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WINE

ポメリー・ソムリエコンクール 2025

文/島 悠里 写真/ヴランケン ポメリー ジャパン、Yasu Iijima

My wine journey by Yuri Shima ~世界のワイン便り Vol.18

10月下旬、「ポメリー・ソムリエコンクール2025」の決勝戦が開催され、鈴木大輝氏(マンダリンオリエンタル東京)が優勝し、栄冠を手にしました。このコンクールは、1993年に始まった歴史ある大会で、これまで数多くのトップ・ソムリエを輩出していて、過去の優勝・上位入賞者たちは活躍中のソムリエばかり。また前回大会より応募資格が35歳以下となり、次世代を担う若手ソムリエの育成にも貢献しています。

(中央)優勝の鈴木大輝氏、(左)ポメリー最高醸造責任者クレマン・ピエルロー(Clément Pierlot)氏、
(右)ヴランケン ポメリー ジャパンCEO師井研氏 (写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

ファイナリストの5名((写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

課題は、まず事前準備の英語でのプレゼンテーション。テーマは、日本におけるポメリーのプロモーションの提案で、時間は5分。具体的な目標値を出したり、クリエイティブで様々なアプローチでの提案があり、各選手の良さや強みが出ていました。 次に、スパークリング・ワイン4種のブラインド・テイスティング。どの選手も練習を積み重ねた成果を出し、スムーズで多彩なコメントを発表していましたが、難易度の高さも感じました。

テイスティング課題のスパークリング・ワイン(Photo by Yasu Iijima)

そして最後はサービス課題。想定されているレストランを舞台に、グラス・シャンパーニュとして準備されているポメリーのキュヴェ・ルイーズの3つのヴィンテージ(2005、2002、1999)を、各ゲストのリクエストに応じて選んで注ぐというもの。決勝戦の開始前に、ゲスト役として審査員団から説明を受け、ピエルロー氏とング氏と一緒に打ち合わせをしました。

サービス課題の様子(写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

ポイントは、シャンパーニュの各ヴィンテージの特徴の理解に加えて、各ゲストの要望をよく聞き、それに合ったヴィンテージをサービスすること。当然ながら、サービス実技自体も評価されます。サービスの最中には、私たちゲスト役から(突然の)質問にも答えなくてはなりません。私からの質問は、サービスされているキュヴェ・ルイーズに関連して、「ルイーズとは誰ですか?」というものでした。
 
このコンクールのために来日したピエルロー氏は、「日本のソムリエたちのプロフェッショナリズムを感じ、また回を重ねるごとにレベルが上がっていることを実感します。こうしてアンバサダーとして活躍されるソムリエたちは、私たちにとっても鍵となる大事な存在です」とコメント。
 
そして、森審査委員長は今回のコンクールをこのように総括しました。
 
「回を重ねるごとにコンクールの主旨をしっかりと踏まえた上で準備をしている選手が増え、レベルも上がっていると感じました。確かに冠としてポメリーは付いておりますが、ポメリーに関することだけでなく、スパークリング・ワインやその他の飲料、料理や歴史的な背景など、あらゆることに興味を持ち、掘り下げが出来ていた方々が決勝に残ったという印象です。中でも優勝者の鈴木さんは立ち居振る舞いはもちろん、表情や話し方もエレガントで、まさに”この人にポメリーを注いでもらいたい”と思わせるような決勝でのパフォーマンスでした。惜しくも2位、3位となった三竹さんや山田さんも素晴らしかったですが、鈴木さんの仕上がりが良過ぎたというのが正しい理解だと思います。1点、コンクールを審査していて残念だったのが、準決勝の筆記試験です。”Louis Pommery”について書かなければいけない課題にも関わらず、”Louise Pommery”について書いていた方が数名おりました。コンクールで最も重要なことは課題をしっかりと理解すること。”Listen, listen, listen!!!”と世界最優秀ソムリエコンクールでもジェラール・バッセさんが言っておりました。お客様の要望をよく聞き、理解することが良いサービスの大前提であることを忘れないで欲しいです。」

