「E.ギガル」は「キング・オブ・ローヌ」とも呼ばれる、フランスのコート・デュ・ローヌ地方のワイン生産者です。コート・デュ・ローヌ地方から北へ向かうとブルゴーニュ地方が、西へ向かうとボルドー地方があります。このような立地にあるコート・デュ・ローヌの北部から南部まで、さまざまな地区のブドウから、それぞれの土地の個性やブドウ品種の特性を映し出す多彩なワインを生み出しているのが「E.ギガル」です。
さて、そんな「E.ギガル」のワイン会をWhynot?マガジン主催で行うことができました。大盛り上がりした様子を、少々お伝えしたいと思います。開催場所は、オシャレだけれど肩肘張らない雰囲気の「虎ノ門ヒルズステーションタワー ダブリュー・虎ノ門 ザ・マーケット」。すぐ隣にはワインを豊富に取り揃えたフードマーケット「カスク cask」があり、まさにワインが飲みたくなる空間です(ちなみに、カスクで購入したワインを、抜栓料1,500円/本にてダブリューで飲めます)。
今回は、Whynot?マガジンの人気連載コラム「今夜ワインが飲みたくなるはなし」を寄稿いただいているソムリエであり、ワイン講師でもある紫貴あきさんがガイド役を務めてくださいました。
さすが超人気ワイン講師の紫貴さん、ローヌのワインの特徴や「E.ギガル」ならではについてとてもわかりやすく、印象的に解説していただきました。
例えば、こんなクイズが!
答えは、B) 川に沿って風が入り込んでくることで寒暖差が生まれるだけでなく風通しが良いことで病虫害が発生しにくいなど、ワイン用ブドウ栽培に理想的な環境をもたらします。
答えは、C) ガレとは大きな石(漬物石のようなイメージ?)。シャトーヌフ・デュ・パープ地区の一部でこの大きな石だらけの場所があり、ブドウの成熟に大きな影響を与えています。
答えは、C) コート・ロティが「E.ギガル」の代名詞でもあり、ギガルがコート・ロティの代名詞でもあります。中でも最も有名なのが「E.ギガルの三つ子の兄弟」と呼ばれているコート・ロティの単一畑キュヴェ、「ラ・ムーリーヌ」、「ラ・ランドンヌ」、「ラ・テュルク」。いずれも少量生産で稀少なのでなかなかお目にかかれませんが、一度出会うと虜になること間違いなし。
ただ、紫貴さんも指摘したのは、「ローヌはボルドーの次に、上級ワインであるAOCワインが多い産地です。でも、まだあまり実力が知られていない産地でもあります」、という点です。ある意味で、お宝がまだまだ埋もれている産地であるとも言えるのです。
そしてダブリュー・虎ノ門の店長、藤波聖さんが率いるチームが素晴らしいペアリングメニューを準備してくれましたよ! その内容をご紹介しましょう。
「コート・デュ・ローヌ ロゼ 2021」✖️「産直秋野菜のロゼテリーヌ」
アペリティフでもあり、最初の一皿に合わせたのは「コート・デュ・ローヌ ロゼ 2021」。このロゼワインのボトルはちょっと特殊な加工がされています。ワインが入っている時には気がつきませんが、ワインが減っていくとあら不思議!? 美しい模様が見えてくるのです。これ、2020年ヴィンテージからなのですが開発には2年を要したと聞いています。味わいだけでなく、ワインを飲む時の楽しさの演出にもこだわるギガル一家の思いが溢れていますね。
ワインは、赤いベリー系果実やピンクグレープフルーツのようなフレッシュな香りが清々しく、しなやかなアタックで、まろやかな食感ながらすっきりとした塩っぽさのある後味でもう一口飲みたくなる味わいです。
野菜のテリーヌは、産直の今治野菜が鮮度高く、ロゼに合わせてビーツでピンク色のソースを添えてあります。紫貴さんの「野菜のうま味とワインのほろ苦味がよく合い、柔らか過ぎない野菜の食感が、しっかりとしたワインの味わいにしっくりきます」というコメントに同感でした。ロゼと野菜料理。オシャレでヘルシーな組み合わせ!
