お酒を自由に楽しみ、セレンディピティな出会いを

SDGs

じだいをかえる、かわりものたちのおはなし アレトコレ ココ

ユニークな生き様を貫くには、相当の覚悟と勇気が必要だ。
体内にたぎる血の赴くまま、既存のカテゴリにハマらぬ道を突き進む改革者たち。
彼らの描く刺激的な未来図を垣間見れば、自分たちも何か動き出したくなる。

NEW BLOOD✙ Vol.02 アレトコレ ココ

アーティスト

キャップシールに命を吹き込む「ワイントップアート」ってなんだ?

ワインボトルのトップにあしらわれるキャップシールやコルク、ワイヤーなどを素材とした立体作品「ワイントップアート」。制作者のアレトコレ ココは2023年で活動5年目を迎え、展示イベントのオファーが引きも切らない。人気の理由は造形美だけにあらず、ゆるぎないポリシーもまた、作品をいっそう輝かせる。


アーティストへの一歩はパーティ会場で
ワイン瓶のコルクまわりをカバーするキャップシールは、やわらかいアルミのシート。
開いて、丸めて、折り曲げていけば、いつしかひとつのかたちが浮かび上がる。
友人と一緒にワインを飲みつつ、ふとキャップシールを手に取った何気ない瞬間から、アレトコレ ココの創作活動はスタートした。
最初はアート作品であるとの気概もなく、「面白い遊び」の小作品を完成させては友人たちへプレゼント。
転機が訪れたのは、とあるレストラン・パーティだ。
参加者との談笑もそこそこに、捨てられる直前のキャップシールを見つけてはせっせと細工を施していたら、そのレストランのオーナーが興味を持ってもらえた。
過去の小作品は手元にないが、記録として残すため撮影はしている。
その画像をオーナーへ披露したところ、すぐ「レストランに飾りたい」と初オファーが舞い込んだ。
しかも素材のキャップシールは、ワインを提供するレストランなら集め放題。
素材提供と展示スペースがセットになって、彼女にもたらされたのだった。

ものづくりへの興味は幼少時から
「子供のころから、興味を持てるのは『身の回りのもので何かをつくる』ことと『動物』くらい」
とアレトコレ ココは振り返る。
母親が捨てようとしていた発泡スチロールやらカマボコ板やらをもらい受けて工作する日々。
成長してもファッションや話題のTVドラマには見向きもせず、鑑賞する番組はもっぱら、動物や自然を紹介する番組『アニマル・プラネット』。 「動物は、自分が心を開ける対象ですごく近い存在。いっぽう、自分とまったく違う生態には感動します」
獣医になって動物と関わろうとも考えつつ、勉強が難しいと知り断念。
「何かをつくる」ほうの興味に導かれるまま京都市立芸術大学彫刻科に進んだが、大学卒業後はアートと距離を置き、いったん「普通に就職」している。
もし5年前にレストラン・オーナーから声を掛けられなければ、遊びのつもりだった作品の価値に本人も気づかないまま過ごし、アーティスト・デビューはさらに遅れていたに違いない。

コルクオブジェ ナマケモノ制作動画 

色の制限は工夫と技でクリア
キャップシールを作品の素材に定め、「ワイントップアート」の世界観を確立したものの、難題はカバーできる色の数に限界があること。 飲食店やワイン愛好家に収集の協力を仰いでおり、多様な色があるが、どうしても赤、黒、金が多くなる。
素材の色をそのまま活かし、着色はしないと決めているので、
「グラデーションにする際に中間色を選ぶのが大変です」
と言いつつ、その制約を乗り越えるための工夫を考える時間が、案外と好きだったりする。
アルミ片を組み合わせて立体にする技術は、さまざまな職人からヒントを得てきた。
料理、革細工、水引などまったく異なるジャンルの技を見ては頭のなかにストック。
作業の道筋が開けた後は、思い描いた立体へと起こしていく作業が延々続く。
大作になると完成まで1か月近く2ヶ月以上かかることもあり、忍耐力の勝負だ。
そうして綿密に造りこんだ作品は、アーティスト仲間から「いい狂気を感じる!」とお褒めの言葉をもらうという。

動物愛があふれ出る作品たち
さて、アレトコレ ココの手にかかると、キャップシールはいつだって動物になる。
動物好きな彼女は、作品にしてみたい動物を随時リスト化をしている。
動物園で見かけるような種類だけではなく、鳥、魚、昆虫も候補に挙がっている。
色ごとに分別されたキャップシールとリストに目を通し、ピンとくる動物を探して、いざ制作へ。
「この地球には、まだ知られていなくて、目を疑うような生き物もいることを知ってもらいたい」
と、マニアックな動物への挑戦も辞さない。
最近リストに追加した動物は、サイガ。
「胴体は鹿に似ていて、鼻がにょろ~んとしている」のだそう。
なお、作品が売れると、収益の一部を動物保護団体へ寄付するのが彼女のお約束。
好きな動物とつながっていたいとの気持ちに、偽りははない。

アレトコレ ココYouTubeより

ワイン銘醸地での個展が次の目標

近年は、コルク抜きを使う必要のあるコルク栓から、ひねるだけで開けられるスクリューキャップへ転換が進んでいる。
コルク栓が減れば、同時に外側をカバーしているキャップシールも減少。
「硬いスクリューキャップを含め、スパークリングワインのトップにあるミュズレ(王冠)もワイヤーもコルクも、ワインボトルのトップにあるものはなんでも使ってはいるのです。ただ、キャップシール自体は5年扱ってきて、まだまだ面白くて興味の尽きない素材。少しでも入手できるうちは、この素材だけで表現を洗練させていくのもアリかな、と思っています」

ところで、キャップシールを扱うアーティストなら、きっと大のワイン好きだろうと思われがちだが、「とてつもなく好き、というわけではない(笑)」らしい。

「興味はあるんですけど、奥が深そうな世界なので……。あ、酔うために飲むことはしません。大勢でワイワイと飲むより、香りを嗅ぎながらインスピレーションを感じるのが好きなので、いつもシットリ飲んでます」
近々、フランスへの作品出品も予定されている。
ゆくゆくは海外のワイン銘醸地で個展を開いてまわりたいと願う彼女にとって、最高の足掛かりだ。

●展示情報

・個展Wine Top Art Exhibition 「ANIMALIA!Ⅰ」

2023年5月3日(水・祝)〜9日(火)

会場:(大阪・梅田)阪神百貨店梅田本店8階 ハローカルチャー2

入場無料

・SICF23 グランプリアーティスト・受賞者展

2023年5月10日(水)〜25日(木)

会場:(東京・青山)スパイラルガーデン(スパイラル1F)

入場無料

・個展Wine Top Art Exhibition 「ANIMALIA!Ⅱ」

2023年5月24日(水)〜6月4日(日)(※休廊5月29日,30日)

会場:(東京・日本橋)Gallery TK2

入場無料

●公式サイト

https://www.aretokore-coko.com/

●Instagram: https://www.instagram.com/wine.top.art.coko/

また、アートの素材となるキャップやコルクのサポートも求めている廃棄するならこちらを

https://www.aretokore-coko.com/helpcoko

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