文/紫貴 あき
紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 27 the glass of wine
オバマ元大統領は大のワイン好きで自宅に1000本以上のワインを保管、バイデン前大統領はグラスに触れないことで知られる禁酒主義者。
アメリカの大統領ともなると、もはや「政策より先にワインの好みが気になる」という声すらワイン業界ではあるほど。実は、大統領が公式の場に現れるたび、選ばれるワインには小さくても確かな「メッセージ」が込められています。だからこそ、大統領のワイン選びはいつもニュースになるほどの注目の的なのです。
握手より注目されたのは…
今回、トランプ大統領が来日して、こっそり注目を集めたのはスピーチでも、高市首相との握手でもなく、カリフォルニアのワインでした。なかでも、晩餐会の乾杯に選ばれたのが「Schramsberg North Coast Blanc de Noirs(シュラムスバーグ・ノース・コースト ブラン・ド・ノワール)2021」。
興味深いのは、トランプ大統領自身はお酒を飲まないことで有名なのに、それでもワインが用意されており、なおかつ最初の一杯がフランスのシャンパンではなかったということです。これはなかなか意味深メッセージ…。
Schramsbergは、これまで歴代アメリカ大統領の晩餐会にも何度も登場してきた「アメリカらしさ」を映し出すワイン。「アメリカを象徴するワインを用意しましたよ」「今日はアメリカでいきますよ」という、静かだけれど、確かなメッセージに見えてきます。
シュラムスバーグ・ブラン・ド・ノワールの魅力
Schramsberg(シュラムスバーグ)は、ナパで1862年に誕生した老舗ワイナリー。カリフォルニア・スパークリングの先駆けとして人気があります。この日選ばれた「Blanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール)」は、ピノ・ノワールなどの黒ブドウからつくる白いスパークリングです。 黒ブドウ由来のスパイス感がふわりとありながら、口当たりは驚くほど繊細。いわば「落ち着いて見えて、近づくと実は芯の強さがにじむタイプ」のような、頼もしさと軽やかさをあわせ持つ一本です。特別な席にすっと馴染んでくれる、そんな1本です。

パンテッレリア島
グラス越しの友好
外交の場で出されるワインは、ただの飲み物ではありません。どんな国のワインを選ぶのか、どんな背景を持つつくり手なのか…その一つひとつがメッセージになっています。
今回のSchramsbergは、カリフォルニアの明るさと爽やかさ、そして力強さ伝えるような一杯。きっと高市首相との話題も弾んだことでしょう。長く続く日米のパートナーシップに、ぐっと距離が縮まるような一杯となったに違いありません。
ワインの裏側にあるドラマ
トランプ大統領が実際に飲んだかどうかはさておき、晩餐会で選ばれたワインから、国同士の関係や文化まで見えてくるって、少しワクワクしませんか? 次にワインを手にするときは、「この一杯には、どんな裏話が隠れてるんだろう?」
と、ほんの少しだけ想像してみてください。きっと、いつものグラスが少しドラマチックに、そして、さらにおいしく感じられるはずです。
Schramsberg North Coast Blanc de Noirs 2021
(シュラムスバーグ・ノース・コースト ブラン・ド・ノワール 2021)

生産者:シュラムスバーグ
生産国:地域/アメリカ:カリフォルニア、ノース・コースト
品種:ピノ・ノワール
参考価格:7,370円(税込)
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