お酒を自由に楽しみ、セレンディピティな出会いを

SPIRITS & LIQUEUR

じだいをかえる、かわりものたちのおはなし 服部竜大

ユニークな生き様を貫くには、相当の覚悟と勇気が必要だ。
体内にたぎる血の赴くまま、既存のカテゴリにハマらぬ道を突き進む改革者たち。
彼らの描く刺激的な未来図を垣間見れば、自分たちも何か動き出したくなる。

NEW BLOOD✙ Vol.04 服部 竜大

WWWE FOUNDER/CEO

文/編集部 写真/篠原宏明

MAKE IT COLORFUL 地球     人に彩りを

は仲間たち     それを「ゼロ」から立ち上げた!

「ゼロ」から「1」を創りだす人、「1」を「100」に成長させることができる人。どちらも秀でることは簡単ではない。今回のNew Blood に登場いただく服部竜     は約20年後者の領域で活躍してきた。それが、いま次々と「ゼロ」からの「ものづくり」を始めている。「地球に」「人に」貢献するというテーマのもとに。

2023年3月、あるレストランで「蒸留酒のイベント」が開かれた。ここで地球と人に優しいウェルネスブランド「REUNION」のニュースピリッツ「WELLNESS GIN」がお目見えした。「ニュースピリッツ」というコンセプトや商品化の背景をプレゼンしたのが服部だった。配られたプレスシートの構成、使われている画像、無駄無く興味をそそるトーク。どれも実に手慣れて いた。それもそのはず、服部はPRの百戦錬磨のプロだった。
「僕自身、これまで企業広報やブランドのコミニュケーション案件をいくつも担当してきました。簡単に言うとPR(Public Relation)という仕事 はすでに「1」できているものを 世に 広めて 「100」にして いく仕事です。もちろん誇張させるのではなく、いかにその「もの」が魅力的であり、どう伝えたら共感されるか、のポイントを自分なりに整理して伝えます。これまで企業広報から始まり、映画祭、日本に初上陸する海外のブランド、ホテル、アート、飲食ブランド……。さまざまなプロジェクトにコミュニケーションディレクターとして関わってきました」
そんなPRのプロが自ら「ゼロ」からスタートするビジネスを始めた。それは「農業」がテーマだった。
「食べることは大好きですし、PRで飲食系ブランドやホテルも多く関わってきたので食自体に自分もいつか関わりたいなと思っていました。また、各地で生産される美味しい野菜や農産物が注目されている中で、特に環境再生型農業(リジェネラティブ農業)にも興味がありました。だからといって農業にかかわるタイミング自体はそうはありません。そんなときにちょうど、共通の友人から栃木県のプロバスケットボールチームである宇都宮ブレックスの渡邉裕規選手を紹介されました。彼とは会ったその日から意気投合。当時、栃木にあるホテルのPRを担当していたので、宇都宮にはよく足を運んでおり、その時に宇都宮で農業を営んでいる彼の友人なども紹介してもらいました。その後、コロナが蔓延し、世の中はステイホームだ、外出自粛という時期。Bリーグの試合が全部キャンセルになっていたこともあり、渡邉くんがその農家の友人の畑の手伝いもしていたので、僕も仕事で栃木に行った時に、たまにでしたが農業を手伝うようになりました。 畑に出てトラクターで土をならして、種を植えて収穫して、それを食す。第一次産業の魅力を初めて実感するとともに、収穫後の出口(販路)は無限の可能性があるということも知りました。初夏に収穫したトウモロコシを食べさせてもらいましたが、これが生で食べても本当に甘くて美味しい。この美味しさをもっと世の中に広めたい。自分のキャリアでも何かできることがあるのではないかと、ようやく農業との接点が見えました。結果、現役プロバスケット選手、農家、元Jリーガー、元脱毛サロンの社員、そして僕、となかなかおもしろいキャリアの異なる5人のメンバーが集まりました。農業プロジェクト「UTSUNOMIYA BASE」を立ち上げました。目的は地球、環境、そして人に優しい無農薬・無化学肥料の農作物を作って美味しいを届ける、みんなが集まれる基地を作る。僕はこのプロジェクト全体のプランニングやブランディング戦略を担当しています。環境再生型農業の実現を目指したことから、畑を探すのも大変でした。土地の形が良くても、問題は土壌、その土地が農薬を使っていた土ならば3年しないと無農薬とは認められません。また環境再生型農業は土壌をただ健康的に維持するだけではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復に繋げることを目指す農業なので、有機物を多く含む豊かな土壌にして、空気中の炭素をより多く地中に留め、炭素の発生を抑えるなど、土壌の状態がいい農地を探すのはなかなか大変でした。その環境が整っても、プロジェクトが成功できるわけではないので、それぞれの得意分野適材適所で農作物の栽培、販売する場所の開拓、ECサイトなど出口の整理など、5人の力が合わさり、そしてたくさんの方々からサポートを受け、プロジェクトがどんどん形になっていきました。実際、最初にMakuakeでクラウドファンディングを立ち上げたのですが、目標30万円に対して購入総額700万円弱、2000%以上の達成率、Makuake野菜部門では歴代1位(当時)と、本当に多くの方々にサポートしていただき、良いスタートを切ることが出来ました」

