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先入観にとらわれず、今のアルザス&コート・デュ・ローヌのワインの魅力を探る!

9月上旬に、フランスのアルザス地方とコート・デュ・ローヌ地方の合同試飲会が行われました。それに合わせて、両生産地から生産者委員会を代表してアルザスからはティエリー・フリッチュさん、コート・デュ・ローヌからはクレマンス・デュランさんが来日。それぞれの最新情報を聞きました。どうやらまだ日本のワイン業界では、これまでのアルザスワインやコート・デュ・ローヌワインのイメージをそのまま持っているようです。皆さん、既成概念を取り払い、早速アップデートしてください!

【アルザスワイン編】

<その1:アルザスといえばスティルワイン?>

アルザスといえば、リースリングやゲヴュルツトラミネールといった白ワインを思い浮かべる人が多いと思います。しかしスパークリングワインのクレマン・ダルザスが増えているようです。

「私がアルザスワイン委員会で仕事を始めた27年前は、アルザスワイン全体に占めるクレマンの割合は14%しかありませんでした。でも今では26%以上です。ちょうど昨年2022年に日本市場に輸出されたアルザスワインの中でクレマンが占める割合も、偶然にも同じ26%以上でした」と、ティエリー・フリッチュさんは言います。

「フランスではシャンパーニュの次に飲まれているスパークリングワインが、クレマン・ダルザス。フランスには8つのクレマンがありますが、その中でリーダー的役割を果たしています。クレマンが伸びている理由ですか? 消費の変化が影響していると感じています。以前はワインに対して複雑で格式ばったイメージを持つ人が多かったのですが、現代ではカジュアルに時間を楽しむために飲む人が増えています。クレマンは冷やしておけばすぐに楽しめるし、リフレッシュさせてくれますから」。

「ブドウ品種がリースリング、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、シャルドネ、オーセロワ、ピノ・ノワールなど多様なこと。そして、価格・品質・喜びのバリューが高いこと。これがアルザスワインの特徴といえます。そのアルザスワインの入り口、扉の存在がクレマン・ダルザスではないでしょうか。アペリティフから食事までさまざまなオケージョンで楽しんでいただきたいですね」。

つまり答えは、スパークリングワインも増加中! なのです。

<その2:アルザスのグラン・クリュって?>

アルザスには「グラン・クリュ(特級畑)」格付けがあります。地質が複雑で多様な土壌があるアルザスでは、51のグラン・クリュが認められています。アルザスワインにとってグラン・クリュの存在とはどのようなものなのか、聞きました。

アルザス グラン・クリュについてはこちらをご参照

「アルザスのフラッグシップ的な存在です。地質が多様なアルザスの根っこの部分と言っても良いかもしれません。アルザスには大きく分けて13種類の地質があり、世界中の地質のショーケースでもあります。ブドウ品種よりもテロワールの存在感が大きいのがグラン・クリュです。例えば、リースリングやゲヴュルツトラミネールから造られるワインは、ドイツやオーストラリアやアメリカにもあります。しかし、グラン・クリュ・シュロスベルグのリースリングはアルザスからしか生まれません。品種の個性を超えてテロワールの特性が造り上げるものだからです」。

「グラン・クリュのワインは、語ることが多くあります。遥か彼方の昔からの地殻変動によってもたらされた多様なテロワールがあり、その多様性をしっかりと理解しながらブドウ栽培を行ってきた人間の存在も重要です。そしてさらにグラン・クリュのワインを楽しむためには、ワインの特性を理解しておくことも必要になります」。

「大きく分けて、畑の上方に位置する結晶化した火山性の土壌、例えば花崗岩土壌のワインから飲み始めることをオススメします。収穫年から1〜2年で開き始め、香りも味わいもエレガントで真っ直ぐですから。一方で、畑の下方に位置する堆積土壌、例えば粘土石灰質や泥灰土から生まれるワインは5〜7年待つ方が良いですね。粘土土壌のワインは力強く幅広く、石灰質土壌のワインはしっかりとした酸があり、泥灰土壌のワインは重厚です」。

奥深いアルザスワインの世界観を楽しむには、偉大なグラン・クリュは超重要な存在です!

