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WINE

ラベルを外したら、ワインの序列は変わるのか。ワインエキスパート4人が挑んだブラインドテイスティング

プロと愛好家、その評価は重なるのか。

取材・文/山本ジョー

今回のテーマもずばり「南アフリカワイン」の現在地

南アフリカワインの力量を知るべく開催された「ラベルを外したら、ワインの序列は変わるのか。若手ソムリエ4人が挑んだブラインドテイスティング」では、他国の著名ワインを抑え南アフリカ産が最高得点を叩き出した。若手ソムリエ4名による公平なジャッジだから当然、結果には圧倒的な説得力がある。
とはいえ、ソムリエのようなプロの評価と、ワイン好きな一般人の評価はどれほど一致するのだろう? もとより南アフリカワインの実力を疑うわけではない。しかし正直、「ワイン業界のプロが唸るワイン」=「一般人にウケるワイン」と予測するに足り得る裏付けが、ぼつぼつ欲しくなってきた。ならばこちらも検証だ!
ワインへの激しい情熱、鋭敏な舌、そして常に本音コメント全開な一般人を召喚。あらためて揃え直した同銘柄のワイン11本を抜栓し、ブラインドテイスティング開催した。ソムリエによる総合評価とは真逆のランキングとなる可能性だって大いにありえる。

集まったのは、本業がワインと無関係の一般人4名だ。ワインの難関資格を取得し、ワイン勉強会やセミナーがあれば足しげく通い、そして隙あらば周囲の人々に「素晴らしいワインの世界」を布教しまくるワイン・エヴァンジェリストたち。舌の鍛錬も日々欠かさない努力家ばかりだから、ブラインド・テイスティング能力については名だたるソムリエたちと肩を並べても遜色ない。

中野智広さん
大学生時代からワインに目覚め、資格取得はワインエキスパートエクセレンス他。卒業後は勤務先で新人ながら社内ワイン会を堂々主宰し、休暇は国内外へのワイン旅行に費やす、若きワイン愛好家の鏡。


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稲生穂高さん
ワインとの出会いは、フランス料理店でのアルバイト。現在は某有名大学で職員として学生たちを陰ながら支える“アンサング・**ヒーロー”として奮闘する傍ら、プライベートではワインをゴリゴリに深掘り。得意とする産地の守備範囲は広い。


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阿久津尚子さん
民放各局に登場するフリーアナウンサー。ワインと日本酒を追究し複数の認定資格を取得する一方、製菓衛生師として和菓子作りも得意とする。
インスタグラムでは季節とお酒をテーマに、二十四節気に合わせたワインと手作りの和菓子のオリジナルペアリングを楽しむ発信もしている。
ユーザーIDはwine_life_naofuku

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宮本英明さん
世を忍ぶ仮の姿は金融マン。JSA全日本ワインエキスパートコンクール第8回優勝ほか数々のコンテストで不動の地位を築く。お茶目で明るい語り口も相まって「ホントに金融関係の方?」と疑惑は尽きず。

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試飲能力はソムリエをはじめとするワインのプロ同等。となると、プロとアマチュアの違いはどこにあるのか? 
ソムリエが自分の立場を意識しながらワインを試飲すると、「もしもこのワインを自分の店のお客様へサーブするとしたら」の仮設定が脳裏をよぎる。いっぽう、ワイン愛好家は、ソムリエの想定する“店のお客様”になりえる強みがある。そして、「もしもこのワインを自分が買うなら」「友達と一緒に楽しむなら」との目線に重きが置かれる。
「ワイン愛好家の評価は客観性に欠けるのでは?」と危惧するなかれ。消費者ニーズを読み取るには、高い主観性の集合こそがリアル。自らの財布を進んで軽くし、重いワインを喜んで入手してきた一般人の声にもまた、当事者として揺るぎない説得力がある。

とまあ、あれこれ御託を並べてみたが、さまざまなしがらみと忖度はゼロな面々。「美味なのは当然。でも、面白味のないワインだよな~」と感じた瞬間、とてつもなく低いポイントを容赦なく乱発する。点差の激しい評価シートを前にその結果はまさに未知の領域へ。