UTSUNOMIYA BASEベースのwebサイトはココをタップ

MAKUAKEの野菜部門での売上げレコード1位を記録した(2021年6月時点)

農業の3Kイメージからの脱却を目指して農業のビジネス化やプロスポーツ選手のセカンドキャリアの場の創出もあるのかとも聞いてみました。
「農業をビジネスモデルととらえて会社化して収入保障をするなどいろいろな動きがあることはもちろん知ってはいました。でも正直、僕にはその考え方は全くなかったんですよね。「やりたい仲間とやりたいことをやる」、ただそれだけでした。5人が見たい景色がたまたま一致して、それが農業だったって感じです。やり始めてみると、宇都宮という地域がとても協力的で、福田屋という大きな百貨店から出店のお話をいただいたり、地元の花木センターが、僕たちが企画した夏祭りや夏のマルシェの開催場所として提供してくださったり、地場のレストランやお弁当屋さんが僕たちのプロジェクトに興味を持ってくれ食材を使ってくれたり、地元の方々が本当に暖かく、みなさんに助けていただいています。事業化というよりは、まず自分たちのこと、そして想いを理解していただきたいという気持ちが先でした。“楽しいを耕す”が僕たちのコンセプトです。もちろん“楽しい”には責任が伴いますが、自分たちが夢中になって楽しいを追求し、形にしていったら、その楽しさは人に伝染し、プロジェクト自体にも共感してもらえる。そしたら事業はあとからついてくるかなと。仕事をするにしても、どこか自分の中で、“この仕事が好きだ”と納得できるものがないと人生楽しくないし、長続きしないんじゃないかなと思います。また、メンバーにアスリートがいるので、セカンドキャリアという言葉を使われることがありますが、スポーツアスリートとしてキャリアを積んできた人たちは純粋にそのスポーツが好きで、やりたいことをとことん追求し、想像もつかないほど努力を重ね、能力を高めてプロになった人たちです。5人のメンバーの1人である元Jリーガーの就農のきっかけは一緒にやりたい仲間がいたからだったかもしれないが、今ではサッカーと同じくらい農業の魅力にはまり、次は農業のプロフェッショナルになることを目指している彼に、“セカンド”という言葉は使いたくないなと思います。もちろんライフワークですからお金を稼ぐことは大切なことですし、自分も振り返ってみれば生業のために仕事をしてきた時期があったことは否定しないけど、サステイナブルな事業って農業もそうですけれども、楽しくないと持続可能ではないなっていうことをほかの仲間たちに改めて教えてもらいました」


