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知って得するアリゴテ七不思議

©BIVB / Image & Associés, ©BIVB / Liza Miri, ©BIVB / Jessica VUILLAUME

ブルゴーニュのオリジナル品種を深掘り!<第一部 ~ワイン初級者編~>

文/山本ジョー

「ブルゴーニュの白ワインはすべてシャルドネ種からできてる」なんて、ウッカリ信じていませんか?
ほらほら、アリゴテ種を忘れてはいけませんよ!
シャルドネに続くブルゴーニュ白の代表品種、アリゴテを使った白ワインはさわやかな味わいとお手頃価格が魅力です。
さらに近年、意欲的な造り手たちが力を入れる要注目品種でもあります。
とはいえ、ブルゴーニュワイン通でも実際アリゴテ種について深く語れる人はけして多くありません。
そこで、ワインビギナーさんもブルゴーニュ通の皆さんもご一緒に、まずはアリゴテ種にまつわる豆知識をおさえていきましょう。
why not?マガジンがまとめた“七不思議”を知るだけで、アリゴテワインを口にする瞬間の感慨もおいしさもレベルアップしますよ♪

七不思議その1 親はピノ・ノワール

ピノ・○○という名前でこそないものの、アリゴテ種はピノ・ノワールの血を引いています。ブルゴーニュ原産のピノ・ノワールに、今はフランスであまり栽培されていないグエ・ブランという白ブドウ種が交配して生まれたのがアリゴテ種です。
じつはシャルドネも、ピノ・ノワールとグエ・ブランの交配から誕生した品種と言われています。アリゴテ種とシャルドネ種はどちらもブルゴーニュ原産ブドウで、キャラは違えどまさに姉妹のような関係です。果実味豊かなシャルドネ種が全世界へ栽培地を広げた一方、酸味がチャーミングなアリゴテ種はほぼブルゴーニュに留まり、地域密着型のご当地品種として素朴な味わいが愛されてきました。ただし今や素朴なキャラだけに留まらず……というストーリーは、「七不思議その2」以降で順々に紐解いていきます。

©BIVB / Jessica VUILLAUME

七不思議その2 栽培地はブルゴーニュ全土に広がる

ワインの教科書によっては、アリゴテ種について「ブルゴーニュ南部のコート・シャロネーズ地区やマコン地区で栽培」とコンパクトにまとめられていることも。確かにブルゴーニュ南部での栽培は盛んですが、ほかのエリアでもちゃーんと栽培されています!
北部のシャブリ地方でもアリゴテ種を見かけますし、シャサーニュ・モンラッシェ村、ピュリニー・モンラッシェ村といった有名産地も含めたブルゴーニュの約300の村々にアリゴテ畑は点在しているのです。白ワイン用のブドウ栽培面積としてはブルゴーニュ全体の6%を占め、ルロワやコシュ・デュリといった高級ワインの造り手もアリゴテ種を手掛けています。とくに近年注目を集めているのが、上手い栽培・醸造テクニックで仕上げられた、旨いアリゴテワイン。アリゴテ種の価値観、これからも劇的に変化していきそうです。

七不思議その3 高品質ワイン用として注目度⤴

ブドウの粒が大きく多収量を誇るアリゴテ種。しかしその特性がかえって足かせとなり、大量生産用で品質は二の次という不憫な扱いを受けていました。「高級ワインはシャルドネ、廉価ワインはアリゴテ」との先入観がなかなか払しょくできないまま、数世紀を経てしまったのです。
けれど、凝縮感を持たせるために収量制限をし、冷涼な気候のブルゴーニュであっても十分に果実が熟すまで待って収穫すれば、秀逸なワインになります。近年ようやくそのアリゴテ種のポテンシャルに気づき、本腰を入れてアリゴテ種と向き合う造り手が急増。気候変動による温暖化もアリゴテ栽培の後押しとなり、シャルドネと並びブルゴーニュらしさを表現できる逸材として重宝されるようになりました。

©BIVB / Liza Miri

七不思議その4 早飲みも熟成もアリ

多くのアリゴテワインは品種由来のキリリとした酸味を持ち、シャープなスタイルとなります。造ってからさほど年月の経っていないブルゴーニュ・アリゴテを飲むと、フレッシュ感で疲れを一気に吹き飛ばしてくれる感覚がたまりません。また、よく熟したタイミングでブドウを収穫すると、酸味に加えて果実味もタップリ得られるのがアリゴテ種のスゴイところ! 樽で熟成させると、さらにまろやかな口当たりに仕上がります。
さて、ワインの酸は月日が経つにつれ落ち着きを見せますので、年月を経てから飲むタイプのワインは最初から酸が豊富であることが必須条件です。まんがいち酸が少ない場合、飲み頃には味のバランスが崩れてしまい、ぼやけた印象になったり、早く劣化してしまったりします。その点でも、アリゴテ種なら安心できますね。