<その3:アルザスといえば白ワイン?>

アルザスといえば何と言っても白ワインが有名です。ところが、近年ピノ・ノワールの赤ワインが大注目され始めています。昨年すでに「ヘングスト」と「キルシュベルグ・ド・バール」がピノ・ノワールのグラン・クリュとして認定され、来年には「フォルブール」も加わるのではないかと言われています。さて、その理由とは。

「ピノ・ノワールこそ、アルザスワインに対する既成概念を崩したいと思わせる存在です。20年前とはまったく異なる状況で、とても進化しています。理由のひとつは気候変動によってブドウの成熟度合いが上がっていること。次に、消費者のテイストも変化してきていることが挙げられます。かつては力強くてタンニンもしっかりした重厚なワインがもてはやされていましたが、近年はエレガントでフィネスのあるワインがより好まれるようになってきました。そしてさらに、生産者の世代交代も影響しています。若い世代は各国のワイン産地を訪問し、さまざまな新しい技術や情報を得て帰ってきます。ピノ・ノワールはとても手間のかかる品種ですからね」。

ピノ・ノワールのファンの方々は、大躍進中のアルザス ピノ・ノワールを要チェックです!

(下にオススメワイン5選があります!お見逃しなく!)

【コート・デュ・ローヌワイン編】

<その4:コート・デュ・ローヌといえば赤ワイン?>

南仏のコート・デュ・ローヌといえば、やはり赤ワインを連想します。ところが近年ではロゼワインや白ワインが注目され始めているとか。実際のところどうなのでしょうか。2022年の全生産量のうち、87%は赤ワインで、白ワインは7%を占め、ロゼワインは6%を占めています。

「消費の傾向が変化しているので、多様性あるポートフォリオにしたいと考えています。2031年には白ワインの生産を30万hlまで上げる計画を立てています」と、クレマンス・デュランさんは言います。

「コート・デュ・ローヌにおいても、例えば北部のコンドリウやサン・ジョセフは花崗岩土壌から南部のタヴェルの大きな丸石のガレまで、多様なテロワールを内包しています。そして多様なテロワールから個性豊かな白ワインが生まれています。生き生きとしてフレッシュなタイプ。フルーティーでグルマンなタイプ。そして、豊潤で複雑性のあるタイプもあります。昨年2022年の9月には、AOCジゴンダスで白ワインも認可されました。 AOC表示は2023年ヴィンテージからです。将来へ向けて、ほかにも偉大な白ワインのポテンシャルがある土地を探求している最中です」。

「ロゼワインは大きく分けると2つのタイプがあります。ダイレクトプレスによるもので、フルーティーな香りで味わいも上品なタイプ。もうひとつはタヴェルのように、フェノール成分が豊かで色も濃く、芳醇でガストロノミックなタイプ」。

白ワインやロゼワインの生産量が急拡大中で、選択肢が増えてきているのですね。とすれば、日本の日常の食卓にも合わせやすいに違いありません。ちょっと意識してワイン売り場の棚を覗いてみたいですね。

<その5:コート・デュ・ローヌといえばシラー×グルナッシュ?>

コート・デュ・ローヌでは、やはりシラーとグルナッシュが赤ワイン用の花形品種です。ブレンドする場合でも、この2品種が主体ではありますが、品種構成にはどうやら変化があるようです。

「グルナッシュは35,000ha、シラーは23,000ha栽培されていて、主要品種であることに変わりありません。しかし最近は、南部はとくに夏が暑くて乾燥するので、例えばカリニャンなど、近年の気候変動に適応できる品種を新たに植え始めている生産者が増えています。グルナッシュ、シラー、ムールヴェードルといった主要品種に、数%ずつ加える補助品種に何を使用するのか、さまざまな工夫をし始めています。例えばロゼにサンソーをブレンドすると、フルーティーさや繊細さを加えることができます」。

「コート・デュ・ローヌのワインを飲むときには、ワインの温度帯に気をつけてほしいと思っています。白ワインなら8〜10℃、ロゼワインは10〜12℃、赤ワインは若いものなら13〜15℃で数年熟成させたものなら15〜18℃をオススメします。とくに赤ワインは少し低いかな、と思うぐらいが良いと思います。温度が高いと若い人たちは『重い』とか『骨格が強すぎる』と敬遠するかもしれないので」。

「コート・デュ・ローヌでは23種類のブドウ品種が認可されていて、そのうち8種類が白ブドウです。2000年以上前からブドウ栽培とワイン造りを行ってきた歴史があり、ブレンドの技術にも長けています。歴史について話し始めると何時間もかかってしまいますけれど、長い歴史に基づいた経験や知識によって、今、市場が求めている多様性に対応できる産地であると自負しています。価格・品質・喜び、この3つのパフォーマンスがとても高いのがコート・デュ・ローヌのワインです」。

多様性が増しているようですね。

アルザスワインとコート・デュ・ローヌのワインの共通点は、ブドウ品種や土壌に多様性があることに加えて、「価格・品質・喜び」の3拍子が揃っているということだとわかりました!

アルザス、コート・デュ・ローヌの「今」が分かるオススメワイン、各5選!