そして、地球と人に優しいウェルネスブランド「REUNION」の立ち上げと「WELLNESS  GIN」の開発

「UTSUNOMIYA BASEとは全く別のビジネスです。鹿児島に佐多宗二商店という焼酎で晴耕雨読や不二才などが有名な114年続く老舗焼酎酒蔵があります。そこが日本酒のように國酒である焼酎を海外に広めたいという相談を友人が受けて、2021年5月に鹿児島へ同行したことがあったんです。後に一緒に会社を作ることになるもう一人のファウンダーも、物作りのプロとしてその友人に誘われていて、彼とはそこで初めて出会いました。鹿児島に2泊していろいろ焼酎を世界に広めるため何ができるか話しているうちに、自分たちでコンセプトから考えて、焼酎を使ってなんか作ったら世界に広げやすいかもねっていう話がどんどん膨らみはじめて、それが“REUNION”ブランドをスタートアップさせたきっかけです。そのとき、夜飲みながら話しているときにブランドを作ろうとなり、ラベルに白地が多いお酒を買ってきて、その白地にコンセプトとか想いとかいろいろ書き始めてたんです。ブランドの商品が完成したときにこれを飲もうよって。今のブランドの原型やコンセプトはその夜にほぼ生まれた感じです」

黄金千貫が原材料の芋焼酎ベースのジン、完成まではまだ高いハードルばかり

「考えたのは地球と人がウェルネスになる新しいスピリッツ。簡単に作れるなんてさすがに思ってはいませんでした。当時からクラフトジンはブームになっていて、世界で流通するジンの銘柄数は数千を超えており僕たちはかなりの新参者。だから自分たちが培ってきたキャリアや得意分野を駆使してこのスピリッツにどんなユニークネスを持たせるか。どんな付加価値をつけていくかを常に考えていました。もう一人のファウンダーも別で農業に関わっていたこともあり、僕たちにとってウェルネスや環境再生型農業は外せないキーワードでした。水、土、植物、微生物が健やかではじめて美味しいお酒ができる。そう考える僕たちは農業から酒造りをはじめることに。原材料となる黄金千貫は焼酎に使われるサツマイモの代表格で大量栽培され、比較的安価でもある芋を有機栽培している農家さんなどほとんど存在しません。それにチャレンジしてくれる農家さんを探すことからスタートです。根気よく説明を重ねて意義を説明し、ようやく指宿で農業をしているユーファームさんが引き受けてくれることになりました。蒸留は蒸留のパイオニアである佐多宗二商店さんに通常に比べると圧倒的に少ない芋を使って、、我々のオリジナルのジンを作って欲しいと相談に伺ったところ、“面白い、やってみようよ”と快諾していただき、佐多さんの懐の深さを感じたのは今でも覚えています。そして素晴らしいパートナーたちに恵まれ、なんとかスタートを切ることができました。味の構成もウェルネスなものを作ろうということで、国際薬膳師の資格を持つ薬膳のエキスパートにも相談にのってもらいました。調べるとジンは元々、薬酒として開発され、オランダの医学博士が東アジアで熱病が流行った時にその解熱をさせるために ジュニパーベリーという「ねずの実」を入れて作ったのが起源ということがわかりました。身体に優しいこともありそのジュニパーベリーは欠かせない大事なボタニカルの1つに。また500を超える有効成分を持つ幻のキノコ「霊芝(REISHI)」が、人のウェルネスにアプローチするのに最適、かつジュニパーベリーと相性もよかったのでキーボタニカルとして採用しました。また僕たち自分たちのスピリッツのことをクラフトジンではなく「ニュースピリッツ」(新しい蒸留酒)って言ってるんです。霊芝を入れることによって二日酔いになりにくく体に罪悪感なく飲める、地球に優しい環境再生型農業で芋を栽培する、そしてリユースボトルを活用するなど、これまでの蒸留酒の枠を超え、地球と人のウェルネスに貢献もできるスピリッツ。そんな意味をこめて、ジンではなくニュースピリッツと言っているんです」

