文/mami
スペインワイン好きであれば、プリオラートと聞けば、どの様なワインか想像ができると思う。しかし、マス・ダン・ジルは、その様なくくりだけで語れるワインではない!


ハードコアリケジョのマルタさん
オーナーファミリーの一人、栽培と醸造担当のマルタ・ロヴィラさんは、実は、航空機のエンジニアであった。ドイツで、飛行機のエンジンをデザインし、作る仕事をしていた。開発したエアバスA380は、エンジンとしては最大で、600人の乗客を載せることができる。マルタさんは、海外出張でA380に載ると、今でもS N Sに投稿するほど、嬉しい!と言う。

栽培・醸造担当のマルタ・ロヴィラさん
250人中女性は10人ほどという職場環境で、午前中はドイツ語で、午後はアメリカともやりとりをし、ドイツ語と英語を使用。
理系脳と文系脳の両方を併せ持つマルタさん、どのようにワインを造っているのだろうか!?
私のBFは、酵母!
お母様は、画廊経営、お父様はワイン生産者という環境で育ったマルタさん。そんな彼女が、航空機エンジニアの次に選んだ職業は、ワイン造り。エンジニア畑の方らしく、2008年にビオディナミに転換してからの10年間は、畑にいる酵母の観察と研究にも余念がなかった。
昼間は酵母をキッチンに置いて顕微鏡で観察し、プリオラートは、元々、夏でも夜になると22℃になることが多いため、夜はイーストと一緒に寝ているという感じであったらしい。「元々エンジニアだから、チェックにして先に進みたいの」流石は、マルタさん! 酵母にニックネームもつけていたというのは、お茶目な彼女らしい。
ビオディナミは科学よ!
そんなマルタさん、ビオディナミについての一声は、「ビオディナミは、科学!」データを取りながら、試飲を繰り返してきた彼女は言う。「ビオディナミに転向して、畑では、酵母が増え、その品質が上がりました。カバークロップにし、花粉が増えると、酵母の数も増えるんですよ。結果として、ワインに個性と複雑味が出ます」
土壌の修復
普通の栽培の状態の土壌を回復させるには、時間がかかる。表土を変えるという事は、人の皮膚の表皮を変えるのと似た様な事だと、マルタさんは言う。表土が剥がれた様になると、2層目が生き返って新しい土壌になる。土壌も含む様々な改革がとても心配で、上記の様な酵母とのラブライフが始まったらしい。
アルコール度も、酸度も変わる!!
ビオディナミに変換してからの変化には、アルコール度も酸度も含まれる。アルコール度は、なんと1.5度下り、酸もより向上した。15年ほど前と比較し、とりわけここ数年、マス・ダン・ジルを試飲していて、フレッシュさが心地よく、より引きしまった感じがしたが、なるほどと納得。
酸が多くなったというのは、青い酸ということではなく、フレッシュな酸という事だと、彼女は、付け加えるのを忘れなかった。
マス・ダン・ジルのワイン

全て100%オーガニック、ビオディナミ農法を実践。
COMA ALTA(コマ・アルタ)
ニックネームは、「恐るべき子供」若い樹齢の時から、非常にキャラクター、テンションが強く、口にするとバイブレーションを感じさせる、そんなワイン。赤ちゃんの時から個性が強かったことから、このあだ名がついた。畑は、2008年からビオディナミに転換。品種は、グルナッシュ・ブランで、キャラクターに富む。
地中海を連想させる白で、ピーチ、アプリコットなどのフルーツが、塩気のあるミネラル感と融和している。ボディもしっかりとしており、ヴィンテージによっては鹿肉と合わせることもできる。
COMA BLANCA(コマ・ブランカ)
ニックネームは、「グラン・ダム」
マス・ダン・ジルエステートのおばあちゃん的存在。プリオラート地方で最も古い樹齢(1940年に植樹)の白ブドウの木から取れた、ブドウで造られる。グルナッシュブランとマカベオのブレンド。
レモン、ハーブ、スパイスなどの香りを持ち、豊かな風味は、「風味の爆弾」と表現する人もいる程。ミネラル感とクリーミーなテクスチャーも魅力。
COMA VELLA(コマ・ヴェラ)
ニックネームは、「お父さん」
森の下草、フルーツ、ミネラル感などの含みを持ち、プリオラートの南を感じることができるワイン。春に、地中海沿岸の林を散歩する時に感じるセンセーションがボトルに詰まっている。
力強くフレッシュで、バランスがとれ、絹のような舌触りもある。グレナッシュ、カリニャン、シラーのブレンド。
CLOS FONTÀ(クロ・フォンタ)
ニックネームは、「おじいちゃん」
マス・ダン・ジルの、ユニークなランドスケープから生まれるテロワールを忠実に表現している。リコレリャ(スレート) 土壌に、1931年から1970年に植えられた、グルナッシュとカリニャンのブレンド。
風味は複雑で、黒い色のフルーツ、ミネラル感を含む。観察、時の経過、意思、瞑想、物語が詰まったブドウの実で造られたワイン。

マス・ダン・ジル ファミリー 画像・左 マルタさんのお姉様ピラーさん(マーケティングを担当) 画像・中央 マルタさんのお父様ロヴィラ氏(マス・ダン・ジル創始者) 画像・右 マルタさん
これからも、益々の進化が楽しみなマス・ダン・ジル。常に目が離せないワイナリーです!
ワイン以外にもこのようなオススメも! ワイナリーから生まれたオリーブオイル
Mas d`en Gil Oli (オリーブオイル) ニックネームは、「オリーブの香水」

1892年に植えられたオリーブの木から収穫された実で作る。マルタさんの祖母から受け継いだ手法に則り、月の満ち欠けに従って数回の澱引きをし、フィルターは一切かけない。
ピュアな香りと、アルベッキーナ品種の優しい風味が特徴。ワインを飲む時に、一緒に摂取するオリーブオイルとして、最高!理由は、青さが非常に繊細で、風味は豊かだが優しく、ワインの邪魔をしないから。加熱せず、食材と混ぜたり、そのままソースの様に使用するのがベスト。
マス・ダン・ジル オリーブオイルのオススメ簡単レシピ
糠漬けを切ってお皿に盛り付けたら、上からかけるだけ。途端に、糠漬けとワイン(泡や白ワイン)との相性が素晴らしく良くなる。
トマトのクミンマリネ

材料
クミンパウダー:小さじ1位
塩:小さじ半分(入れなくても美味しい)
白ワインビネガーまたは、お酢:大さじ1/2
マスダンジル のオリーブオイル:大さじ2
ニンニク(すり下ろしたもの):小さじ1/4
材料を混ぜ合わせ、半分に切ったプチトマト(1パック)を混ぜ合わせるだけ。豊かな風味の白ワインと。黄色、紫、オレンジ色などのカラーがミックスされたプチトマトを使うと映えるので、おもてなしにも!
冷蔵庫で数日持つため、トマトに味が染み込んでいく過程を味わうのも楽しい。万一余ったら、火を入れて、ソースにし、鶏肉や豚肉のソテーにかけても美味。
輸入・代理店
ピーロート・ジャパン
https://www.pieroth.jp/