穫されたブドウが使用されている。また太陽が真上から射し紫外線も強いため、皮が厚くてブドウの色素が濃く、最初はカベルネ・ソーヴィニヨン100%で造られていたが、95年以降カベルネ・フラン等とのブレンドというスタイルが始まり今に至っている。また2011年ぐらいから収穫の考え方が変わり、エレガントな印象にすべく、収穫を遅くして糖度の上昇を遅くしたという。

「セーニャ」
セカンドフライトは「セーニャ」。ボルドースタイル的であり、アコンカグア・ヴァレーらしいブレンドを表現された世界1級格付けのワインを造ろうと始まったロバート・モンダヴィとのジョイントベンチャーで産まれたワインだ。 今回は当初3ヴィンテージのセレクトだったが、田崎真也さんの現地テイスティングでどうしても3本に絞れず4ヴィンテージになった。現地で試飲した際、2018年が特に素晴らしい仕上がりで日本では特別のセレクトになった。大きな特徴は2015年からマルベックがブレンドに加わり、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネールがアコンカグア・ヴァレー・ブレンドの主体となる品種であり、2021年は「セーニャ」の完成形なのではないかと田崎さんは考察されていた。

「カイ」
サードフライトは「カルメネール」の最高傑作とも言われている「カイ」。カルメネールという品種は、19世紀のフィロキセラの流行で原産地のボルドーから姿を消した品種。チリのテロワールとカルメネールの相性がよく、この品種を使ったユニークなプレミアムワインが「カイ」。ちなみにカイはチリの先住民の言語で「植物」。

「ヴィニエド・チャドウィック」
最後のフライトはヴィニエド・チャドウィック。2004年のベルリン・テイスティングで一位に選ばれたワインで、チリワインの歴史を変えた1本と言われている。2021年はあらゆるワインの評価機関で100点を獲得、俗に600点を獲得している。テロワールは、最高のカベルネ・ソーヴィニヨンを産むチリのグランクリュ「D.O.プエンテ・アルト」。元はチャドゥイックさんの父親ドン・アルフォンソが購入し、ポロの競技場だったものをチャドゥイックさんが説得し15hの土地にカベルネ・ソーヴィニヨンを植えたのが始まりだった。

左から「ヴィニェドス・ファミリア・チャドウィックの5代目当主エデュアルド・チャドウィックさん、次代を担う4姉妹の末っ子アレハンドラ・チャドウィックさん、菊間千乃さん、田崎真也さん

今回の「ベルリン・テイスティング20周年記念イベント」は全てが特別な体験ではあるが、チャドゥイックさんの各種ワインを縦でテイスティングすることでその進化を、またオリゾンタル(横)に各ワイン2021年をテイスティングすることでテロワールの多様性と完成形を感じることができるという希有な体験であり、チリワインの素晴らしさを再確認することができた。

チリワインをセレクトするそれは感性に優れた贅沢なひと

今回の「ベルリン・テイスティング20周年記念」をながながとレポートしたけれど、参加した人以外、あまり興味を感じないことかもしれない。だた、感じてほしい。最初に書いたが、「チリワイン=コストを抑え非常に安価でそこそこ美味しい」ワインというものではない。筆者はチリワインを「アフォーダブルなワイン」であると常々表現している。「アフォーダブル」には「手が届く」という意味を思い浮かべるかもしれないが、こうともいえる。「自分らしい贅沢を知る」と。今回紹介したヴィニェドス・ファミリア・チャドウィックのライブラリーワインは参考価格11,000円~60,000円くらいである。ベルリン・テイスティングでは、その価格の何倍もするワインを退けている。チャドゥイックのワインが評価されたわけだが、それによってチリのワイン生産者にとってはさらなる高みを目指す橋頭堡となったことは想像に難くない。その証左にいまや多くのチリワインは品質も世界基準だと断言出来る。チリだから1,500円前後なんて「チープ」な思い込みはやめて、もちろんチャドゥイックさんのワインに手を延ばしてほしいが、まずは5,000円以上のワインを試してほしい。その体験は今後あなたのワインセレクトに大きな変化をもたらしてくれる。それは「アフォーダブル・ラグジュアリー」という新しいワインの選択の扉であり、あなたらしいワイン選びは「価格じゃ無くてセンス」なのだと気付かせてくれるだろう。

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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