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WINE

「ヴィーニョ・ヴェルデ」の現在地 vol.03

ポルトガルのワインがなにかと注目されている。「ヴィーニョ・ヴェルデ」と呼ばれるワインは、Why not?マガジンでも今年は2回記事を掲載している。
いまさら感があるかもしれないが、初めて読まれる方もいると思うので簡単に説明しよう。ポルトガル語で「ヴィーニョ」はワイン、「ヴェルデ」は緑。ヴィーニョ・ヴェルデとは「緑のワイン」という意味になる。「緑」はオレンジワインのように液体の色を指しているわけではなく、産地であるポルトガル北部の太平洋沿岸「ミーニョ」地方が緑豊かな大地であることが由来している。そして、ヴィーニョ・ヴェルデというワインは完熟前の早摘みブドウがもたらす心地の良い酸味があり、どちらかというと低アルコールのためセラーで寝かせて熟成するワインというよりも早飲みに適したワインという印象だ。このタイプのワインは「食のライト化、低アルコールが求められる」今の時流には人気がでるのも納得でき、また日本での入手価格も1,500円前後とセレクトしやすい。ポルトガルと日本はユーラシア大陸の西端(ポルトガル)と東端(日本)とで離れてはいるが、両国とも海に面しているという特徴は同じで食卓にあがる食材(特に魚介類)も似ているため、日本食材のペアリングに向いているということも、人気の理由の一つとしてあるかもしれない。


そんな状況の中で、近年はプレミアムレンジのヴィーニョ・ヴェルデが登場している。「単一品種」「混植」「地場品種」などをキーワードに、現地の生産者の方々の努力によって風格のあるヴィーニョ・ヴェルデも紹介されはじめているのだ。といっても日本での平均的な販売価格帯は2,000円~6,000円と、他国のワインと比較してお手頃感が強い。
ならばどんなワインをセレクトするのがいいのだろう。1つの提案をしてみよう。
今日は白ワインを飲みたいなと思うとき、多少ワインの経験値があれば国際品種の「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」「リースリング」が思い浮かぶかもしれない。それをヴィーニョ・ヴェルデのワインに置き換えてみると(注:品種特性が似ているということではない)、「アルバリーニョ」「ロウレロ」「アベッソ」あたりのブドウ品種から飲んでみるというのはどうだろう。
「アルバリーニョ」はスペインやこのミーニョ地方の土着品種だが、果皮が厚く多湿な環境で育つゆえ病気への耐性が強く、最近では新潟県や大分県でも栽培されるようになった。産地が海に近いという特徴もあり、魚介との相性は特にいい。冷涼な海風によって育まれるフレッシュさ、溌剌とした酸味とミネラル感を持ち合わせているが、ヴィーニョ・ヴェルデは山のミネラル感や強さもあり、ブルゴーニュのシャルドネとアリゴテをブレンドしたような果実感でコクと旨味があるワインだ。
「ロウレイロ」は爽やかで、フルーティさが特徴。柑橘系ワインの代表でもあるので、魚介にレモンを搾るような調理方法や香味野菜を使った料理、春野菜の天麩羅にも合いそうだ。
「アベッソ」は複雑味や熟成感があるものが飲みたいときに試してみたい。ヴィーニョ・ヴェルデの白ワインは、アミノ酸の旨味とのペアリングに合うと言われ、すなわち肉にもよく合う。ただバターソースや煮込み料理ではなく、鉄板焼きで塩胡椒での味付けにするなど、シンプルに素材の味を大切にした調理方法がより合うだろう。
もし「アルバリーニョ」や「アベッソ」を選ぶなら、これらは樽で長めに熟成させるため樽香に合わせてチーズ系のリゾットも試してほしい。

番外編としてぜひ試してほしいオススメ

選者・ワインコメント東京・池尻大橋のレストラン「calme」の佐野敏高氏

キンタ・ド・アメアル/ヴィーニョ・ヴェルデ ロウレイロ 
希望小売価格/2,500円
輸入元/木下インターナショナル

おそらく女性の方が好きであろう芳醇なアロマと中心にある青リンゴ調子の爽快感、喉奥に抜けた後はドライでいて、優しい味わいの余韻を楽しませてくれます。

野菜から海産物までオールラウンドで楽しむためのミネラリティ溢れる作品です。

リマ渓谷の美しい景色が浮かんでくるようなワインです。ロウレイロ種を取り扱うトップ生産者の一人の作品ですよ。

A&Dワインズ/シンギュラー
希望小売価格/2,300円
輸入元/ヴォガジャパン

混植混醸の葡萄を主体にし、さまざまな葡萄が楽器の役割をして葡萄畑という楽曲、生産者という指揮者と調和をとり音楽を奏でるようなワインです。

いきいきとした酸味とフレッシュさが特徴のヴォーニョヴェルデですが、乳酸を感じるような丸みを帯びた味わい、葡萄品種の個性がお互いを支え合って調和をとるようなスタイルです。だからといって特別な乳酸醗酵が行われるわけでもないのが特徴です。澱との接触により複雑さを表現しています。動物性由来のものを一切使わないビーガンワインとしても売り出しています。特異なワイン、つまりシンギュラーですね。

また、ヴィーニョ・ヴェルデの構成要素において酸味や鉱物的なニュアンスゆえの背筋のピンとしたワインが多いため、空気接触してしばらくしたほうが隠れていた個性が表面にでてくることがあります。家庭における保管で野菜室が適しているのは冷蔵庫内よりも直接的な冷気が当たって低温劣化する恐れが少ないためです。抜栓したら喉越しの良さもあってスルスルと飲めてしまうワインが多いヴィーニョ・ヴェルデ。
ゆっくりと変化を楽しむのなら数本開けて数日かけて飲み比べてみるのも面白いですね。

合わせて読む
「ヴィーニョ・ヴェルデ」の現在地 vol.01
「ヴィーニョ・ヴェルデ」の現在地 vol.02

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