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関西初進出のブリアンツァ 大阪駅前グラングリーンで描く「炭とスパイスとハーブ」の新章〜BRIANZA OSAKA グラングリーン大阪

取材・文・写真/池田 美樹

ある真夏の日、大阪に出張する機会があった。翌日、東京へ帰る前に、オープンしてやがて半年を迎える「BRIANZA OSAKA グラングリーン大阪」に出かけることにした。大阪駅前に広々と芝生の公園の広がるグラングリーン大阪は、都市のひとつの景観のありようとして注目されているが、この新しい空間で、関西初出店となるBRIANZA8店舗目の世界がどう表現されているか期待を膨らませつつ足を向けた。

この「うめきた公園」をぐるりと囲むようにしてさまざまなビルが建っているがそのうちの1棟である「グラングリーン大阪 南館」の3階、気持ちのいい芝生を見下ろす場所にある「BRIANZA OSAKA グラングリーン大阪」は、想像していた以上に洗練された空間だった。

梅北の新都市の景色が一望できる店内(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)
店内からうめきた公園を望む(筆者撮影

その日は日曜日。11時の開店と同時に入ったにも関わらず、次々とお客が入りあっという間に満席になる。大阪でこれほど早い時間からイタリアンのコースを楽しむ層がいることに、まず驚かされた。

80席という規模ながらゆったりと圧迫感がなく、バーカウンターにはウイスキーのボトルがずらりと並ぶ。休日の昼間の解放感も素晴らしいが、ここでディナーを楽しむ際の期待も高まる。

ディナーでは美しい夜景も堪能できる(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)

今回は5000円のランチコースで、この店のテーマである「炭とスパイスとハーブ」がどう表現されるのかを確かめてみることにした。

前菜に続いて登場したスペシャリテ「トリュフと卵のオーブン焼き」は、東京でも人気の一皿だ。コココット皿に盛られた卵とパルミジャーノレッジャーノ、ベシャメルを層にして焼き上げたグラタンの上で、黒トリュフをたっぷりと削ってくれる。立ち上る香りだけでもう幸福感に包まれ、スプーンで崩すととろりとした卵黄とトリュフの香りがさらに広がる。

TOKYOスペシャリテ トリュフと卵のオーブン焼き(筆者撮影)

プリモピアットに選んだボロネーゼのショートパスタは、奥深いコクのある、丁寧に作られたボロネーゼで、静かに胃を満たしてゆく。セコンドに選んだのは平田牧場三元豚の炭焼きで、「炭」というテーマの真価が問われる。表面は確かに炭火特有の香ばしさを纏いながら、中はジューシーさを保つ絶妙な火入れで、一皿で「炭とスパイスとハーブ」というコンセプトが明確に表現されていた。

この日のプリモピアットに選んだショートパスタ(筆者撮影)
この日のセコンドピアットに選んだ平田牧場三元豚の炭焼き(筆者撮影)

料理に合わせたグラスワインは、ソムリエにお願いした。メニューにスパークリング1種類、白・赤それぞれ3種類がラインナップされ、十分なバリエーションが楽しめる。さらにボトルでは200種類ものワインが揃えられており、イタリアワインを中心とした充実のセレクションだ。

ワイン以外に焼酎、日本酒などの品ぞろえも厚い(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)

東京との違いを強調しない大阪展開の戦略

この店を手がけるのは、六本木ヒルズ「La Brianza」をはじめ都内7店舗を展開するブリアンツァグループの創業シェフ、奥野義幸氏。関西初出店となる今回の挑戦について聞いた。

「大阪駅の目の前という立地なので、東京との違いはそれほど感じていません。さまざまな人が行き交う場所であり、大阪らしさを意識した店づくりというよりは、普遍的な価値を提供していきたいと考えています」と語る。

確かに、料理にも接客にも、いわゆる「大阪らしさ」を押し出すような要素はない。むしろ東京のブリアンツァで培われたスタンダードを、この新しい環境でどう展開するかという視点が感じられた。

バーカウンター(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)

また、カウンターの背後に並ぶウイスキーのボトルは圧巻だ。奥野シェフが世界各国で一人での食事を楽しんできた経験から、「バーカウンターがあると一人でも行きやすい」という発想でこの設計を採用。食事の前後にここで一杯傾けるという楽しみ方も含めて、より幅広い利用シーンを可能にしている。

運営面では、スタッフの自主性を重視している点も注目される。「店舗運営の基本はスタッフによるものです。各店舗に信頼できる店長、料理長を配置し、彼らがスタッフのモチベーション向上を図りながら独立性を持って運営していく。僕からの指令よりも、現場での判断と成長を大切にしています」

シェフの横山亮氏
(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)

メニュー構成を見ると、東京で人気の「TOKYOスペシャリテ トリュフと卵のオーブン焼き」に加え、「OSAKA限定 トリュフと馬肉のタルタル」といった特別な一皿も用意されている。ランチは平日4,000円から、休日5,000円から、ディナーは8,000円からのコースのほか、ディナータイムのアラカルトも充実している。

OSAKA限定 トリュフと馬肉のタルタル(BRIANZA OSAKAグラングリーン大阪提供)

普遍的価値の追求が生む新しい魅力

グラングリーン大阪という新しい都市空間で、東京発のイタリアンがどのような意味を持つのか。大きな窓ガラスから眺めるうめきた公園の緑の広場は、確かに東京では得難い贅沢だが、それだけでは十分ではない。

「炭とスパイスとハーブ」というコンセプトを軸にした料理の完成度と、多様な利用シーンに対応できる空間設計。そして何より、スタッフの自然で質の高いサービス。これらの要素が組み合わさることで、大阪駅前という立地にふさわしい新しい食体験が生まれている。 半年という短い期間ながら、すでに確実な手応えを感じさせるこの店は、関西のイタリアンシーンに新しい選択肢を提示している。東京との違いを強調するのではなく、普遍的な価値を追求するという奥野シェフの姿勢が、結果として大阪ならではの魅力を生み出しているのかもしれない。

奥野義幸氏。六本木ヒルズ「La Brianza」をはじめ、
都内7店舗のレストランを展開するブリアンツァグループの代表。
レストラン経営だけに留まらず、国内外のレストランコンサルティング、商品プロデュース等を手がける。

住所:大阪府大阪市北区大深町5-54 グラングリーン大阪南館 3F
電話番号: 06-4981-0577
営業時間: 11:00~16:00(L.O.14:00)/17:00-23:00(L.O.21:00)
席数: 80席(カウンター7席、個室1部屋)
URL:https://la-brianza.com

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池田美樹

エディター。仏シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ叙任。出版社社員時代の1990年代、ワイン特集の担当になったことをきっかけに、ワインをはじめとする酒と食を巡る文化に造詣を深める。世界40か国を旅し、世界一周クルーズも経験。最近では日本の良さを再発見することがライフワーク。作家としての別名・如月サラでWhynot?マガジンにて『如月サラの葡萄酒奇譚』連載中。

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