【アルザス編】

Alsace Pinot Noir <<V>> 2020  Famille Muré

アルザス ピノ・ノワール <<V>> 2020 生産者:ファミーユ・ミュレ(輸入元:オルヴォー)

「ミュレはアルザスのピノ・ノワールの大手生産者。フォルブールはグラン・クリュに値すると言われているがまだグラン・クリュとして認められていないので、フォルブール(Vorbourg)の頭文字 ”V”のみを記している。おそらくフォルブールは3つ目のピノ・ノワールのグラン・クリュとして来年には認められるだろう。2020年のピノ・ノワールはどこのものも素晴らしい出来。石灰質土壌に由来するまっすぐさと酸、粘土質に由来するシルキーなタンニンがこの畑の特徴。時代の流れとともに変化してきたワインとも言える。父のルネの時代には、全房発酵で長いマセレーションを行い抽出たっぷりで、焼きの強い樽で熟成させていた。しかし今では娘のヴェロニクと息子のトマとが中心になり、マセレーションを短くし旧樽のみにし、樽香のない赤い果実の風味が主体のまろやかなタンニンのワインになっている」。バイオダイナミックを実践し、ビオディヴァン認証取得。

Alsace Gewurztraminer Lieu-Dit Hornstein 2019 Robert Roth 

アルザス ゲヴュルツトラミネール リュー・ディ・ホーンスタイン 2019 生産者:ロバート・ロス(輸入元:稲葉)

「これは(クリュではなく)600あるリュー・ディのひとつホーンスタインで、粘土石灰質土壌。家族経営のドメーヌで、ゲヴュルツトラミネールの素晴らしい表情を見せてくれる好例のひとつ。バラの花、ライチー、胡椒などの香りが心地良く、芳醇な味わい。ゲヴュルツトラミネールは、甘くてアルコール度数が高いと思っている人が多いはず。この既成概念も壊したい。このワインは辛口でありながらとてもバランスが良く、若いうちに楽しむタイプ。タイ料理の牛肉を使ったスパイシーなサラダなどがオススメ」。

「それから、甘い香りがすると味わいでも甘いと勘違いすることがあるが、このワインは辛口。そして、2021年から甘さに関する表示が必須になり、辛口Sec、中辛口Demi-Sec、甘口Doux、モワルーMoelleuxと表記することになる」。

Crémant d’Alsace Brut Réserve Particulière NV Cave de Orschwiller

クレマン・ダルザス ブリュット・レゼルヴ・パルティキュリエール 生産者:カーヴ・ド・オルシュヴィレール (輸入元:ローヤル・オブ・ジャパン)

「アルザス北部の生産者。アペリティフ用にオススメ。ブリュット仕立てで酸がしっかりしている。トースト、ヘーゼルナッツ、白い花が香る。長い余韻があるタイプではないが、食事の最初に食欲を湧かせる一杯に最適。6〜7℃に冷やして飲んでほしい。歯応えのある食材とも良いし、脂の乗った魚をすっきりと食べさせてくれる」。ブドウ品種はピノ・ブラン。

Alsace Grand Cru Riesling Sommerberg “JV”2019  Albert Boxler

アルザス・グラン・クリュ・リースリング ソメルベルグ“JV” 2019 生産者:アルベール・ボクスラー(輸入元:横浜君嶋屋)

「100%花崗岩土壌で、円形劇場型の南向き斜面にある畑。こちらはさらに花崗岩の特徴がはっきり表現されている。柑橘類、洋梨、桃、パイナップルなどの豊かな香りがし、まっすぐでエレガントで、塩っぽさがあり唾液が出てくるような味わい。まさにグラン・クリュらしく、輪郭のある酸があり余韻が長い。余韻がとてもソルティー。ちなみに、2023年のように水分が十分に蓄えられた年の花崗岩土壌は実に素晴らしいワインを生む」。

Alsace Grand Cru Riesling Kirchberg de Barr 2020 Vincent Stoeffler

アルザス・グラン・クリュ・リースリング キルシュベルグ・ド・バール 2020 生産者:ヴァンさん・ショフラー(輸入元:スマイル)

「アルザス北部に畑を所有する小さなドメーヌ。堆積土壌のグラン・クリュ、キルシュベルグ・ド・バール。ピノ・ノワールのグラン・クリュでもある。泥灰土と石灰土壌が幅のある味わいを形成している。厳格な香りで、柑橘やスパイス、そして火打ち石のようなニュアンスが口中でも広がる。厚みがあり、口中では石灰質土壌に由来するしっかりとした酸が感じられる。5年ほどおいておくと開いてくる。これも既成概念を覆す必要がある。このように数年待って飲むのがオススメのワインもある。フェノール成分と酸が一体化する5年後ぐらいには、香りもより豊かになって今の柑橘類の香りに蜜蝋やペトロールが加わる。どちらかと言えば魚より仔牛肉や豚肉との相性が良い。例えば、ブランケット・ド・ヴォーのような生クリーム、卵、レモン果汁を使った仔牛肉料理と合わせたい味」。有機栽培を実践しており、AB認証を取得している。

