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「Why not? マガジン」が注目している最旬な方にインタビュー Vol.02 後半

内藤裕子さん/フリーアナウンサー 後編

カレーってその人の生きた証が詰まっているからおいしい もうずっとカレーに夢中です

文/編集部 写真/小松勇二

インタビュー/麻未(mami) 写真/小松勇二

後編はカレー大学院に通い、カレーの背景にあるドラマを感じ、より愛されるカレーを届けたいという内なるカレー愛が爆発した内藤さんのメインストーリーが展開されます。

内藤裕子さんオリジナルレトルトのアレンジカレーはいかにしてできたか?

麻未)内藤さんがプロデュースされたアレンジカレー。私もすごく大好きで、大ファンです。ワインのテイスティングと同じような感じで、イニシャルアタック、ミッドパレットからフィニッシュって本当にこうテイストが変わっていくんですよね。で、そのミッド、フィニッシュで出てくる一番強い味っていうのが違ってきていて、これって相当お時間かけて作られたんじゃないかなってその時まず思ったんです。アレンジカレーの特徴、開発に際して苦労した点を教えていただけますか?

内藤)わぁ。ありがとうございます。まず、夜食べても罪悪感を感じさせないカレーを作りたい。もう1つは働く女性を想定して作りたいという思いがありました。油分、塩分を減らして低カロリーにしたいと 102kcal にしたんですね。それがコンセプトで、完成までに1 年以上かかりました。当初は牛肉のカレーを試作していたのですが、なかなかうまくいかなかったんです。そんな中、コロナ禍でお家時間が増える中、アレンジが楽しめるものがいいなと思うようになって、自分の好きなものをトッピングできるカレーに変えたんです。例えば野菜や魚介、コロッケでも何でもいいんですが、自由にアレンジができるものがいいなと。油分を減らしてヘルシーでどんな食材とも合う。でもガツンとスパイスが感じられるものにしたい。そこにこだわりを持ちました。

麻未)カロリーをここまで押さえて、この美味しさ。しかもスパイスなどもしっかり出ているし、アタックもまるで今、鍋で作ってはい出来上がりました。というフレッシュ感っていうんですか?それを出せている。ここまで辿り着くにはかなりのご苦労があったのではないかと。

内藤)どのくらい試食したか分からないくらいで、もう家族総出で(笑)。みんなもういいよっていうぐらい、試食してもらいました。はい、小学生から70代の父親まで老若男女ですよね。意見を言ってもらいました。父は味にうるさいタイプなんで、食べた時に「もっとスパイス感があった方がいい」とかいろいろアドバイスしてくれましたね。

麻未)今、スパイスとおっしゃっていましたけれど、この辛味が私は好きなんですね。食べたときに、あっ、このくらいの辛さがすごくちょうどいいなと思って、ちょうど辛いなって分かりつつ、美味しく食べ進められるというところがすごいなと思いますね。

内藤)嬉しいです。作るのに苦労したんですよね。食塩 1.9g でしょう。塩分も減らしたんです。脂質が4.5g……。

麻未) その脂質がすごいですよ。トレーニングしている方から見ても食事制限してる時でもその量だったらいけるっていう話を聞きましたよ。普通のミートソースとかのレトルトなどちょっと調べてみたんですけど、脂質10 とか行くんですよ。低いものでも8~9コンマいくつですね。

内藤)本当これ大変だったんですね。フルーティさが欲しいから、りんご果汁を足してみたり。どれだけ試作品を作ってもらったか。自分のキッチンでも作りながら「こうしてください、これはどうですか」往復書簡のようにやりとりしてましたね。行き着こうとしたカレーはスパイス感がきちんとありつつ、優しいスパイスを感じさせるカレーにしたかったんです。野菜の甘みやフルーティーさ、コクがあるんだけれども、後かふわっとスパイスが追いかけてくるみたいな感じでしょうか。

麻未)アレンジカレーは名前のごとくアレンジできるということの最大の魅力だと思うんですけれども、私が大好きなアレンジの仕方を豆乳 100ml 入れてスープにするんですね。寒い時に体も温まりますし、本当になんかこう割合がちょうどいいんですね。カレーの味がしつつスープになるんですが、内藤さんの一番好きなアレンジ方法を教えてください。

内藤)「豆腐アレンジ」です。豆腐半丁を麻婆豆腐を作る時のように切って、さっと湯通しします。フライパンに鶏ひき肉となめこ、スプーン少々の柚子胡椒を入れて炒めて、そこに湯通しした豆腐を加えて、さっと混ぜたものを湯煎したアレンジカレーの上にかけます。豆腐とカレーって合うんですよ。これもおすすめです。