七不思議その5 ときを経て、酸がより魅力的に

アリゴテ種は豊かな酸がチャームポイントとお伝えしてきましたが、いっぽうで近年のブルゴーニュ・アリゴテは総じて酸味が控えめになっています。造り手たちの意識が高まり、丁寧な栽培が行われるようになったからです。「数十年前に飲んだときは酸が刺激的だった」との記憶がある熟練ワインラバーは、現在のブルゴーニュ・アリゴテにビックリするかも。爽やかさはそのままながら、ビギナーを含め多くの方々に好まれるワインとなっていますよ。
この事実は、カクテル業界にも変化をもたらしました。白ワインにカシス・リキュールを加えた「キール」をご存じでしょうか? ブルゴーニュ公国の首都だった大都市、ディジョンで市長を務めたフェリックス・キール氏に由来するカクテルです。第二次世界大戦直後、アリゴテ種はまだ安価なワイン用として大量生産されるばかり。果実が完全に熟すのを待たず素早く収穫されるアリゴテ種は、非常に酸の強いワインとなってしまいます。当時の市長であったキール氏は、ディジョンの特産品である極甘リキュール「クレーム・ド・カシス」を加え、飲みやすいカクテルを提案してアリゴテワインの消費を促したのでした。当初のレシピは、アリゴテワインとクレーム・ド・カシスのブレンド比率が2:1だったとか。コレはかな~り甘い! もちろん、酸が穏やかな今日のブルゴーニュ・アリゴテは、リキュールで甘味を足す必要がありません。単体で飲んで満足度の高いワインとして、全世界に知られています。

ブルゴーニュ地方ディジョン旧市街にあるディジョンのノートルダム教会の塔 © Adobe Stock

アリゴテのトリビア「ブーズロン村はアリゴテ種の聖地」
ブルゴーニュで生産されるアリゴテワインは、基本「ブルゴーニュ・アリゴテ」の名で世に送り出されます。ただし例外があり、アリゴテ種の白ワインだけ名乗ることのできる村名AOCも存在しています。それが、コート・シャロネーズ地区北部の小さな村「ブーズロン」。 ブーズロン産アリゴテ種が高い品質であると早くから気づいていたのは、ロマネ・コンティを手掛けるDRCの共同経営者、オベール・ド・ヴィレーヌ氏でした。彼は卓越したアリゴテワインをブーズロンで生産し続け、1997年のワイン法改正でAOCブーズロンへと昇格する道筋を造りました。ちなみに、ブーズロン産のシャルドネは逆にAOCブーズロンと名乗ることはできず、コート・シャロネーズなどより広い地区名で生産されます

七不思議その6 魚料理全般にピッタリ

現地ブルゴーニュで、アリゴテワインとの定番ペアリングとして真っ先に挙がるのはエスカルゴではないでしょうか。ガーリックバターの効いた濃厚な風味ながら、アリゴテワインのおかげで後味サッパリ。さらには、食前につまむチーズ入りシュー「グジェール」、これまたブルゴーニュ名物である「ハムのゼリー寄せ」にもよく合うので、まずは早めにボトルを開けアペリティフとし、オードブルまで続けて飲み進めていくのもGOODですね。
では、ブルゴーニュの郷土料理以外でアリゴテワインとよく合う料理は? 答えはズバリ、魚を使った料理全般! ワインのほどよい酸味が魚の生臭さを消し、旨味を引き出してくれるのです。バターやオリーブオイルでソテーした欧風料理だけでなく、天ぷらや刺身といった和食とも相性抜群ですよ。

©BIVB / Image & Associés

七不思議その7 アリゴテの多様性は∞

ブルゴーニュ・アリゴテの名前で売られている白ワインは、アリゴテ種を100%使用しています。とはいえ、同じアリゴテ種100%のワインでも銘柄によって風味は様々ということ、皆さんはもう気づいていますよね。ワインの質を左右する要素は、樹齢、畑の位置、その年の天候、酵母の違い、熟成樽のチョイスなどなど多岐に渡ります。さらに、畑違いのブドウをブレンドするといった工夫もあり、造り手のセンスと腕によってバリエーションが無限に広がるのです。
ブルゴーニュ土着品種として静かに愛されてきたアリゴテ種は栽培醸造技術を向上させた造り手の努力が積み重なり、大きな飛躍を果たしました。今やシャルドネ種と並ぶ高貴品種とみなされ、東ヨーロッパや南米でも栽培に挑戦する人たちが現れるほどです。

不思議いっぱいのアリゴテ種、おうちでも深掘りを!
フランスワインの価格は上昇するばかりですが、まだまだお手頃価格で入手できるアリゴテの底力にいち早く気づけた人はラッキー。さあ、さっそくアリゴテワインとお好みの料理を用意して乾杯とまいりましょう!

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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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