「クローズ・エルミタージュ ブラン2020」&「コンドリュー 2020」✖️「気仙沼産鰹の藁焼き ラビゴットソース」、「徳島県あわ育ちのウフマヨ トリュフと瞬間スモーク」&「シャインマスカット、グレープフルーツ、モッツァレラストラッチャテッラのマリネ」
お次は、2種類の白ワインと前菜3種の組み合わせ。
「クローズ・エルミタージュ ブラン2020」は、白桃のような熟度の高いフレッシュな果実が香り、ボリューム感と生き生きとした酸のバランスが良く、ジューシーな余韻です。紫貴さんはこのワインにほんのり感じる「スモーキーさが鰹の藁焼きのスモーキーさと良く合う」とのコメント。
そして、卵料理についての紫貴さんのコメントが面白い。「卵は色っぽいのでワインになかなか合わないと言われています。卵の黄身の部分だけ食べてワインを飲むと色っぽくなりますが、マヨネーズソースを付けて食べて、そしてワインを飲むと味が変わると思いませんか?マヨネーズの塩味がワインを引き立てるので、ぜひマヨネーズを付けて召し上がってください」とのおススメでした。
フルーツをストラッチャテッラ(モッツァレッラと生クリームが合わさったチーズ)でマリネした一品は、「コンドリュー2020」と驚くほどの相性の良さでした! もともとコンドリューは白い花や白桃のような華やかな香りが魅惑的で、まろやかなテクスチャーとフレッシュさが相まった味わいです。この一皿にも同じような要素があるので、どちらの香りもより華やかになって立ち上り、チーズの塩味がワインと料理のコクを強調するという素晴らしい組み合わせでした。思わず、どちらもお代わりしたくなりましたよ。
「サン・ジョゼフ ルージュ 2019」&「シャトーヌフ・デュ・パプ 2018」✖️「ラム肉のソーセージ レンズ豆のカスレ風煮込み」
今度は赤ワイン。ローヌの北部と南部の赤ワインを一つの料理と合わせてみると、意外にも相性の違いが浮き彫りに! ソーセージそのものは、ラム肉らしさがありながら南仏産のハーブをたっぷり使っているためか臭みは感じられずにジューシーな味わいです。
「サン・ジョゼフ ルージュ 2019」は、スパイシーさ、熟度の高い赤い果実、ほのかななめし革などの香りがし、果実味のなめらかさやボリューム、力も感じられ、しっとりとした味わいです。ラム肉のソーセージとの相性は、ワインの果実味が生き生きとして感じられるジューシーな相性です。
「シャトーヌフ・デュ・パプ 2018」は、プルーンやチェリー、スパイスなどのギュッと凝縮感ある香りで、味わいは力強く、タンニンのストラクチャーもしっかりしてボリューミーです。このワインは、ラム肉のソーセージを包み込み、とてもまろやかな相性でした。
「コート・ロティ ブリュヌ・エ・ブロンド・ド・ギガル2019」✖️「鴨のロティ ビーツとベリーとE.ギガルの赤ワインのソース」
さて、いよいよ「E.ギガル」の真髄であるコート・ロティの登場です! スパイス、赤い果実、スモーキーさを感じるアロマで、しなやかなテクスチャーととてもフレッシュな酸、そして長くて上品な余韻です。柔らかな鴨肉の食感と、とても自然体で心地良い相性でした。
さすがコート・ロティ! と、その余韻にひたっていると、最後にサプライズワインが出ると言います。さあ、それはいったい???
なんとくだんの「ギガルの三つ子の兄弟」と呼ばれているコート・ロティの単一畑キュヴェ、「ラ・ムーリーヌ」、「ラ・ランドンヌ」、「ラ・テュルク」のうち、「ラ・ムーリーヌ」! しかも2009年というオールドヴィンテージです。ちょっと考えられない展開に、会場の皆さんもびっくり!
「コート・ロティ ラ・ムーリーヌ 2009」
貴重な一口をいただくと、上品そのもの! 三兄弟のうち「ラ・ムーリーヌ」が最も上品で、「ラ・テュルク」が最もパワフルでエネルギッシュ、「ラ・ランドンヌ」はその中間の個性を備えています。上品さに熟成による円熟味や妖艶さが加わっているのです。しなやかなアタックからずっとバランス良く、タンニンは細やかですでに溶け込んでいます。そして熟成感はありながら余韻はフレッシュで優しく、なめし革やスパイスの香りが残り、何しろバランスが良く終始上品。一瞬、出汁のようだと思いました。しかも鰹節というよりは昆布の出汁主体に少々鰹節を足した一番出汁のような感覚です。
今回のE.ギガルのワイン会を経て思ったのは、コート・デュ・ローヌという地方はボルドー好きにもブルゴーニュ好きにも勧めたくなる産地であるということです。例えば北部ローヌのワインは赤も白も上品で立ち上るような香りがあり、フレッシュな酸の芯がしっかりしているという意味でブルゴーニュファンの好みにそのまま合うでしょう。南部ローヌのワインは赤も白も豊かさがあり、ボリュームやタンニンのストラクチャーがしっかりしているという意味でボルドーファンの好みにそのまま合うでしょう。それに加えて、特に若々しいヴィンテージはどちらかといえばボルドーに近い要素が感じられ、熟成とともに出し汁的なニュアンスが備わってブルゴーニュに近い要素が感じられるようなイメージでしょうか。
昨今、ボルドーワインもブルゴーニュワインも高騰続きでため息が出ることがありますから(苦笑)、そういう時にはまだ手の届く範囲にあると言えるコート・デュ・ローヌが穴場かもしれません。自分の好みはどの地区なのか、「E.ギガル」のラインナップで試してみてはいかがでしょうか。きっとタイプが見つかるはずです。
輸入元:ラック・コーポレーション
(photos by Ikuko Yamamoto / text by Y. Nagoshi)
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