取材・文/山田 靖
『YOSHIKIプロデュースワイン「Y by YOSHIKI」 新ヴィンテージ発表会』
毎年9月が近づくと「Y by YOSHIKI 」の新ビンテージの御披露目のためのプレス発表会がYOSHIKIももちろん登場して開催される。いわゆる年一のイベント、風物詩といってもいいかもしれないが、今年は新ビンテージ以外の話題も多く、かなりパワーアップされ盛りだくさんな内容となった。
今年は8月28日、会場は昨年と同じグランドハイアット東京。会場を埋め尽くしたフラッシュの中で、YOSHIKIが静かに口を開いた。「Y by YOSHIKI」の最新リリース、そして現代美術家・奈良美智との世界的コラボレーションの発表だった。
「奈良さんと、ここまでのプロジェクトができるとは夢にも思わなかった」
そう語ったYOSHIKIではあったが、サングラス越しにも音楽と同じ熱量が宿っていることは伝わってきた。

X JAPANのリーダーであり、作曲家、ドラマー、ピアニストとして世界を舞台に活躍してきたYOSHIKI。だが2009年、彼は全く異なるフィールドで新たな挑戦を始めた。舞台はアメリカ・カリフォルニア、ナパ・ヴァレー。コラボレーションの相手は、同地の伝説的な名門ワイナリー「マイケル・モンダヴィ・ファミリー」だった。
そもそもYOSHIKIは、モンダヴィ・ファミリーのワインを長年愛飲し、コレクションしていた。音楽と同じく、自らの感性を注ぎ込める表現のひとつとして「ワイン造り」に惹かれていったという。2008年に初めて自らブレンドしたカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネは、翌年日本で発売され、瞬く間に完売。以来、ナパやロシアン・リヴァー・ヴァレーといった銘醸地のぶどうを使い、「Y by YOSHIKI」はシリーズとして進化を続けてきた。
ただのセレブリティワインではない。その品質の高さから、日本国内だけでなく海外のワイン愛好家にも評価を得てきたことは、リリースのたび即完売が続く状況を見ても明らかだ。
モンダヴィとの新ヴィンテージ
会見では、長年のパートナーでロブロブ・モンダヴィ Jr.も登壇。「Y by YOSHIKI California」シリーズからシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ロゼの新ヴィンテージが発表された。一般発売は9月24日。モンダヴィは「YOSHIKIとの共同作業は常に挑戦であり、彼の求める味わいを形にすることは刺激的だ」と語る。

Y by YOSHIKI California 左から「シャルドネ“アンコール”カリフォルニア2024 」参考価格/6,500円 「ロゼ カリフォルニア 2024 参考価格/5,500円 「カベルネ・ソーヴィニヨン“アンコール”カリフォルニア2024 」参考価格/6,800円(いずれも税別)発売は9月24日開始予定。
ロゼが象徴する“次の世代”への眼差し
2024年には、YOSHIKIは「California」シリーズにロゼを加えた。世界的に人気が高まるロゼだが、日本市場ではまだ定着していない。YOSHIKIは会見で「ロゼに関して、僕の趣旨は日本にロゼの文化の旋風を巻き起こしたいということもあり、おかげさまで大きな反響をいただいています」と語った。彼にとってロゼは単なる流行ではなく、新しい世代にワインを手渡す架け橋でもあるのだろう。
ブルゴーニュのピノ・ノワールに触発されロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノを手がけたように、YOSHIKIのワイン造りは常に「次」を見据えている。その背後には、音楽同様「観客と共鳴する」姿勢が一貫して流れている。
2025年、奈良美智との邂逅
そして今年、YOSHIKIは次なる一歩を踏み出す。TIME誌「世界で最も影響力のある100人」に、YOSHIKIと奈良美智が同時に選ばれた。音楽とアート、それぞれの分野で世界を舞台に戦う二人が出会い、互いの美学に共鳴したことから今回のコラボレーションが実現した。


「Y by YOSHIKI × Yoshitomo Nara」——。
ボトルラベルとキャップには奈良美智のアイコニックなドローイングが配される。MoMAやグッケンハイムに作品が収蔵される奈良のアートが、ナパのワインと結びつくこと自体が前例のない試みだ。奈良は会見でこう語った。
「YOSHIKIさんは自分を真っ直ぐに表現する人。そして彼のワインが本当に美味しかった。それなら、このラベルに自分の絵を載せたいと思った。ワインという完成された世界に、アートとしてどう付加価値を与えられるか、大きなプレッシャーもありました。」
一方のYOSHIKIは「尊敬する芸術家と夢のようなプロジェクト」と言葉を重ねた。音楽とアートが、ワインという“液体のアート”を介して交わる。そこには商業主義を超えた純粋な共鳴がある。

「Y by Yoshiki × Yoshitomo Nara」コラボレーションワインは、2026年2月の発売を予定している。
そして、YOSHIKIサブスクリプションという共有感覚の仕掛
そして今年、さらにYOSHIKIは新しい取り組みとして「Y by YOSHIKI Members Club」を始動すると発表。Y by YOSHIKIは彼のコンサートチケットと同じ、発売と同時に瞬殺される入手すること自体困難といわれてもいる。それゆえ定額制を用いて、二つの方向性のクラブを用意したという発表も見逃せない。
スマートカジュアルクラブ:
気軽に楽しめる情報とワインで、まるで“文化サロン”のような場をオンラインに構築する。
マスターピースクラブ:
限定ワインやコラボ作品を優先提供し、「リアリティ」と「所属意識」を合成する。
この構造は、音楽でのファン会員組織と重なるところがある。つまり、YOSHIKIは「聴衆との関係」をワインでも創出し、「共有の儀礼空間」を設計しようとしているのだろう。
こちらも詳細はまだ発表されていないが、奈良美智コラボワインや、また今回の記者会見で北海道余市で始動したドメーヌ・タカヒコとのコラボワインも、会員向けにいち早く届けられるという。
また、ドメーヌ・タカヒコ監修のワインは2028年を予定しているとのことでまずは買葡萄でのセカンドラインを造ることが先になるだろうと、話してくれた。
「Y by YOSHIKI Members Club」に興味のある方は事前登録を受け付けている
https://www.yoshiki-store.com/forms/ybyyoshikimembersclub

会見の最後、YOSHIKIはクリスタルピアノに向かい、代表曲「FOREVER LOVE」を演奏した。繊細な旋律が会場を包み込み、記者やゲストの熱気を静かに冷ますように響き渡った。
ワインと音楽、一見異なる世界を横断するYOSHIKI。しかし彼にとっては同じ線上にあるのかもしれない。「Y by YOSHIKI」は、単なるセレブワインではなく、アーティストが全身全霊で創り上げた“もうひとつの作品”だ。
2025年。世界的アーティスト二人の手で生まれたボトルが、グラスの中でどんな物語を語り始めるのか。ワインファンだけでなく、アートや音楽を愛する人々にとっても見逃せない一年になりそうだ。

左から ロブ・モンダヴィ Jr.、YOSHIKI、奈良美智
Y by YOSHIKI webは下記をタップ
https://www.ybyyoshiki.com/index.html