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WINE

「白も!ロゼも!泡も!」あなたがまだ知らないガルナッチャ/グルナッシュ

取材・文・写真/山本ジョー

「私が好きなワインの品種はガルナッチャ」、「今度の家飲み、私はグルナッシュ持ってくね」。こう言われて、パッとイメージするのはどんなワイン? 「カジュアル寄りの赤ワイン」が一定数上がりそうだけれど、実際は白ワイン、はたまたそれ以外のワインである可能性大なのだ。意外と知られていないバリエ豊富なガルナッチャ/グルナッシュ、宴会の多い年末年始にも大活躍の予感!

右より:赤い果実の風味と酸のまとまりが上品な
スペイン赤「コロナ・デ・アラゴン/ビニャス・ビエハス ガルナッチャ2022」(飯田)、
8代続く名家が手掛ける濃密なフランス赤「ドメーヌ・シングラ/パス・トン 2022」(トゥーレール・ジャポン)。

歴史ある産地で古樹を守るスペイン&フランス
気候変動に翻弄される世界中のワインメーカーが今あらためて熱い視線を送るガルナッチャ/グルナッシュ<GN>。スペインとフランスで古くから栽培されてきたこの品種は、スペインの呼び名がガルナッチャ、フランスの呼び名がグルナッシュとなり、同じブドウを指している。

GNの底力が再評価され始めた理由は、地元に根付いた品種を大切にする風潮、テロワールを素直に映し出す品種特性、GNが持つ干ばつへの耐性などなど多岐に渡る。GNの栽培面積は、すべての品種のなかで7番目に広く、その約9割がヨーロッパ。とくに年月を経た古樹はスペインとフランスに集中。味わいの凝縮する古樹の充実は、さすが紀元前から脈々と受け継がれた地ならではの強みなのだ。

ワイン超初心者は知らなくとも、普段からワインを飲む人ならまず知らないはずはないGN。さらにワインの知識を蓄えている人なら、GNのワインが赤だけで終わらないことも当然知っている、はず(……ですよね?)。

なら、本場スペインやフランスではどうだろう? GNはどのような立ち位置のワインで、どう楽しまれているのか? 25年11月に来日を果たしたお二方にGN事情を尋ねてみた。

GNの白やロゼ、飲んだことある?
品種という共通項から手を組み、国境を超えて合同プロモーションを行うのが、スペインのガルナッチャ・オリヘン協会とフランスのルーシヨンワイン委員会だ。国は違えど、地図を見れば両者は地続き。とくに南フランスのルーションはスペインと隣接するエリアで、建築や文化もスペイン系のニュアンスが見てとれるほど。GN栽培地としてはどちらも長い歴史を持ち、お互いの強みや持ち味を認めあって約10年、「欧州産ガルナッチャ/グルナッシュ クオリティワインプログラム」としての活動を続けている。

左:カロリナ・ド・フネスさん(ガルナッチャ・オリヘン協会 マネージャー)
右:エリック・アラシル さん( ルーシヨンワイン委員会 ディレクター代理 兼 エクスポートマネージャー)

ガルナッチャ・オリヘン協会のカロリナ・ド・フネスさんは、スペインでのGN人気をこう語る。
「GNと聞けば、伝統的には赤ワインが主流でしょう。でも若い世代がとくに好むGNは、フレッシュな赤、そしてもっとフレッシュな白やロゼ、スパークリングです。温暖な日の多いスペインなので、アルコールが高すぎず気楽に飲めるタイプも好まれますね」

その傾向はアジアにも伝搬しており、35歳以下の若年層がGNを支持、消費量が過去1年間で大きく増加しているのだ。また、他品種とブレンドされることも多いGN、

ルーシヨンワイン委員会のエリック・アラシルさんによれば、低アルコール向きのクローンを選び取る技術までも進化してきたそうな。
「GNとひとことで言ってもノワールをはじめ主に4種類あるわけですが、それらを使い分けるだけでなく、さらに細やかなクローン選抜はずっと行ってきました。けれども、消費者へ新しいアプローチをするため、また現在と未来の気候へ順応させるため、干ばつに強いもの、低いアルコールに仕上がりやすいもの、などといったクローンを選び取っています」

とくに20年以上ワインを愛飲してきた人は、情報のアップデートが必要になるかもしれない。古い畑に植わっている昔ながらのGNは、往々にして収穫量が多く、アルコールの強いワインができやすい特質を持っていた。とはいえ前述通り、そもそも栽培地由来の個性を強く出す品種であり、多彩なキャラクターのワインが造られている。そこに加え、クローンのバリエーションで近年は個性の広がりが爆増しているということだ。

「GNのワイン? フルボディの赤はもちろん美味だけど、じつはブルゴーニュ好きにも刺さる軽やかな赤、ビギナーに易しい低アルコールの白、華やかなシーンに欠かせないロゼなど、ボトルごとに顔ぶれが変わるんだよね~」なんて、サラッと語れるようになれば大正解!