【コート・デュ・ローヌ編】

Vacqueyras “Les Clefs d’Or” 2020 Domaine Le Clos des Cazaux

ヴァケラス白 レ・クレ・ドール2020ドメーヌ・ル・クロ・デ・ガゾー(輸入元:アポジェ)

「ヴァケラスは、白・ロゼ・赤のすべてを造っている多様性ある産地だが、白ワインはまだ多くはない。南の産地から生まれる白ワインをぜひ試していただきたい。認証は取っていないけれど有機栽培を取り入れている。白い花のアロマがあり、エレガントでとてもフレッシュなのが特徴。南といってもボリューミーなタイプではない。ブドウ品種は、クレーレット50%、ルーサンヌ50%」。

Côtes du Rhône Blanc Saladin Per El 2021 Domaine Louis Saladin & Filles

コート・デュ・ローヌ白 サラディン・ペール・エル 2021 ドメーヌ・ルイ・サラディン&フィーユ(輸入元:木下インターナショナル)

「家族経営の生産者で、マリーローラン&エリザベット姉妹が造っている。父のために造ったキュヴェだけれど、そのラベルには「ペール・エル(彼女のために)」と記してある。つまり、父にとっての「ペール・エル」は妻であり、姉妹の母のために、という命名。クレレット、ブールブーラン、ルーサンヌ、マルサンヌ、ヴィオニエ、グルナッシュ・ブランの6品種をブレンドし、ステンレスタンクだけで醸造している。フレッシュ感があり、アペリティフから軽いおつまみ、あるいは魚料理などと楽しめる。アロマティックでフルーティー、そして口当たりも心地よい。この地方にはとても大きな洞窟があり、何社かがグループになって、ワインの保存を行っている」。

「ローズマリーなどのドライハーブ、いわゆるガリーグの香り。ローヌ南部のこの白ワインは、アルザスとは異なるバランスで、酸は控えめだが塩味がありこのソルティーさが味わいを支えている」と、ともに試飲したティエリーさんもコメント。

Côte-Rotie Les Jumelles 2017  Paul Jaboulet Ainé

コート・ロティ レ・ジュメル 2017 生産者:ポール・ジャブレ(輸入元:三国ワイン)

「コート・ロティの、コート・ド・ブラン地区のブドウとコート・ブロンド地区のブドウをブレンドして造っているキュヴェ。100%シラーで樹齢30〜40年の古木。12か月樽熟成で20%が新樽。今ようやくエレガントになり飲み頃になってきたところ。酸とタンニンのバランスが良く、エレガントになりシルキーなタンニンで余韻が長い。鴨肉、ハト、ウズラなどの肉料理と、特別な時に開けてほしい」。

Côtes du Rhône Rosé 2020 E.Guigal

コート・デュ・ローヌ ロゼ2020 生産者:E.ギガル(輸入元:ラック・コーポレーション)

「コート・デュ・ローヌの有名なネゴシアンのひとつで、いくつものドメーヌの所有者でもあるギガルが造るロゼ。石灰質土壌と花崗岩土壌で育つグルナッシュ主体(70%)に、サンソー(20%)とシラー(10%)をブレンドしている。グルナッシュはフルーツとガストロノミックな要素を、サンソーはフルーティーさ、シラーは色合いに貢献している。赤い果実の香りが口の中でも長く続き、食卓で楽しみたいロゼワイン。発酵前に低温浸漬しているのでガストロノミックな味わいに仕上がっている。魚を使ったおつまみや、クリームソースの料理と相性が良い」。

Côtes du Rhône Village Valréas Réserve 2019 Domaine La Decelle/Lavau

コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ ヴァルレア・レゼルヴ 2019 生産者:ドメーヌ・ラ・ドゥセル/ラヴォー(輸入元:ヴァン・ドール/ケアユー)

「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュの22の村名付きのうちのひとつ。ラヴォーというネゴシアンが造るブランド、ドメーヌ・ラ・ドゥセル。ここの土壌は粘土石灰質。グルナッシュ(50%)とシラー(50%)によるクラシックなブレンドで、一部だけ6か月間旧樽で熟成している。黒い果実や赤い果実の香りが豊かで、フレッシュな味わいを小樽によりフェノール分をプラスして味わいを引き締め、料理との相性を良くしている」。

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