母が作ってくれたカレーは同じレシピでも味は再現できないです

麻未)内藤さんの著書「内藤裕子のカレー一直線! !」は発売後Amazon の「エスニック・アジア料理本」部門であっという間に 1 位になりましたね。おめでとうございます。この中になすのカレーが出てきますよね。私も作ってみたんですが、とっても簡単でおいしくて、2 日目になったら味がもっと染みてとってもおいしいなと。このカレーはお母様に関係があるカレーと伺いました。その思い出を聞かせていただけますか。

内藤)なすとひき肉のキーマカレーですね。これはやっぱり母の味で、カレーはその人の生きた証が詰まってるからおいしいということを気づかせてくれたカレーです。作ってくれている時は当たり前のように食べていたんです。母が亡くなった後、母を感じたくて、レシピ通りにこのカレーを何度も作ってみました。でも何度作っても母の味にはならなかった。その時にやっぱりその人にしか出せない味わいがあるんじゃないかって。

麻未)そうですね。レシピっていうのはその数字を忠実に守って作っても、微妙な火の加減だったり。あとおそらくお母様がもしかしたら何かちょっと隠し味があったのかもしれませんしね。あとは多分、お母さんがお子さん食べてもらいたいって、その愛情の部分がなんかこう。オーラみたいにあったのかもしれないですね。

内藤)はい。母のカレーが気づかせてくれました。なので、カレー道をさらに究めたいと思うきっかけを作ってくれたのは母だと思っています。父のカレーで目覚めて、母親のカレーでより究めたいとなったんだと。母のカレーはロングセラーというか飽きない味で、多分、父のカレーはスペシャルなんでしょうね。

麻未)内藤さんはワインもお好きと伺いました。内藤さんが個人的にはまっているカレーとワインのマリアージュは何でしょうか?

内藤)「ゲベルツトラミネール」とカレーのマリアージュが私は本当に好きです。ゲベルツトラミネールとの組み合わせと出会って、ワインがカレーの味を引き立て、ワインもカレーと合わせることによってまた違った美味しさが引き出されると感じました。他のものと組み合わせた時とは味わえない感動って言うんでしょうか。それを教えてくれたんです。この組み合わせが最高で、本当にスペシャル。

麻未)これが人間だったらすごいと思うんですよね。やっぱりその 1人の人が出会って 1 + 1 が 2 じゃなくて、3とか 4 とかになっていくっていう。例えば自分で分かっていたよさ、それだけじゃなくて、違うところを他の人が引き出してくれるみたいな。ゲベルツトラミネールはこのカレーと出会ったことで本来の特性がより多角的になった感じがしますよね。

内藤)はい。ゲベルツトラミネールと合わせるとカレータイムが華やぐんですよね。しかもワインには歴史や伝統、作り手の思いがあるじゃないですか。そういう背後にあるものも感じながら、それもまたいいんですよ。オレンジワインとカレーのマッチングも面白いなと思います。そうそう、最近ではルー・デュモン・仲田晃司さんの「フレンズ」というオレンジワインをカレーと合わせてみました。

カレーがテーマのセミナーなど講演する機会も増えてきているという。

「内藤裕子のカレー一直線! !」/池田書店・刊、「アレンジカレー」はネットで購入可能。

右手にスプーン、左手にマイクで、カレーのおいしさと楽しさを広めるためにいろんな活動をしていきたい

麻未)カレーを通して今後どのような活動をされていきたいですか?カレーと一緒に歩む内藤さんの夢を教えてください。

内藤)これからはカレーのおいしさを伝えながら、右手にスプーン、左手にマイクで、カレーアナとしていろいろなことにチャレンジしていきたいですね。声で表現する語りの世界をさらに究めていきたいです。

麻未)声で表現する! いいですね、ぜひやってほしいです。ますますの内藤さんのカレーとアナウンサーのご活躍、期待してます。ありがとうございました。

日本の国民食「カレー」のルーツも語っていただいたインタビュー前編はこちら。

内藤裕子さん  1999年アナウンサーとしてNHK入局。『あさイチ』『ニュース7』など報道・生活情報番組を中心に活躍。ナレーターとして、朝の連続テレビ小説『わかば』、大河ドラマ『篤姫』紀行、NHKスペシャルなどを担当。2017年退局、18年カレー大学院卒業。現在アナウンサー業のほか、レトルトカレーのプロデュースやレシピ考案も行う。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)

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