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WINE

都心から日帰りで楽しむワイナリー:秩父ワイン

秩父ワイン取締役の村田道子さんと筆者(紫貴あきさん)

文/紫貴 あき

紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 28 the glass of wine

「書を捨て旅に出よう」。そんな言葉が似合うように、近年ワインツーリズムが注目を集めています。ショップやレストランでワインを選ぶのとは異なり、実際に産地を訪れ、つくり手の顔を見ながら味わう体験は格別。ラベルの向こうにある物語に触れることで、ワインはぐっと身近で、特別な存在になります。

つくり手に会うからこそ生まれる魅力

ワイナリーを訪れる最大の魅力は、つくり手から直接話を聞けることではないでしょうか。どんなブドウを育て、どんな想いでワインを仕込んでいるのか。その背景を知りながら味わう一杯は、これまでとはまったく違って感じられます。試飲をしながら交わす何気ない会話の中で、自然とその土地や造り手のファンになっていく人も少なくありません。

山梨だけではない 秩父という選択肢

日帰りで楽しめるワインツーリズムといえば山梨が定番ですが、実は、秩父も都心から気軽に訪れることができる魅力的なエリアです。都心からおよそ90分、片道900円ほどでアクセスできる距離感は、週末の小旅行にぴったり。埼玉県北西部に位置する秩父は、山々に囲まれた盆地ならではの気候を持ち、昼夜の寒暖差がブドウ栽培に適しています。ほどよく自然を感じられ、肩ひじ張らずに楽しめるのも魅力です。

秩父最古のワイナリー

秩父を訪れたら、ぜひ足を運びたいのが「秩父ワイン」です。1940年、浅見源作(あざみ げんさく)氏によって創業された、埼玉県最古のワイナリーとして知られています。「これからはワインの時代が来る」と信じ、当時まだ珍しかったワインの専門書を求めて、自転車で神田まで130キロメートルを3日間野宿しながら持ち帰ったという話は、秩父ワインの原点を象徴するエピソードです。

秩父ワインの畑は、標高200〜300メートルほどの場所に広がっています。周囲を山に囲まれた盆地のため、昼と夜の寒暖差がはっきりしているのが特徴です。この気温差が、ブドウの成熟をゆっくりと進め、果実味を保ちながらも、きれいな酸を保つことにつながっています。畑の開墾時に、土壌に石灰を混ぜる土壌改良をしているため、水はけが良いのも特徴。この水はけのよさが、ブドウの凝縮度に貢献しています。

素直でバランスの取れた味わいが生まれる背景には、こうした秩父の恵まれた条件があります。飲むとほっと癒されるような味わいで、食事と合わせやすいと感じられるのも納得です。

秩父の食文化とともに味わう

ワインツーリズムの楽しみは、お酒だけではありません。秩父には、そばや山菜、川魚など、土地の恵みを生かした食文化があります。地元の料理とワインを一緒に味わうことで、その土地ならではの相性を体感でき、旅の記憶はより深く刻まれます。食とお酒、そして人との出会いが重なることで、単なる観光を超えた体験になります。

週末は秩父へ

秩父のワインツーリズムは、知識を学ぶための旅ではありません。見て、聞いて、味わう。そのシンプルな体験だけで十分に楽しめます。日帰りという気軽さもあり、一度訪れると秩父のワインやお酒を応援したくなるはずです。旅先で出会った一本は、次にグラスに注ぐとき、きっと特別な存在になってくれるでしょう。

■秩父ワイン:見学コースの詳細はココをタップ

秩父ワイン 源作印 甲州シュール・リー


淡いレモングルーン。フレッシュな柚子、オレンジの花の香り、パンドゥミがアクセントに香る。穏やかな果実味と生き生きとした酸が心地よいバランス。
「2024年ヴィンテージはマコン国際ワインコンクール2025」で銀賞を受賞。

秩父ワイン「甲州シュール・リー」がマコン国際コンクール銀賞 町長に報告 – 秩父経済新聞はココをタップ
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紫貴あき

ソムリエ | ワイン講師 日本最大級ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の人気講師。 丁寧なレッスンは、 初心者から上級者まで わかりやすいと評判。 著書に『ゼロからスタート!紫貴あきのソムリエ 試験』( KADOKAWA)。この夏には、かんき社から『ワイン図鑑』を出版予定。

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