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WINE

イタリアの名門ワイナリー・MASI(マァジ)社が2023年コンテンポラリー・アートを御披露目

ワインは土とブドウの木、人が織りなす芸術品であると考えることもできる。もちろん嗜好品であり、ワインがなくても生きてはいけるけれど(もちろん無くてはならない人もいるが)、あれば人生を楽しく豊かに幸せにしてくれるものだと思う。だからワインは同じように「あれば人生を豊かにしてくれる」アート、音楽、映画、旅、クルマ、時計と共鳴することが多い。とくにワインはアート作品と多く関わりをもっている場合が多い。

イタリアワインのマァジ社はその一例で、2013年よりワインとアートをクロスオーバーさせるプロジェクトをスタートさせている。
マァジ社について少し説明しよう。ヴェネト州ヴァルポリチェッラ・クラッシカに1772年に設立されたワイナリ―で、イタリアはもとより世界を代表するワイナリーの1つだ。またヴェネト州は、「アパッシメント製法」といわれる竹製の棚の上でブドウを陰干しして乾燥させる伝統的な製法から造られる高級ワイン「アマローネ」でも有名である。
アマローネは、アパッシメントすることで水分を蒸発させるのが大きな特徴のひとつ。それゆえブドウのかさが減り(35%も重量が減り、その分糖分が凝縮される)、結果として必然的に生産量も少ない高級ワインと称される。ヴェネト州はこのアマローネの故郷でもあるのだ。

作品名は「SAIKOU」。西(SAI:ヨーロッパ)の香りを意味する。

では、ワインとアートがクロスオーバーするプロジェクトとは? アーティストが2年に一度選ばれ、マァジ社を代表する「コスタセラ・アマローネ(コスタセラはヴァルポリチェッラ・クラッシカ地区の中で最高の畑。長い日照時間と湖から反射する日照から温暖な気候の恩恵を受けているこの畑で収穫されるブドウからは高品質のアマローネが造られるという)のオールドヴィンテージ」からインスパイアされた作品を生み出してもらい、その作品をエチケットにして、数量限定で生産されるというものだ。2023年に選ばれたアーティストは、漆芸の第一人者でもある日本人・浅井康宏さん。漆芸は東南アジアの特定の樹木から採取した樹液を加工、金粉の装飾、らせん細工を施す、伝統工芸でありアート作品。今回、浅井さんがインスパイアされ完成した作品は漆芸の「香炉」。タイトルは「SAIKOU」西(SAI:ヨーロッパ)の香りである。特にイタリアのブドウやワインの香りを表現しているという。樹液を使い光沢のある香炉という作品は、数千年の歴史を持つ漆芸とお香の文化をクロスオーバーさせたもの。

浅井康宏さん。鳥取出身。1983年生まれ。2005年から漆芸家、蒔絵の重要無形文化財保持者の室瀬和美氏に師事。2007年に独立し、自身の蒔絵スタジオを構える。2017年より京都を拠点に活動。

「コスタセラ・アマローネ」というワインの香りと味にインスパイアされたところを出発点とし、約2年という歳月をかけて「SAIKOU」はできあがった。アマローネがアパッシメントによって時間をかけて丁寧に造られていくものとも相通ずる。 この香炉という三次元のアートがコスタセラ2005のエチケットに印刷されるわけで、そのできあがりにも興味がわく。

限定生産の「“コスタセラ”アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ2005」。浅井さんの制作風景を納めたカタログも入った1本木箱

また、浅井さんが若い美術学生を選び、その学生にはイタリア留学で芸術的経験を積むための奨学金をマァジ社が提供することも発表された。この若い才能がイタリア留学によってどんなインスパイアを受け、クロスオーバーが生まれるのか、将来大きな実を結ぶのが楽しみだ。

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