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メゾン・フレールジャン・フレール──20周年記念ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ マグナムという到達点

文/山田 靖

年末年始という特別な時間にふさわしいシャンパーニュとは何だろう。カウントダウンの高揚、年始に集う親しい人たちとの食卓、少し背筋を伸ばして迎える節目の瞬間。そのどれにも共通するのは、「時間を祝う」という行為だ。そんなテーマを、これ以上なく誠実に体現する1本がある。
メゾン・フレールジャン・フレールの20周年を記念して造られた、特別限定品「ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ マグナム」。これは単なる記念ボトルではない。時間そのものを味わうためのシャンパーニュだ。

フレールジャン・フレールは、シャンパーニュにおいては比較的若いメゾンでありながら、驚くほど揺るぎない哲学を持つ。彼らが信じているのは、偉大なシャンパーニュを生む鍵は「忍耐」と「粘り強さ」にあるということ。短期的な成功やトレンドには目もくれず、キュヴェごとに4年から10年、時にはそれ以上の澱熟成を施す。その結果として立ち上がる味わいは、華やかさよりも奥行き、即効性よりも余韻を重んじる、極めて知的なスタイルだ。

このメゾンを率いるのは、ギョーム、ロドルフ、そしてリシャールのフレールジャン・テタンジェ三兄弟。母方はシャンパーニュの名門テタンジェ家の血を引き、幼い頃からテロワールの重要性とブドウ栽培の哲学を学んできた。一方で父方は、ナポレオン軍に大砲を供給した鉄工職人の名門フレールジャン家。精密さと頑強さ、そして時間に耐えるものづくりの精神は、この家系のDNAとして確かに息づいている。

彼らのアイデンティティの核にあるのが、コート・デ・ブラン、とりわけグラン・クリュ村アヴィーズだ。数百万年前の海が残した石灰岩質土壌は、シャルドネに研ぎ澄まされたミネラルと緊張感を与える。選び抜かれた区画のブドウのみを用い、制御された生産と長い熟成を経て生まれるシャンパーニュは、エレガンスと複雑さを兼ね備え、ミシュラン星付きレストランの料理とも自然に寄り添う。

の哲学の集大成とも言えるのが、20周年記念の特別限定品「ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ マグナム」だ。アヴィーズ、クラマン、オジェという名だたるグラン・クリュ村のシャルドネ100%。2015年に仕込まれ、10年という長い熟成を経てリリースされたこのキュヴェは、「Time Reveals ― 時が明かすもの ―」という彼らの新たな哲学を体現している。

あえて使用されたのは、かつて特級畑コルトン・シャルルマーニュを熟成させていた古樽。ブルゴーニュの伝統へのオマージュでありながら、シャンパーニュの表現を再定義しようとする挑戦でもある。マグナムというフォーマットが、熟成のポテンシャルをさらに高め、泡はよりきめ細かく、味わいはより立体的に進化する。**「シャンパーニュはマグナムで飲むのが一番美味しい」**という定説を、これほど雄弁に証明するボトルも珍しい。

グラスに注げば、輝く黄金色。熟した柑橘、白い花、ブリオッシュの香りが重なり合い、口に含むとミネラルの張りとシルキーな質感が静かに広がる。アーモンドやヘーゼルナッツのニュアンスが長い余韻を描き、時間がゆっくりとほどけていく感覚に包まれるだろう。舌平目のムニエルやアワビのバターソテーと合わせれば、年末年始の食卓はひとつ上の次元へと引き上げられる。

世界4,000本限定、日本にはわずか60本のみ。希少性だけを語るのは簡単だが、この1本が真に特別なのは、「20年」という時間を、祝うためではなく、味わうために造られている点にある。流行に敏感で、アートや映画、旅に価値を見出す人にこそ響く、静かで強いメッセージを持ったシャンパーニュ。
年末年始、時間に乾杯するなら、このマグナムを選ぶ理由は、もう十分すぎるほど揃っている。

フレールジャン・フレール「ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ マグナム」
日本国内60本限定発売 価格:63,800円(税込)

フレールジャン・フレール公式サイト(外部サイト)
https://frerejeanfreres.com

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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