文/mami
今年も、世界最多数の星を誇る東京のレストランシーン
東京のトップスターシェフ達がステージに

世界最多の526軒
ミシュランガイド東京2026年版では、新規掲載店65軒が加わり、合計526軒が掲載された。うち、三つ星が12件、二つ星が26件、一つ星が122件、ビブグルマンは114件、セレクテッドレストランは252軒、ミシュラングリーンスターは13軒だ。東京は、世界でもっともグリーンスターの多い都市でもある。 受賞セレモニーが終了し、カクテルパーティー会場へ。ステージ上での緊張が解け、ほっとした、輝くような笑みを浮かべたシェフたちが続々と入場する。お店での調理中に見せることはないであろう笑顔が、部屋のあちこちで花咲き、なんともゴージャスで、スペシャルなオーラが漂う。スーパーシェフたちが一同に集うこの光景は、一年に一度きりだ。



シャルル・エドシックが公式シャンパーニュ
お祝いムードをさらに高めたのは、オフィシャル・シャンパーニュとして振る舞われたシャルル・エドシック。東京の星付きレストラン70軒以上でオンリストされており、ガストロノミーに愛され続ける存在だ。約2.3軒に1軒以上で扱われているという驚異的な浸透率を誇る。

スーパー・シェフがシャルル・エドシックを愛する理由
なぜこのメゾンは、かくもガストロノミーに愛され、さまざまなレストランで料理と調和すると考えられているのか? 三つ星を獲得した麻布かどわきの門脇氏にその理由を伺った。
「調和する理由は、厚みと奥行きのある風味にあると思います。リザーヴワインと熟成の長さから生まれる複雑さと深みは、料理の『旨味』に通ずるところがあるのです。」
旨味の重層性
門脇氏は、共通点についてさらにこう続けた。
「和食では、味付けが控えめであっても、旨味がしっかりと支えていることで、味わいに豊かさが生まれます。鰹や昆布などの出汁はもちろん、野菜など多様な素材に含まれる旨味を重ね合わせることで、料理に奥行きのある深い味わいが生まれます。そうした旨味のレイヤーと同じように、このシャンパーニュにおいても、複雑な要素が幾重にも重なり合うことで、味に厚みと広がりをもたらしています。まさに、料理と同じアプローチで、味を構築していると感じました。」

麻布十番「麻布 かどわき」門脇俊哉氏。2020年に三つ星を獲得後6年連続受賞。
旨味の相乗効果
シュール・リー、さらに長期熟成を経た旨味たっぷりのこのシャンパーニュが、同じように風味を構築した料理とペアリングされると、異なる旨味同士が組み合わされ、数倍にも膨らむ旨味の相乗効果が得られる。旨味受容体は、舌表面だけでなく、胃腸にも存在するので、美味しさが染み渡る、偉大なマリアージュの誕生が期待できる。
旨味は、トマト、チーズ、キノコ類、肉、魚介類などにも多く含まれるため、和食のみならず、イタリアン、フレンチという料理のジャンルでも、旨味との相乗効果が得られる。マリアージュの応用範囲が素晴らしく広いというのも、このシャンパーニュの魅力だ。
複雑な風味とエレガントな酸味
また、門脇氏は、会場でこのシャンパーニュを試飲しながら、複雑さと深みのある味わいの中に、しっかりと存在しているこのメゾン特有のエレガントな酸味にも言及していた。酸味は、ガストロノミーにおいては、重要なエレメントである。 当日サーブされたシャルル・エドシックのブラン・ド・ブランには、10のクリュで栽培されたブドウが使用されており、各々の地域を反映した、その多様性からくる複雑さも見せている。
高割合のリザーヴワインと長期熟成
シャルル・エドシックは、リザーヴワイン(最長30年熟成を含む)を高割合で使用し、さらに澱とともに長期熟成を施すことで深みを実現している。熟成は、ガロ・ロマン時代の歴史あるクレイエール(採石場跡)で行われており、ここは世界遺産にも登録されている。

このクレイエールは、地下深く、光の届かない静寂の中に位置し、年間を通じて温度は約10℃、湿度は約90%と安定している。こうした環境は、シャンパーニュの熟成に理想的とされており、ワインはゆっくりと穏やかに熟成し、繊細で複雑な風味を育むことができる。シャルル・エドシックの味わいの奥行きとエレガンスは、まさにこの特別な熟成環境によって支えられている。
イノベーションは続く
1851年にメゾンを創立したシャルル=カミーユ・エドシックは、アメリカに最初にシャンパーニュを紹介した人物としても知られている。並々ならぬ努力と苦労を経て市場を育てた彼の姿勢は、まさにイノベーティブそのもの。受け継がれてきた歴史を大切にしながら、革新の精神を失わずに前進し続けるメゾン シャルル・エドシックは、進化を続けるガストロノミーの世界と見事なシナジーを生み出している。
そして、シャルル・エドシックはその革新性を、サステナビリティの分野でも体現している。2024年、メゾンはシャンパーニュ・メゾンとして初めてB Corp認証を取得した。これは、環境・社会・ガバナンスの各側面において高い基準を満たした企業に与えられる国際的な認証であり、シャルル・エドシックが持続可能な未来に向けて責任ある行動を取っていることの証である。
星が授けられるその瞬間、グラスの中でも静かに輝きが生まれる。
その一杯に、技と時が織りなす物語が宿る。
ガストロノミーの進化とともに、味わいの深みだけでなく、価値観の深みも求められる時代。シャルル・エドシックは、その両方を兼ね備えた存在として、今後も多くのレストランのテーブルを華やかに演出し続けるだろう。
