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WINE

ドメーヌ・フェヴレ200周年記念ワインディナー開催!

文/名越 康子 写真/小松勇二

ブルゴーニュワインの生産者として知られるフェヴレは、1825年の創業から今年で200周年を迎えました! それを記念して、ドメーヌ・フェヴレのワインディナーを北参道のル・ビストロにて開催させていただきました。実はちょうどその前週、7代目当主のエルワン・フェヴレさんが来日されていたのですが超多忙のため日程が合わず同席してもらうことは叶いませんでしたが、メッセージをいただきましたので是非ご視聴ください!

エルワンさんは、2005年に25歳で社長に就任されたので、彼にとってはその20周年でもありました。
今回は、エルワンさんに代わってワインジャーナリストでブルゴーニュに精通した柳忠之さんと、ル・ビストロを含むヒュージグループの飲料を統括されている有名ソムリエ石田博さんがワインと料理について解説してくださいました。どのような会だったのか、かいつまんでお知らせしますね。

フェヴレの歴史と概要

フェヴレは1825年にニュイ・サン・ジョルジュ村の靴職人、ピエール・フェヴレによって創立されました。当初はネゴシアンとしてワインビジネスを開始。そして、1834年にニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュのレ・ポレ・サン・ジョルジュの畑を購入したのを皮切りに、自社畑を増やしていきました。

「偉大なワインを造るためには自社畑を持つことは必要だ、という哲学のもと増やしていきました」と、来日時のセミナーでエルワンさんも語っていました。今では合計140haも所有し、フェヴレの全生産量の80%が自社畑のブドウから造られています。

「良い畑をどんどん増やしていきました。1874年には、グラン・クリュ・コルトンのクロ・デ・コルトン。6代目フランソワの時代には1960年代にコート・シャロネーズのメルキュレに広大な畑を入手。7代目のエルワンになると、2008年頃にバタール・モンラッシェ、ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェなど白用の銘醸畑も入手しました。2013年にはジュヴレ・シャンベルタンのドメーヌ・デュポン・ティスランドを手に入れ、グラン・クリュのシャルム・シャンベルタン、プルミエ・クリュのラヴォー・サン・ジャックも加わりました。さらに2014年にはシャブリのビヨー・シモンを傘下に収めています。ドメーヌ比率が8割と高く、その上、今年2025年には自社畑全てにおいてオーガニック認証取得を完了しています。オーガニック認証を取得した1社あたりの面積はブルゴーニュで最大です」と、柳さんが説明します。

ブランド解説、ワイン解説はワインジャーナリストの柳忠之さんが登壇

「また近年、2024年にカリフォルニアのソノマにあるウイリアムズ・セリエムも完全に買収しました。本拠地のブルゴーニュにおいては、2018年に醸造設備を一新し、全てグラヴィティ・フローで管理できるようになり、プルミエ・クリュ以上の赤は木製発酵槽で醸造しています。父フランソワの時代には、長期熟成を見据えて抽出が強く、若いうちはガチガチの赤ワインでしたが、エルワンに代わってからはタンニンの繊細なエレガントなワインになりました」と、説明が止まらない。語ることの多い造り手さんです。

6種類のフェヴレ 豪華なラインナップ!

ブルゴーニュ・シャルドネ 2022 ✖️ グジェール

柳忠之さん(以下、敬称略)「これはネゴシアンものです。2022年は霜害もなく、久しぶりに訪れた質も量も満足のいくヴィンテージでした。春先以外は雨が少なかったため病気も少なく、また夏は乾燥して暑いながら反対に熱波もなく、理想的な年でした。飲みごたえもあります」。

HUGEグループコーポレイト・ソムリエ 石田博さんも解説いただけ、柳さん石田さんのペア解説と豪華なラインナップです。

石田博さん(以下、敬称略)「変革期の2015年にフェヴレを訪問しました。そしてこれはブルゴーニュ・シャルドネでありながら、ピュリニー・モンラッシェの区画のブドウも使われています。クリーンに造られていて、香りも味わいもスムーズですね。フラワリーなアロマ、余韻にはほのかな塩味も感じられ、グラスで1杯だけ飲むのはもったいないぐらいですね。ボトルで頼んでその変化を楽しみたいワインです」。

味見すると、熟した白い果実の香りが心地良く、まろやかなアタックとフレッシュな酸のバランスが良くとてもアプローチしやすい味わいです。そして余韻がとてもフレッシュなので、また一口飲みたくなり、確かにこれ1本だけでも充分に楽しめてしまいます。

