文/紫貴 あき
紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 31 the glass of wine
令和の「爆美女」たちがこぞって美肌やコスメをSNSで発信するずっと前、数千年前の美女クレオパトラは何を嗜んでいたのでしょう。真珠を酢に溶かして飲んだという、「癖つよ」な逸話もある彼女ですが、実は心から愛したワインが存在するとか。
クレオパトラを落したい!
クレオパトラの心を射止めようと火花を散らした二人の英雄、ユリウス・カエサルとマルクス・アントニウス。二人が「これさえあれば落とせる」と信じて、渾身の贈り物に選んだのが、現在のイタリア・ピエモンテ州アクイ周辺で造られていたワイン、現代の「ブラケット」の祖先だと言われています。
この「ブラケット」という品種名、一説には「飲めば歌いたくなる」という意味に由来するとか。それも納得……グラスに注いだ瞬間に立ち上がるのは、もぎたてのイチゴを頬張ったような甘い果実味と、満開のバラのブーケに顔を埋めたような妖艶な香り。そのあまりに官能的で華やかなキャラクターから、古くから「愛の媚薬」として語り継がれてきたのです。
科学が明かすブラケットのルーツ
「でも、それってただの宣伝文句でしょ」そんな風に思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、2000年前の文献には「ブラケット」という品種名はどこにも記されていません。歴史的な確証という意味では、このエピソードは「ロマンチックな伝説」と捉えた方が良さそうです。
しかし、近年のワイン科学(DNA解析)が、この伝説に面白い光を当ててくれました。
解析の結果、ブラケットは世界最古のブドウ品種の一つである「モスカート(マスカット)」と極めて近い親戚関係にあることがわかったのです。古代ローマ人が「アピアナ(蜂が好むほど甘く香るブドウ)」と呼んで珍重したマスカットの血統。その香り高い遺伝子を色濃く受け継いでいるのがブラケットなのです。
つまり、クレオパトラが飲んでいたものと全く同じ名前ではなくとも、彼女が愛した「高貴な香りの系譜」にあるブドウが、現代のブラケットへと繋がっている可能性は非常に高いと言えます。そう思うと、なんだか急にワクワクしませんか。
親しみやすさがウリ
ブラケット・ダックイの良さは、なんといってもその親しみやすさにあります。アルコール度数は5%〜7%前後と低めで、優しい天然の甘みとシュワシュワとした微発泡が心地よく、ワイン初心者の方にも自信を持っておすすめできる一本です。
おすすめの楽しみ方は、フルーツたっぷりのタルトや、ビターなチョコレートとのペアリング。デザートワインとして楽しむのはもちろん、ほどよい塩味を含むチーズを削ったパスタやリゾットとも相性は抜群です。甘みと塩味がお互いを高め合い心地よいペアリングを生みます。
女王気分でワインを楽しむ
「この香りは、もしかしたらクレオパトラも香っていたのかもしれない」、そんな想像を膨らませながらグラスを傾ければ、ワインがもっと特別なものに感じられるはずです。今夜は女王の気分でワインを楽しんでみませんか。

生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州
品種:ブランケット100%
参考価格:7,290円(税込)
詳細サイト(外部サイト)
https://store.vinohayashi.com/shop/search?q%5Bmaker_id_eq%5D=140
イチゴ、ザクロ、オレンジピールにバラ、スミレ、ゼラニウムなどのアロマ。口に含むと
ふわりと綿菓子をかじっているような柔らかい泡立ちで、甘酸っぱさが心地よい印象のワイン。
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