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知を競うミスコンの勝者、ドイツワインプリンセスが推すブドウ品種は?

第74回目のコンテストでドイツワインプリンセスに輝いたルイーゼ・ベーメさん ドイツワインのミス・コンテストは、テレビで実況中継される国家的イベントだ。さすが質実剛健のドイツ、ミスコンとはいえ完全実力主義である。出場者は、「ドイツのワイン産地すべてに詳しい」「英語が堪能」といった条件を楽々クリアしなければならない。この度、ソムリエ・コンクールのごとく厳しいミスコンで見事「プリンセス」の称号を射止めたルイーゼ・ベーメが来日を果たし、“ドイツワイン攻略法”を笑顔で伝えてくれた。

コンテスト予選を勝ち進んだ5名のひとりとして、最終ステージではドイツワインを自分流にアピール。勝者は、ドイツワインのプロモーション活動、また正しい知識を伝達する教育者の役割を担う。

70年以上の歴史あるミスコンで結果を出す

「ドイツワイン・クイーン(Deutsche Weinkönigin)」は、1947年から続く由緒正しきミスコン。ドイツに13ある代表的なワイン産地で選抜された候補者が一堂に会し、ドイツワインの女性アンバサダーを決める大会だ。予選では「『フェーダーヴァイサー』について、架空のジャーナリストへ向け英語でプレゼンせよ」なんて課題も登場するほど、ドイツワインの知識に加えて表現力まで試される。結果、1位はクイーン、2位と3位はプリンセスとして、1年を通しドイツワインの普及に努めていく。 第75回目にあたるミスコンが開催されたのは、2022年9月29日。ブラインドテイスティングから結果発表に至るコンテスト風景をドイツ公営放送のカメラが追いかけ、ジャーナリスト、インフルエンサー、政治家といった顔ぶれの審査員80人によりTOP3が決定した。何百万人ものTV視聴者が固唾をのんで見守るなか、堂々2位に輝いたのが22歳のルイーゼ・ベーメだ。予選課題の「フェーダーヴァイサー」については、「醗酵途中の発泡酒」であるとの基本情報に加え独特の味わいを流暢な英語で説明し、本選のブラインドテイスティングでは「フランケン地方産のシルヴァーナー」と産地も品種もピタリと当てた。

ワイナリー育ちのベーメは、テイスティングもお手の物。シルヴァーナーの辛口白ワインを口に含み、「この品種はカジュアルなワインに多く使われてきましたが、じつはポテンシャルが高い。きちんと管理すればかなり上質なワインになるんです」。

気候変動への対応が求められる寒冷地ドイツ

ドイツワインプリンセスとして活躍するベーメの実家は、ザーレ・ウンストルートでワイナリーを営む。将来は親からの事業継承を念頭に、彼女は大学での座学のみならず、「やはり経験がものをいうから」と南米や南アフリカなど各国のワイナリーへ積極的に出かけ、見識を積み重ねてきた。
「ドイツのワインをひとことで伝えるなら、フルーティ。最初の香りは豊かでジューシー、そして酸があるのが主な特徴です。もちろん、産地や品種によって様々なスタイルはありますが」
常に分かりやすい表現を心がけるベーメは、ガイゼンハイム大学で栽培と醸造を専攻する大学生だ。来夏の卒業を控え、「気候変動」をテーマに卒業論文を作成する予定とのこと。ドイツはヨーロッパの北にある寒冷地。なら、地球温暖化はドイツにとってプラスになる??
「そうとも言えません。ドイツのワイン生産地はどこも北緯47度以上。私の出身地、ザーレ・ウンストルートに至っては北緯51度と、ブドウ栽培地域の最北限です。北限にあればあるほど、じつは気候変動の影響を大きく受け不安定になってしまい、栽培はより難しくなるのです」