ラドワ レ・マルヌ・ブランシュ・ブラン 2022 ✖️ 紅富士トラウト 根セロリと林檎のレムラード


「コルトンの丘にあるラドワの村名区画を6代目のフランソワが入手しました。当時はピノ・ノワールが植えられていたのですが、斜面が北北西向きで涼しいこと、土壌がマルヌ、つまり泥灰土で石灰質の割合が高く白ワインに向いているとわかったため、エルワンがまず0.4ha分をシャルドネに植え替えて良い結果が得られたので、2013年には全てシャルドネに植え替えました。現在、3.19haまで広がっています。ピント背筋の伸びた味わいです」。

石田「確かにラドワは赤ワインのイメージの方が強いですね。だから、白のラドワは友人たちとの持ち寄りワイン会に持っていくとスターになれるアイテムでもあります。このラドワの白は、甘やかな熟した果実の香りがありながら、味わいは繊細で余韻に塩味が感じられます。合わせたのはブルゴーニュのクラシックなスタイルの料理ですが、エルワンと同じように軽やかに革新的に仕上げてあります。フレッシュなトラウトのマリネに、根セロリとリンゴをマヨネーズとヴィネガーのソース、レムラードを添えました。定番なので良く合うと思いますよ」。

味見すると、ワインは柑橘類などハツラツとした繊細な香りが立ち上り、キリッとした酸のまっすぐな味わいです。石田さんがおっしゃる通り、リンゴと根セロリのシャキッと感にピッタリです!

メルキュレ プルミエ・クリュ クロ・デ・ミグラン モノポール 2022 ✖️ パテ・アン・クルート

「メルキュレはニュイ・サン・ジョルジュから南に50kmぐらいにある村です。このクロ・デ・ミグランは6.31haと広めの畑で、フェヴレが単独所有しています。土壌は粘土石灰質ですが、中でも鉄分が強い赤い粘土石灰質で、力強い赤ワインが生まれます。少し野生的な香り、鉄分に由来する血を思わせる風味があると思います」。

石田「メルキュレはフェヴレを代表するワインの一つです。ブラックチェリーやスミレの花のアロマがあり、しっかりとした骨格がある味わいです」。
テイスティングしてみると、香りは若々しくまだ少し閉じ気味ではありますが、ほんのりスパイスを振りかけたラズベリーなどの赤い果実が感じられ、丸みもあるテクスチャーが心地良く、グリップもあり、確かに余韻に鉄っぽさも感じます。ギュッと凝縮した味わいのパテとちょうど良いバランスです。

ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエ・クリュ レ・サン・ジョルジュ 2022 ✖️ 真鯛のヴァプール ナンテュアソース 栗と茸のリゾット

「このニュイ・サン・ジョルジュはフェヴレのお膝元です。エルワンをはじめとして、プルミエ・クリュのレ・サン・ジョルジュに畑を所有する13名の生産者が、ここをグラン・クリュに格上げしたいと長年努力しています。ただ、その申請前には調査が必要で、調査に10年以上も費やしているそうです。ようやく来年INAOに申請できると言っていましたから、昇格は2030年頃ではないかと期待しています。ニュイ・サン・ジョルジュ自体が骨太でガツンとしたワインが多く、レ・サン・ジョルジュからも基本的にリッチでたくましいワインが生まれますが、エルワンの代になってからとてもエレガントになりました」。

石田「このニュイ・サン・ジョルジュは、実にエレガントな香りですね。隣のヴォーヌ・ロマネを思い起こさせるぐらい、きめ細やかでどこまでも奥行きがあります。グラスの中に飛び込みたくなるくらいに複雑さとエレガンスを兼ね備えています。お肉料理と合わせることが多いワインだと思いますが、今日はあえてお魚と合わせるという現代的な組み合わせにしてみました。ナンテュアソースというのは甲殻類のソースです」。 味見してみると、まさにエレガントで複雑性ある香り! 赤い果実、スパイス、ダージリンなど、上品で優雅。上質なブルゴーニュの香りの魅力は一度経験すると虜になってしまうというのがわかりますね。味わいもしなやかな果実味ととてもフレッシュでキリッとした酸がバランスし、余韻にはミネラル感が残ります。

ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ クロ・デ・ジサール モノポール 2022 ✖️ 黒毛和牛頬肉の赤ワイン煮込み トリュフ風味のヌイユ

