↑Lansonの歴史を表す圧巻の垂直試飲(Photo by JB Delerue)
文/島 悠里 写真/Lanson提供(@JB Delerue)、島 悠里
My wine journey by Yuri Shima ~世界のワイン便り Vol.14
1760年設立の、ランスを拠点とするシャンパーニュ・ランソン(Champagne Lanson)の地下カーヴには、豊富なバックヴィンテージのシャンパーニュが大事に保管されています。一番古いものは、なんと1904年ヴィンテージ。以前そのカーヴに足を踏み入れたとき、その素晴らしいコレクションに目を奪われましたが、これらの珠玉のボトルは、ランソンと、そしてシャンパーニュの歴史を物語る宝物です。

フランソワ・ヴァン・アール(François Van Aal)社長と醸造責任者のエルヴェ・ダンタン(Hervé Dantan)氏
そのランソンが、新しく、「プライベート・コレクション」というカスタムメイドのプログラムを発表しました。これは、貴重なバックヴィンテージ(1976年以降)へのアクセスを可能にし、現行ヴィンテージはもちろん、今後リリースされる将来のヴィンテージのプリムール(先物買い)の機会を提供するもの。さらに、理想的な熟成環境であるランソンの地下カーヴ内に、300本まで収容可能な「自分専用」のスペースを持つことができ、そこで引き取りの日まで、醸造責任者のエルヴェ・ダンタン(Hervé Dantan)さんの監修のもと、ボトルを保管できるというサービスです。また、メゾンの専用ラウンジでの試飲、プライベートのテイスティングやカーヴ訪問など、様々な特典もあります。

この新しいプログラムのお披露目会が、フランソワ・ヴァン・アール(François Van Aal)社長とエルヴェさんの案内のもと開催され、フランス国内をはじめ世界各地からシャンパーニュのジャーナリストたちが集まりました。
まずは長い階段を降りて地下カーヴを訪問。貴重な古いヴィンテージが眠る一角は、しっかりと鍵がかかっていて、限られた人だけが開けられるのだとか。その鍵を握るエルヴェさんが中を披露。また、このプログラム用に作られたセラースペースも見学しました。

地下15メートルのランソンのセラー。左はプライベート・コレクション用のスペースにて。
地下カーヴの中で2002年のマグナムボトルが開かれ、乾杯してから、階段を上がり、メゾンのサロンでディナー。この日のために入念に選び抜かれたヴィンテージは、1996年、1985年、1971年、1964年、1952年、1942年、そして1921年と、100年にわたる垂直試飲でした。いずれもシャンパーニュの偉大かつ、象徴的なヴィンテージです。フランソワ社長とエルヴェさんが、当時流行した歌をBGMに、試飲するワイン各年の世界的な出来事に加えて、天候やワインの特徴についての解説もあり、理解もいっそう深まりました。お料理も、ワインに合わせて作られていて、これらの貴重なワインが、多角的に、かつ彩り豊かに変化する様を楽しむことができました。
その中で印象に残ったペアリングをいくつかご紹介します。
Vintage 1985 & スズキのセビーチェ、ゆずとクリーム
華やかで、キャンディのような甘やかな濃縮した果実と香ばしいブリオッシュ。パレットは横に広がり、粘性あるテクスチャで、少しオイリーな印象も。柔らかく調理されたスズキとクリームソースによく合いました。ピノ・ノワール 52%、シャルドネ48%。ブドウはヴェルズネイ、クラマン、アヴィーズから。ディスゴージメントは1995年。

Vintage 1985 & スズキのセビーチェ、ゆずとクリーム
Vintage 1952 & シャロレー牛ヒレ肉のステーキ
この1952年のランソンのヴィンテージ・シャンパーニュは、1961年にヴェルサイユ宮殿で行われたド・ゴール仏大統領とケネディ米大統領の食事会で供されたもの。その時のメニューを再現した特別なペアリングでした。1952年は雨がよく降り、収量が非常に少ない年(2,000kg/ha)。このワインは、エレガントで軽やかな口当たり、フレッシュで高い酸というワインの特徴で、その年の個性を反映していました。泡は優しく包み込むようで、ドライフルーツに加えて、チョークのような湿った石、白トリュフ、ヘーゼルナッツ・キャラメルのニュアンスも。ピノ・ノワール 54%、シャルドネ46%。ディスゴージメントは1962年。

Vintage 1952 & シャロレー牛ヒレ肉のステーキ
Vintage 1921 & 熟成コンテチーズと栗
1921年は、難しい天候で非常に低い収量となったものの、素晴らしいクオリティのヴィンテージになりました。杏や桃のドライフルーツ、黒トリュフ、ミートパイのようなセイヴァリーさ、濃厚な出汁を思わせる旨味のかたまり。100年以上の時を経たワインを味わうことは、感情に訴えかけてくるような特別な体験で、静かで厳かな空気が流れました。ピノ・ノワール 55%、シャルドネ45%。ブドウはヴェルズネイ、ヴ―ジィ、アヴィーズ、クラマン、オジェから。ドサージュは22g/L。1931年にディスゴージメント。

エルヴェさんはこう言います。「ランソンのヴィンテージ・シャンパーニュは、特級と一級格付けのブドウから選ばれて造られます。また、ランソンの特徴として、マロラクティック発酵をおこなわないので、フレッシュさが保たれ長期熟成が期待されます。こうして、偉大な年にだけ造られるヴィンテージ・シャンパーニュはランソンの芸術の証であり、次世代へ受け渡す遺産なのです。」
まさに、この体験は、ランソンのヴィンテージ・シャンパーニュが、長期にわたり素晴らしい熟成をすることを示すものでした。すでに世界のコレクターから問い合わせがあり、自分自身だけではなく、子どもたちのためにコレクションを始める人もいるのだとか。ワインは人を繋ぐ飲み物だとよく言いますが、こうして時を超えて共有できるのも魅力ですね。
Lanson Private Collectionについて詳しくはこちら。
https://lanson.com/en/pages/collection
お問い合せ:LPC@champagnelanson.com