審査員の方たち(写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

決勝のあとは、アペリティフとガラ・ディナーが開催されました。その前に、優勝者は発表されたのですが、2位から5位の順位は、ガラ・ディナーでの追加課題により決定されました。そのため、ディナー中に、順位決定のマグナムボトルを均一に注ぐ課題や画像によるクイズがおこなわれ、観客も巻き込む形で会場は大いに盛り上がりました。

ディナーでは、貴重なバックヴィンテージを含むポメリーのシャンパーニュとともにコース料理が提供されました。各シャンパーニュに合うように、料理が綿密に準備されていて、この時だけの特別なペアリング体験となりました。

ガラ・ディナーの様子(Photo by Yasu Iijima)

なかでも、世界に先駆け、「クロ・ポンパドール」の最新ヴィンテージであるブラン・ド・ブラン2017が披露されたのは、嬉しいサプライズ。「クロ・ポンバドール」はわたしもメゾン訪問時に見学したことがありますが、ランスにあるメゾンの敷地内にある塀(クロ)に囲まれたユニークな立地の畑のブドウから造られます。丸みのある優しい果実や柔らかいテクスチャが特徴的で料理によく合いました。

ガラ・ディナーで供されたシャンパーニュのラインナップ(写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

優勝した鈴木氏は、前大会ではセミファイナリストで終わり、そのときの悔しさをバネに努力を積み重ね、栄冠を勝ち取った人。森審査員長が、「コンクールは常に風が吹いていて、それを追い風と感じる方は自分でも信じられないくらいのパフォーマンスができる」とのコメントの通り、風を感じ掴むことも勝利の要因であり、逆に言うとそれほど上位選手の実力は甲乙つけがたいものなのでしょう。

このポメリー・ソムリエコンクールは、日本のソムリエの育成や世界で活躍するソムリエたちへのサポート、さらにポメリーはもちろんのこと、シャンパーニュに対する興味や理解の一助を担っている意義のあるコンクールだと感じました。

優勝者は、賞金100万円とポメリーの6Lボトル、そしてランスにあるポメリーのメゾンとパリのレストラン、ルカ・カルトンでの研修の機会が授与されます。また、今後はアンバサダーとしての活動もあります。このような人生を変え得るソムリエコンクールの大舞台では、嬉し涙があり、そして悔し涙もあり、見ている者にも勇気や感動をくれるものです。優勝の鈴木氏をはじめ上位入賞した選手たちに心からの賛辞を送るとともに、今大会に出場し挑戦したすべての選手たちに拍手を送ります。

優勝の鈴木大輝氏 「シャンパーニュの魅力を、特に同世代や若い人たちに届けたい」と語る。(写真=ヴランケン ポメリー ジャパン提供)

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島 悠里

大学卒業後、外資系投資銀行勤務、米国ロースクール留学。その後、国際弁護士事務所勤務を経て、パリの国際機関で勤務(国際貿易・投資法が専門)。 ワインが日常にある、フランスやカリフォルニアに住んだことがきっかけでワインに魅了され、2018年にサンフランシスコでWSET Diplomaを取得。2019年のロンドンでの卒業式では、総合上位の成績でInternational Wine and Spirits(IWSC)賞を受賞。 ワインの分野では、国内外のメディアでのワイン記事執筆、ワインセミナーでの講師、ワインイベントのオーガナイザー、国際的なワイン品評会でジャッジを務めるなど幅広く活動。特にシャンパーニュに力を入れている。 米国ニューヨーク州弁護士 WSET® Level 4 Diploma WSET® Certified Educator&Level 3 Internal Assessor J.S.A. 認定ワインエキスパート IWSC ジャッジ(シャンパーニュ・スパークリングワイン部門)

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