「ワイン好きな日本の皆さんがもっとGNのことを知ってワインを飲んでくれたら、生産者たちも、もっと理想に近いワイン造りができるはず。そのために私たちがGNの知名度を上げ、いい循環が生まれるようサポートしたい」(カロリーナさん)

「フランスだけで20種のGN亜種が発見され、ローヌの保存施設には360種以上のクローンが保存されているんですよ。世界的に知られた赤ワインは言わずもがな、クラシックな辛口白も推したいところです」(エリックさん)

ジャン マルク ラファージュ /
キュヴェ サントネール 2019

AOC コート デュ ルーション

希望小売価格2,200円 /輸入元:アズマコーポレーション
グルナッシュ・ブラン70% ルーサンヌ30% 「100歳(サントネール)」の名の通り、樹齢100年のグルナッシュ・ブランを主軸に置いた辛口白。トロピカルフルーツや柑橘のニュアンスを持ち、ほのかな樽香とバランスがとれている。

グランデス ビノス イ ビニェードス/モナステリオ デ ラス ビーニャス ガルナッチャ ロゼ 2023

1600円(税別)/輸入元:飯田
アラゴン州 カリニェナ DOPカリニェナ
ガルナッチャ100%
修道院の名を冠した「モナステリオ デ ラス ビーニャス」シリーズは、どれも地場品種に注力。ロゼはバラやイチゴの香りが親しみやすく、爽快感溢れる味わいで口中はサッパリ。

食前酒から食後種まで網羅、ペアリングも自由自在
スペインのスパークリングであるカバ・ロゼ、ルーションを代表する甘口ワインのヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN)にもGNは使用されている。となると、食前の乾杯から始まり、食中酒、食後種までオールGNしばりのワイン会も夢ではない!
そんなGNワイン、もしも年末年始の料理と合わせるなら? 日本で再現できそうな料理をピックアップしてもらうと……
「カバ・ロゼにはスモークサーモンとクリームチーズのカナッペ、マンチェゴチーズとジャムのタルトレットなど。白には、アンコウをグリルしてロブスターのクリームソースを添えて。赤なら仔羊ローストにフライドポテト」
とスペインらしいペアリングを提案してくれるカロリーナさん。加えて、スイーツとのペアリングも伝授。
「クリスマスのブッシュ・ド・ノエルにも、赤ワインが合うんです。ガルナッチャの代表的産地、DOカンポ・デ・ボルハの赤ワインなどと一緒に楽しんでみてください」。


フランスのエリックさんも負けてはいない。
「リヴザルトというルーションの甘口ワインがあるのですが、こちらなら砂糖漬けにしたフルーツにピッタリ。クリスマスのメイン料理には、洋梨を添えたガチョウのローストがオススメです。飲み応えのあるGN白でやや熟成させたタイプ、続けてブラッドオレンジ風味の赤ワインへと飲み進めていきたいですね」。

たとえどんなに飲みやすくとも、飲んだ後に骨太な存在感を残すタイプのGNと出会えたら、それはスペインにもフランスにも古樹が充実している証かもしれない。エリアにより古樹の概念は異なるものの、樹齢30~40年はザラ。果ては100年物の樹であっても、まだまだ凝縮感ある実をつける。

しかし歳をとるほど繊細になっていく古樹は、剪定に細心の注意を払わなければならない。収量が少ない古樹から最大限かつ最高品質のブドウを収穫できるのは、生産者の苦労の賜物。結果として毎年、GN原産地ならではのプライドを引っ提げたワインが、世界中へ運ばれていく。

高い品質であることが知れ渡っているのに、他品種のように値が高騰せず、地に足のついた価格を保っているのも好印象なGN。いつもの定番ワインとして、ハレの日の華やかワインとして、シーン別にフル活用していこう!

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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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