ニュースピリッツをより詳しくはこちらをタップ

先人の知恵を現代に活かす、リターナルボトルの実現

カーボンニュートラル等環境問題へのコミットメントも実現させていますね

「先ほどちらっと話しましたが、ボトルをどうするかは環境面やサステイナビリティ面でリユースボトルという発想がありました。(実はクリエイティブにお金を使いすぎて、ボトルを買う予算がなくなってしまったと言う裏事情も実はあるのですが。笑)自分たちにアイディアはあるけれど、それを実現出来るノウハウや施設を持っているわけではないので、その道のプロを探して協力を仰がなければいけません。専門業者を探して、説得に回るいつもの作業です。“回収し、洗浄し、再使用されるびん”のことを“リターナブル”といって、日本では大正時代以前からリターナル瓶は流通しているんです。これは僕たちが子どもの頃、酒屋に空き瓶を持っていくという一般的な風景だったそれです。それを使えばリサイクル容器よりもCO2排出量は少ないことも分かりました。ただ回収、洗びん、液体のボトルつめなど、実現させるためのハードルはいくつもありました。大口の仕事ではないので利益も少ないです。いろんな方に相談し、ネットワークを辿っていくうちにそれぞれ協力してくれるパートナーを見つけることができました。お金にならないけど、いい取り組みだ、一緒にやってみようと言っていただけて、その方たちのおかげで新しい取り組みができ、どんどんどんどん共感していただけてることには感謝しかありません。このような取り組みを、このブランドで広めていく中で、他のブランドも取り入れてくれたら嬉しいですし、それは新参者の自分たちだから提案できることなんじゃないかと思います」

何も書かれていないエチケット

真っ白のエチケット、ボトルネック部分にエンボスで「REUNION」。シンプルで、オシャレですね。

「ありがとうございます。ボトルのエチケットは何も書かれていない“ホワイトラベル”になっています。これ、REUNIONが掲げるコンセプト“MAKE IT COLORFUL”(人生を楽しさで彩る)を表しています。飲み手が主役のお酒です。何も書かないもよし、僕たちがこのプロジェクトを立ち上げたときにボトルにイメージをふくらまし、さまざまなことを書き込んだように、このホワイトラベルに思いを描いて、、その思いが叶った時に、パートナーや仲間と再会(REUNION)してこのお酒を空けるもよし。そしてこのお酒が世の中や人生の彩りのきっかけになったら嬉しいです。

若い世代にとってお酒はどんな存在になるのか?

「お酒は不健康」とか「若い人たちのお酒離れは深刻」と現実を分析しないでまことしやかに信じている人たちもいます。お酒は粗雑で悪者でしょうか?

「今回お世話になっている佐多宗二商店の当主の佐多さんとお酒という存在についてお話したとき、佐多さんが“お酒は嬉しさや楽しさを倍増させてくれ、悲しいことや寂しさ、疲れを半減させる。お酒は飲む人の感情に寄り添う飲み物だ”と語ってくれたんですね。その言葉にはもう共感しか無くて、僕がお酒造りを決心した言葉です。だから環境問題や健康的な生活にとってお酒は決して邪悪で邪魔な存在なんかじゃ無いと僕は考えます。罪悪感がない身体への配慮したお酒、地球に負担をかけないお酒。僕たちのお酒は “環境再生型農業から生まれた原材料”“再生利用のリユースボトル”“カーボンニュートラルで地球への責任を果たすそして”“ホワイトラベル”と、地球と人のウェルネスに貢献するお酒です。まずは試しに飲んでほしい。味ももちろん美味しいです。笑」

WELLNESS GINの一般発売が始まりましたがはこれからですが、さらに人生を、地球をカラフルに。つぎなるWELLNESSなプランも楽しみですが、何か構想は?

「地球のウェルネスにも貢献していきたい、それぞれの人生をカラフルに彩りたい。REUNIONは日本だけじゃなく海外でもカラフルな楽しいことをやっていきたいと思っています。そのためのできることを今後も考えたいですね。今は夢みたいなことですが、「1% FOR 1 COLOR」っていう考え方で、例えばこのWELLNESS GINの売上の1%を世の中でカラフルな取り組みをしている人との協業のために使って一緒になにか創り出していくとか、世の中をカラフルに彩っていきたいです。「UTSUNOMIYA BASE」にしても「REUNION」にしても、自分自身ができることは限られてるけれど、それを一緒に乗り越える仲間や、応援してくれるパートナーたちがいれば、きっとどんな困難もクリアできることを実感できました。発想は無限だし、“MAKE IT COLORFUL”(人生を楽しさで彩る)をモットーに、もっと楽しいことを創り出していきたいですね」

REUNIONのWELLNESS GINは4月22日(土)アースデイに発売された。詳しくはこちらをタップ

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