「ジュヴレ・シャンベルタンは王様格。そしてクロ・デ・ジサールは斜面にある0.61haの小さなプルミエ・クリュで、フェヴレの単独所有です。すぐ隣にはグラン・クリュのルショット・シャンベルタンの畑です。ちょうどコンブと呼ばれる谷間の吐き出し口があって涼しい風の影響を受けていることと、石灰質が強い土壌のため、通常ジュヴレ・シャンベルタンはしっかりとしたストラクチャーで酒質も大きい傾向にありますが、ここは繊細なスタイルになります」。

石田「ジュヴレ・シャンベルタンの典型的な特徴は、鉄分が感じられ、骨格が強くてタンニンも豊か、そしてアルコールもしっかりしています。このクロ・デ・ジサールは、その典型もありながら、冷涼感が加わっています。ジュヴレ・シャンベルタンの村から歩いて15分ほどの場所ですが、明確にこの区画ならではの個性があります。まさに、隣接していてグラン・クリュの中でも最もエレガントなルショット・シャンベルタンの系譜を踏んでいます。ジュヴレ・シャンベルタン村にはいくつかの素晴らしいレストランあって、そこでは必ずブッフ・ブルギニヨンが出てくるので、今日はその組み合わせを楽しんでいただきたいと思います」。

味見すると、まだ開ききっていない状態でカッチリとした香りです。繊細で凝縮した果実や複雑さが感じられます。口中では滑らかなテクスチャーで酸のフレッシュ感が心地良く、ミドル・パレットもとても充実し、きめ細やかなタンニンも印象的。ほろほろと口中で解けるような頬肉と贅沢な組み合わせです。

コルトン クロ・デ・コルトン・フェヴレ グラン・クリュ モノポール 2021 ✖️ モンドール

「コルトンの丘は全体で107haあります。そしてコルトンの丘にあるグラン・クリュは、3つの村で構成されていますが、ここはラドワ・セリニー村に属しています。広さは2.76haで、ここもフェヴレの単独所有です。1874年にこの畑を購入し、全体で3.6haありますが、そのうち0.86haはシャルドネに植え替えてコルトン・シャルルマーニュを造っています。ここをフェヴレが購入した当時、『クロ・デ・コルトン』として前所有者から購入したため、『クロ・デ・コルトン』として販売していました。ところが、コルトンの丘に多くの畑を所有している会社からクレームが入ったのです。コルトンの丘には他にも『クロ』(石垣に囲まれた区画)がある。例えば、『コルトン クロ・デュ・ロワ』がある。それなのに、フェヴレだけが『クロ・デ・コルトン』と名乗るのはけしからん、という物言いがつき、訴訟が起こりました。結局、『クロ・デ・コルトン』ではなく、『クロ・デ・コルトン・フェヴレ』とすることで、1939年に解決しました。最高裁が認めたため、万が一この畑がフェヴレから他社に売られたとしても、もう名前は変えられないことになります。ちなみに、ブルゴーニュで所有者の名前がワインの名前になっているのは、ロマネ・コンティとここだけということです。東向き斜面で、酸化鉄を多く含む赤い土壌なので重いワインが生まれるかと思いますが、実は小石が多く水捌けが良いのでそうはなりません」。

石田「コルトンの丘には、東向き、西向き、南向き、北向きの畑があり、この斜面の向きによってワインの個性は全く異なります。この『クロ・デ・コルトン』は東向きで朝日を浴びるため、バランスの良さときめ細かさが特徴です。また、西側の小さな谷間で風が吹き抜けるため、引き締まっています。クリーミーなテクスチャーでダージリンの香りが鼻を抜けて立ち上るようです。12月に入り、モンドールの季節になりましたので、旬の味とお楽しみください」。 味見すると、清楚とも言える上品な香りが次第に華やかさを増していきます。そしてジューシーで伸びやかな酸とタンニンのきめ細かさが溶け込んでシルキーなテクスチャーを形成。余韻までずっと上品でとても優雅な味わいです。

素晴らしい畑がどんどんと増えていくフェヴレは、まさに伝統がありながら革新をし続けている生産者の一つですね。今回は200周年を記念して、フェヴレの単独所有の畑(モノポール)の銘柄を中心に味わわせていただき感激です。そして、村や区画ごとの個性が明確に表現されながら、7代目ならではの一貫したエレガントなスタイルも十分に感じ取れました。ご参加いただいた皆さんも、それぞれ自分の一推しを見つけられたようで満足感で笑みが溢れていました。

ご協力いただいた皆さま方全員に深く感謝いたします!
<フェヴレ>紹介ページ(ラック・コーポレーションHP)
https://order.luc-corp.co.jp/shop/m/m10106100/

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