イタリアワインの銘醸地・ヴェネト州、トンマージはソフィスティケイトなワインを造りだす
Why notマガジン創刊当初に動画で掲載したYouTuberインフルエンサーのイタリア料理人「ファビオさん」。インタビューで好きなワインについて伺った際のアンサーを抜粋すると
「僕が料理人になりたての時、初めて飲んだ美味しいワインがアマローネだったんですね。アマローネはイタリアの ABC の代表格って言われていて、それはAのアマローネ、Bのバローロ、C のキヤンティクラシコ。初めてそのアマローネを飲んだ時の感動はもう忘れられません。しっかりと陰干しした複雑な味わいが素晴らしかった。イタリアンの赤といったらアマローネが大好きです」
今回はファビオさんを虜にした「アマローネ」というワインとその造り手について少し。
Oh Romeo, Romeo! why are you Romeo?
観光地としても人気のヴェローナは「愛の街」
「ロミオとジュリエット」の舞台となった「ジュリエッタの家」。訪れた観光客が「愛の落書き」をしていくのでも有名だが、よい子といい歳した大人は落書きしないようにね。
イタリアは旅の目的地として人気の国。今回はイタリア北東部に位置するヴェネト州をクローズアップ。プロセッコやソアーヴェなど世界でも有名なワインを多数産出し、高級ワインカテゴリーの生産量もイタリア全州1位というイタリア屈指のワイン銘醸地でもある。州都は日本人に人気が高い水の都「ヴェネツィア」で、その次に大きな都市が「ヴェローナ」。ヴェローナはシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台、悲恋の物語であるものの「愛の街」ともいわれ、2人が語り合った世界一有名なベランダが観光名所になっている。
ヴァルポリチェッラのアパッシメントは厳格にて特別だと断言できる理由
ヴェローナの北にあるヴァルポリチェッラで特別な方法(アパッシメント)で造られているワイン、それがアマローネ。
「アパッシメント」とは陰干ししたブドウから造り、豊かなアロマと濃縮した味わいが特徴で、20~30年は熟成させる長熟なワインである。アマローネの正式名称は「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」で、その名が示すとおりヴァルポリチェッラ村で造られるワイン。丘陵地帯で土壌は石灰質、凝灰岩土壌。陰干しして糖度が上がったブドウから作られるので、果実味が凝縮された力強い味わいのイタリア最高峰の辛口赤ワインである。ちなみにイタリア語で「アマーロ」は「苦い」という意味も持つ。
完熟したブドウを3~4ヶ月陰干しし(3~6ヶ月と決められている)、果汁を凝縮させ40~45%ほど水分を取り除いてからブドウを発酵させる。発酵後の果汁は最低2年以上の樽熟成と6ヵ月の瓶内熟成を要し(これも規定されている)リリースされる。
このような醸造方法により醸造に使える果汁が3分の1以上減ってしまうため、1本のアマローネを造るのに原材料費は一般的なワインよりもかかり、また熟成期間は2年、リセルヴァにいたっては4年を要し、アルコール度数は14%以上と他のDOCGワインに比べるとかなり高い規定となっている。品種もコルヴィーナ種、コルヴィオーネ種、ロンディネッラ種を使用することが決められている。ちなみにアパッシメントで他の地域や国でもワインは造られているが、陰干しする期間・熟成期間もブドウの品種も各々造り手によってまちまちで決まりがない。一方、ヴァルポリチェッラには厳格な規定が存在するところが、厳格にて特別だという理由なのだ。
アパッシメントは、アマローネ、リパッソ、レチョートを醸造するときのヴァルポリチェッラ・クラシカ敷く特有の製法。「アレーレ」と呼ばれる竹を並べたラックの上で100日間乾燥させる匠の技。
トンマージの歴史あるマグニフィカセラー。大きなスラヴォニアンオークはトンマージのスタイルの代表的な特徴で、アマローネの熟成に使用している、樹齢200年以上の樹から作られる「マグニフィカ」は世界一大きなカスクとして、ギネスに認定されている。
ヴァルポリチェッラはもとよりイタリア屈指の家族経営の生産者トンマージ
ヴァルポリチェッラのアマローネの有名な造り手の1つ「トンマージ・ファミリー・エステート」は、121年の歴史をもつ伝統的な生産者だ。今回、アジアの輸出担当部長のアレッサンドロ・ベナト氏が「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」を含む、代表的なワインをもって来日した。
トンマージが造るアマローネはもちろん、ほか2つワイン産地の話もしてくれた。その1つは「ルガーナ」。ルガーナは、イタリア北部のロンバルディア州ブレシアとヴェネト州ヴェローナの2つの地域にまたがるDOCで、ガルダ湖の南湖に広がっている産地。ガルダ湖はイタリア最大の湖でもあり、ミラノとヴェネツィアのほぼ中心に位置しミラノから車で約2時間。ミラネーゼにとってはリゾート地として有名な場所だ。トンマージはガルダ湖半に45hの畑を所有している。品種は「トゥルビアーナ」で白ワインが造られている。畑はガルダ湖に近い1区画(粘土質)と内陸部に2区画(砂質)あり、その全3区画で収穫されるブドウをブレンドすることでフレッシュかつミネラル感とエレガントさのあるワインを造り出している。
ルガーナ・ガルダ湖
もう一つは、イタリアの南に位置するバジリカータ州を代表する「パステルノステル」というワイナリー。このワイナリーは、地場品種の白ワインは「ファランギーナ」、赤ワインは「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」の先駆者としても知られ、とても洗練されたワインを生み出している。畑は20h、そのうち「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」が15hで、「ファランギーナ」は5h。すべて単一畑。
ドン・アンセルモ(創業者ドン・アンセルモに敬意を表して名付けられた) シングルヴィンヤード
今回、トンマージの魅力を堪能できた試飲ラインナップ。画像左から
■トンマージ/
デ・ブリス アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・リゼルヴァ2009
D.O.G.C.アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ
品種/コルヴィーナ・ヴェロネーゼ65%、コルヴィノーネ24%、オセレータ6%、ロンディネッラ5%
参考価格/40,000円
■トンマージ/
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ 2019
D.O.G.C.アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ
品種/コルヴィーナ・ヴェロネーゼ50%、ロンディネッラ30%、コルヴィノーネ15%、オセレータ5%
参考価格/10,000円
■パステルノステル/
ドン・アンセルモ 2016
D.O.G.C.アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・スペリオーレ
品種/アリアニコ100%
参考価格/6,500円
■トンマージ/
レ・フォルナーチ ルガーナ リゼルヴァ 2019
D.O.C.ルガーナ
品種/トゥルビアーナ100%
参考価格/5,400円
■トンマージ
レ・フォルナーチ ルガーナ 2021
D.O.C.ルガーナ
トゥルビアーナ100%
参考価格/2,700円
■パステルノステル/
ヴルカニコ 2021
I.G.T.バジリカータ
品種/ファランギーナ100%
参考価格/3,200円
今回紹介してくれたトンマージのワイン、エントリーレベルは2,000円代後半からラインナップされている。また、アマローネは10,000円代といわゆる「ハレ」のワインではある。先ほども書いたが、アパッシメントすることで原材料費もかかり価格もそれなりになってしまうことは致し方ない。しかし、旨味が凝縮されたぶどうから造られるアマローネ、飲んでみるとその濃厚さのなかに甘さも感じられる。この甘苦いワインはあなたのワイン体験に加えて欲しい「大人のワイン」なのである。
ワインビギナーならばなおさら白ワインのルガーナ、濃厚な赤ワインアマローネを嗜むことが経験値を1つあげてくれること間違いなしだ。
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