文/山本ジョー 写真/小松 勇二
新しい年のスタートにふさわしい諺が、「一年の計は元旦にあり」。何事も早めに計画をたてておくことで、よりスムーズに進むとの意味だ。ワインラバーの皆さんは、この一年どんなワインライフを送りたい? 年の初めに、今年こそ飲みたいワインや知りたいワインを絞っておくのも悪くない。そして今年もワインライフが充実するよう、願掛けに一流ワイン「オルネッライア」で乾杯を。なぜなら、オルネッライアは誰もが「飲みたい」「知りたい」と願うワイン像の集大成と言うべき存在だから。

銀座のイタリア料理店「ファロ」にてお目見えした、歴代のオルネライア。最新ヴィンテージの2022年は華美さで勝負せず、豊かな表情と非常に長い余韻を特色とする。「今は若き性格俳優が、20年後には引く手あまたの渋い主役として大成」といった風情だ。
ボルゲリの特殊性を最大限に引き出すワイン
歴史ある名門ワイナリーの安定性、進取の精神、ユニークなテロワール、センスのいい醸造、とワインラバーをワクワクさせる要素がギッシリ詰まっているオルネッライア。晴れの席にうってつけな、ご存じイタリア・ボルゲリの最高峰ワインである。
イタリアの各地でワイン文化を育んできたフレスコバルディ家は、ティレニア海沿岸のボルゲリにボルドー系品種の可能性をいち早く見いだし、特異な気候風土を全世界に知らしめた功績を持つ。なにしろトスカーナ州に位置しながら「トスカーナらしからぬ」と評されるのがボルゲリだ。丘陵に囲まれた斜面は、常に風が吹き抜ける状態。トスカーナの他エリアと比べ夏は5℃ほど低めなので猛暑は避けられ、かといって冬はけして極寒とならず、標高300m以上の高さゆえ昼と夜の温度差は大きい。小石交じりの石灰質に粘土が程よく加わった土壌も味方となり、ブドウは糖度、香り、タンニンのハーモニーを保つ。それをさらにパーフェクトなワインへと昇華させる、醸造チームの辣腕たるや!

オルネッライアの生産管理マネージャーを務めるマルコ・バルシメッリさん。長期熟成向きのオルネッライアだけに、年始などの節目で飲むとすれば「エレガントな2006年」を希望、とか。
経験+チームワーク+歴史+喜びがひとつに
現在オルネッライアのワイン造りを統括しているのは、ボルドーでの醸造経験も豊富なイタリア人のマルコ・バルシメッリさんだ。
「オルネッライアのワイン造りは、ボルドーと方向性が同じなんです。だから、ボルドーから自国へ戻り、オルネッライアを含む巨大な醸造チームに仲間入りしてから、すぐに全体の構成を理解できました」。
2025年冬の来日時にそう語った彼は、超高級ワインを手掛けるプレッシャーやエゴとは無縁で、畑やセラーでの細かな作業にプライドと喜びを抱く職人の表情に満ちている。
「ただしボルドーと方向性が同じとはいえ、ボルドースタイルを目指しているわけではない。あくまで、同じボルドー系品種の『ボルゲリスタイル』を追求しています」。
畑にいる人から事務仕事をしている人まで全員が同じ哲学を共有する、バツグンのチームワーク。新しいルールをすんなり受け入れる柔軟性もある環境で、バルシメッリさんは伝統と革新の両立に勤しんできた。

「遠い未来が来るまで待てないので、ワインを長くとっておくのは苦手」と笑う、ランベルト・フレスコバルディ侯爵。年末は御年97歳を迎える父上の誕生日やクリスマスとイベントが続き、マグナムやダブルマグナムを豪快に開けるのが習わしとか。「だって親族一同が集うと、総勢200人(!)になるからね」。
「自由度の高い偉大なワイン」というオルネッライアのポリシーを形づくったのは、オーナーのフレスコバルディ家だ。オルネッライアのワイナリー設立以前、19世紀半ばより地場品種に囚われないトスカーナワインを造り続け、さらに遡れば1000年は下らないトスカーナの名門貴族である。オルネッライアにCEOとして参画するランベルト・フレスコバルディ侯爵は、フレスコバルディ家の30代目当主。ルネサンス期にはミケランジェロら芸術家のパトロンとなっていた先祖の血をひき、ユニークであることの意義を誰よりも深く理解している。伝統と革新の両立について、「過去と恋に落ちると、終焉が訪れる」と表現するロマンティストでもある。
「ワイン造りが、本当に好きなんです。基本は田舎暮らしですからね、美しいブドウ畑があって、オリーブが茂って、牛や犬や猫がいて、バイクも乗り放題。喜びがあるから、仕事は続けられるものです」。
2023年にはアメリカのオレゴンへ進出しピノ・ノワールに挑戦するほど、冒険心はフルスロットル。
「私が70歳で引退するとして、残された収穫の回数(7~8回)を加えると全部で40回。いくつものエステイトを抱えてはいるけれど、限りある人生、ワイン造りはどの年も失敗できません」。

お二人の来日にあたり、銀座「ファロ」にて日本の食材を用いたイタリア料理とオルネッライアのペアリングが実現。愛知産の恵鴨のローストはシットリとした肉質で、フレッシュ感を強く残すオルネッライア2022が涼やかに染み渡る感覚が楽しめた。オルネッライアはどの年も樽香が控えめな分、和の食材や上品な味付けとの相性は文句ナシ。
オルネッライア的、飲み頃についての一家言
前述通り、オルネッライアは数十年の熟成でより完成度が高まるワインである。昨今は「早くも飲めるし、寝かせてもOK」の高級ワインが増えてきたが、オルネッライアはどうだろうか?
「『正しい飲み頃のタイミングで開けるべき』、は正論。しかし、そもそも長年寝かせたワインが好きなのか? 長年寝かせる環境が整えられるのか? まだ財力のない若年層は、高値になりがちな長期熟成ワインに手が出ないでしょうし、フルーツ感が際立つ若いワインが好きな人も当然いますよね」(フレスコバルディ侯爵)。
ワインを長期熟成させることができ、かつそれを好む人は、ワイン消費者全体の5%ほどと侯爵は考えている。
とくに日本では土地代が高騰し、十分なセラーを抱えられないレストランやワインショップが多い。いくつものヴィンテージをキープするのが難しいのなら、いつ飲んでもウェルカムなワインに仕上げることもまたワイナリー側の使命では―――それがオルネッライアの見解であった。
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国宝級のイタリアワインとして名を馳せるオルネッライアを運よく入手し、年の初めをスタートできた人は、ぜひ5年後、10年後もまたオルネッライアに立ち戻り、自分の求めてきたワイン像の変遷を振り返ってみてほしい。ちょっぴりゴージャスではあるけれど、オルネッライアはワインのベンチマークとして最高過ぎるほど最高の逸品である。

一番左のオルネッライアは……まさかの白? ソービニヨン・ブラン100%のオルネッライア・ビアンコ2022年は、わずか10ケースのみ日本へ輸入。出会えた人は相当ラッキーだ。
