文/山田 靖
ワイン会に通っていると、ときどき“相性”に悩まされることがある。ひとつのブランドを軸にした会では、もしその造り手と自分の好みが合わなかった場合、会のトーンごと距離が生まれてしまう。それもまた経験なのだけれど、正直に言えば、もっと自由でバランスのよいセレクトに出会いたい——。
そんな“わがまま”に、見事に応えてくれたのが、日本リカーのワインECサイト「ユアセラー」が主催した「極上ジビエコースとワインを楽しむスペシャルディナー」だ。
今回は定員7名という贅沢な少人数制。舞台となったのは、表参道「LATURE」。2016年の翌年から9年連続でミシュラン一つ星を守り続ける、いま最も信頼できるジビエフレンチの一軒だ。

画像右から「シャンパーニュ シャルル・エドシック/ブリュット レゼルヴ マグナム」「ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト/ピノ・グリ ローテンベルグ 2021」「ル・クロ・デュ・カイユ/シャトーヌフ・デュ・パプ ルージュ レ・サフル 2021」「ルイ・ジャド/ラ・ロッシュ・デ・ドゥモワゼル 2018」「ビオンディ・サンティ/ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2018」「シャトー・スーシュリー/コトー・デュ・レイヨン プルミエ・クリュ ショーム 2018」と、日本リカーの代表格のファインワイン
まず特筆すべきは、ユアセラーならではの“ブランド横断”のワインセレクション。
シャルル・エドシックのマグナムで幕を開け、アルザスのツィント・フンブレヒト、シャトーヌフ・デュ・パプのレ・サフル、ブルゴーニュのラ・ロッシュ・デ・ドゥモワゼル、ビオンディ・サンティ、そしてロワールの甘口ショームまで。
どれか一つが主役ではなく、料理と場の流れに寄り添いながら、六者六様の“適材適所”で登場する——まるで一本一本がコースの登場人物のようだった。




料理は、鹿ブラッドマカロンから始まるLATUREらしい鮮烈な構成。シマアジのマリネにはツィント・フンブレヒトのピノ・グリの奥行きが寄り添い、ジビエパテアンクルートにはレ・サフルのスパイスと温度感が美しく響く。太刀魚と牡蠣のパイ包みには、ジャドのドゥモワゼルが見事なまでの立体感を与え、蝦夷鹿のローストにはビオンディ・サンティの2018が“気品のある野性味”という表現そのものを体現していた。

胡瓜のマリネ


コンソメゼリーとフォアグラ

そして全体を軽やかに導いたのが、日本リカー事業部 部長・山口大輔さん。名だたるブランドの背景を、学問的になりすぎず、かといって軽くもならず、絶妙な温度で語る。7名だからこそ生まれる双方向の空気が心地よく、会はまるで“上質なホームパーティ”のようだった。
「ワインの好み」も「ブランドの相性」も超えていく。
その夜にあったのは、ただひたすらに“正しいペアリング”と“美しい流れ”。
少人数ゆえの濃度の高さと、ジャンルを横断したワイン選びの妙によって、ワイン会の新しい楽しみ方を教えてくれる一夜となった。
