荒井由実・コバルトアワー ジャケット
文/紫貴 あき
紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 30 the glass of wine
悲しいことがあると開く、革の表紙……。 この季節になると、ふと松任谷由実さんの名曲『卒業写真』を口ずみたくなるのはなぜでしょうか。
卒業、異動、引越し。春は期待と寂しさが入り混じり、心が少しだけソワソワする季節です。「お祝いにワインを贈りたいけれど、何を選べばいいか分からない」。そんな方へ、今回は『卒業写真』の歌詞のように、記憶にそっと寄り添うワインの選び方をご紹介します。
ワイン名で選ぶ:「銀の翼」
卒業や栄転といえば、「羽ばたく」イメージ。そんなシーンにぴったりの名前を持つワインが「エール・ダルジャン(Aile d’Argent)」。フランス、ボルドーの超有名生産者シャトー・ムートン・ロートシルトがつくる白ワインです。その意味は日本語で「銀の翼」。
この響きの良いワイン名ならば、これから新しい環境に飛び込む人へ、「あなたの翼で、どこまでも自由に羽ばたいて」というメッセージを込めることができそうです。(余談ですが、このワイン名、ワイナリーのオーナーが子供に読み聞かせた「魔法の翼」の物語に由来するそうです)
ちなみに、贈る相手が「銀の翼……あ、中島みゆき?」とボケてきたら、「それは銀の龍!」と鋭く突っ込む準備もお忘れなく。
エール・ダルジャン
シャトー・ムートン・ロスチャイルド

生産国・地域:フランス・ボルドー(AOCボルドー)
品種:ソービニョン・ブラン52%、セミヨン39%、ソーヴィニヨン・グリ8%、ミュスカデル1%
参考価格:37,400円(税込)
青リンゴ、花の蜜のような豊かな香りに、木樽熟成由来のナッツ香が寄り添う。豊かな酸と果実味のバランスが素晴らしい。
味わいで選ぶ:熟成したワインは「大人の証」
『卒業写真』の歌詞なかで、大人になった「私」が昔の自分を振り返ることができるのは、確かな歳月が流れたからこそ。ワインもまた、歌と同じように「時間」を味方につけることができる飲み物です。
おすすめはスペインのクネ・リオハ・グラン・レセルバ。「グラン・レセルバ」は、簡単に言うと「しっかり熟成させて、おいしくなるのを待ってから出荷されたワイン」のこと。スペインの規定では最低5年以上(うち18カ月は木樽熟成)は寝かしてなければなりませんが、実際はもっと長く寝かされています。
スペインの伝統産地リオハでは、何年も樽の中で寝かせて、角が取れてまろやかになって「いつ飲むの?今でしょ!」とまさに飲み頃で芳醇な味わいになったタイミングで出荷してきます。若いワインのフレッシュさも良いですが、いろいろな経験を積んで、深みが出てきた大人には、こうした落ち着いた赤ワインがよく似合います。
クネ・グラン・レセルバ
クネ

生産国・地域:スペイン・リオハ・アルタ(D.O.Caリオハ)
品種:テンプラニーリョ85%、グラシアーノ10%、マスエロ5%
参考価格:6,050円(税込)
ブラックベリー、タバコ、ココナッツ、レザーと香りが多層的に広がる。柔らかなタンニンとなめらか舌触りが心地よい1本。
ワインで祝う角出
『卒業写真』のメロディに思いを馳せて、大切な人へ 「頑張ってね」という言葉の代わりに、ストーリーのある一本を贈ってみてはいかがでしょうか。もちろん、自分へのご褒美に用意して、ユーミンを聴きながら「私もよく頑張った」と乾杯するのも贅沢な春の過ごし方です。新しい門出に、素敵な乾杯がありますように!
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