リースリングと合わせたのは生春巻。サーモン、きゅうり、ココナッツが巻かれたモダンなタイ料理を出すレストランでも、ドイツワインは大活躍だ。

ドイツ語は難解、ならばリースリングからスタート

そこで注目すべきはリースリング、とベーメは語る。ドイツを代表するブドウ品種にして、どんな気候でもよく育つからだ。
「気候変動にうまく対応して栽培できるのが、リースリングの強み。糖度の高いリッチなスタイル、クリーンでフレッシュなスタイル、ジューシーなスタイル、といろいろなワインに仕上げられるのも特徴です。さらには同じリースリングでも、モーゼル産とラインガウ産ではキャラクターが異なるという面白さもあります」
とくに高品質なドイツワインは単一畑の名がラベルに記載されているので、ベーメもハイクラスのディナー時には畑名を冠したワインをチョイス。どれも長期熟成に耐え、飲み込んだ後も長い余韻が楽しめる。ただし、当然それらはドイツ語で記載されているので、語学の素養がないと正直……なかなかとっつきにくい。
「ドイツ語、難しいですよね。ドイツ人でも難しいと思いますもん(笑)。ラテン語ベースで、方言だってありますし。だから、地名が分かりづらいなら、まず『リースリング』をキーワードにドイツワインと触れてみてほしいです。酸と甘味を併せ持つリースリングは、魚介を使った寿司のほか、タイ料理などのスパイシーな料理に合わせやすいんですよ」。

パクチーの効いたパッタイ(タイ風やきそば)、カオヤム(ライスサラダ)に、リースリングのゼクトとシルヴァーナーの辛口白を使い分け。

ドイツワインの未来のため生産者側に立って発言

ベーメが日本での消費量アップを期待しているのは、リースリングのゼクト(スパークリング)だ。
「酸が強くても泡の刺激でバランスがとれて、飲みやすいんです。気温が高くて湿気のある夏でも、これさえあればリフレッシュできます。日本ではゼクトがブームで、これからもっと消費されるはず。ドイツではゼクトがブームでもなんでもなく、常に身近にある定番なんですけど」(ベーメ)
逆に、ドイツの都会に住む若者の間でブームとなっているのはオーガニックワイン。寒冷地では畑でオーガニックを徹底実践させるのがかなり難しいが、もともとサスティナビリティはドイツ人の多くが強く意識しており、周辺の隣国と比べても取り組みは早かったという。
いっぽう近年、植物修復・保護の法律が新たに制定される動きがあり、ブドウ栽培を取り巻く環境が一段と厳しくなった。
「この法律に従うと、ドイツのブドウ生産を大幅に縮小せざるを得なくなるのです。先日、私は生産者の声を代弁し、ドイツワインの文化的背景も含めてスピーチをしてきました。政治の仕組みをアレンジしないと、今後は高い品質のワインができなくなる。もちろん、植物の保護、オーガニック栽培、ワイン生産者、すべてが大事。未来を見据えた上で、それぞれが歩み寄らないといけません」
そう落ち着いたトーンで話すベーメの顔は、まさに政治家。しかしインタビューの最後には、
「今日は私が情熱を注いでいるドイツワインのことをたくさん話せて楽しかったです。ドイツには様々な産地と生産者から、スタイルの異なる数多くのワインが生まれているってことを覚えておいてくださいね」
と、チャーミングな笑顔を見せた。ドイツワインプリンセスは、やはり選ばれただけある逸材だった。

第74回のコンテストで選ばれたTOP3。左がベーメ、真ん中がドイツワインクイーンのカトリン・ラング、右はベーメと同じくドイツワインプリンセスとなったユリアン・シェーファー。

ドイツワイン・バイザグラスキャンペーン「German wine weeks 2023」開催!
人気高まるドイツワインを気軽に楽しめるバイザグラスキャンペーンを8月31日まで、日本全国約40店舗の飲食店で開催しています。
キャンペーンの実施期間は、各店舗異なりますので、下記参加店舗リストをご確認ください。
https://www.winesofgermany.jp/german_wine_week/2023/

ドイツワインのことをもっと知りたくなったら:
ドイツワインHP
https://www.winesofgermany.jp/
ドイツワインInstagram
https://www.instagram.com/winesofgermanyjp/

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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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