Flight1:白ワインの部はブルゴーニュ産と南アフリカ産が同点

左から:ペンフォールズビン 311 シャルドネ2018ルイ・ジャド/ブルゴーニュ シャルドネ2023ケイ・ダブリュー・ヴィ/カセドラルセラー シャルドネ2024ブレッド&バター/シャルドネ2024


ワインの評価ポイントは前回のソムリエテイスティングによるものと同じ、以下の通りだ。

その1:ワインとしてのポテンシャルが高くとも、もし飲み頃のピークまで何年も待たなをければならないタイプなら、あえてポイントは下げる。
その2:すべてのブラインド試飲を済ませ、予想価格を含むコメントを記入し終えた時点で、出題者は販売価格のみ開示。ソムリエ自身の予想価格と大きな差があれば、それを加味してポイントを再調整。


上記以上の指示や情報はなにもないまま、最初のフライトである白ワインの部がスタート。どのワインもバランスの良さは共通していたが、「品種特性の強弱」「ブルゴーニュ・スタイルか新世界スタイルかの分類」といった時点で判断が分かれたようだ。各人が自由な解釈のもと大胆な点差を付けていたが、蓋を開けてみれば同点ペアが2組成立。ブルゴーニュワインと同点に並んだKWVのシャルドネは、テイスター全員が予想価格を小売価格より高く見積もっていた点にも注目したい。

ビン 311 シャルドネ2018
平均点88(中野95/稲生82/阿久津85/宮本90)同点1位

産地オーストラリア:サウス・イースタン・オーストラリア
希望小売価格/6,534円

ルイ・ジャド ブルゴーニュ シャルドネ2023
平均点83(中野90/稲生70/阿久津87/宮本85)同点3位
産地
フランス:ブルゴーニュ
参考価格/3,762円


KWV(ケイ・ダブリュー・ヴィ) カセドラルセラー シャルドネ 2024 

産地/南アフリカ:西ケープ州         
参考価格 2,700円

中野「爽やかな酸を思わせるスッキリとした柑橘、熟度の高いトロピカルフルーツが複雑に香る。鋭角的な酸味は、オイル系のカルパッチョなどに合いそう」(予想価格5,000円)/生「固めのりんご、白い花が控えめに香り、グリーンでフレッシュな造り。ドライながら酵母由来の旨みがあり、酸には伸びがある」(予想価格4,800円)/阿久津「白い花、はちみつ、パイナップルのように華やかで甘味ある香り。ほどよい酸もキレイ。記念日のランチに、魚のボワレと」(予想価格4,000円)/宮本「すいかずら、イースト、海の潮の香り。線は細いものの伸びのある酸が、フィニッシュまで背後に。海岸沿いのテラスで飲みたい」(予想価格3,500円)

ブレッド&バター         
シャルドネ 2024

平均点88(中野87/稲生78/阿久津97/宮本90)同点1位
産地/アメリカ : カリフォルニア  
参考価格/3,980円

Flight2: ボルドーブレンドの部では、南アフリカらしさで存在感を出す

左から:バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド/レゼルヴ・ムートン・カデ・ポイヤック 2021シャトー・ラトゥール・マルティヤック 2018KWV(ケイ・ダブリュー・ヴィ)/メントーズ オーケストラ 2021ロバート・モンダヴィカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2021 

赤ワインの部、前半はボルドーブレンド系でまとめた4本。南アフリカにボルドー系品種やボルドーブレンドのワインがあると知っている人はけして多くないけれど、南アフリカで最大の栽培面積を誇る赤ワイン用品種はカベルネ・ソーヴィニヨンだ。しかも、ボルドー系品種を栽培してきた歴史は、一部のフランス・ボルドー地方より古い。ボルドー系の南アフリカワインを前に、テイスターたちが「旧世界のような、新世界のような……」と軽く困惑したのも当然である。

バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド レゼルヴ・ムートン・カデ・ポイヤック 2021   
平均点75(中野68/稲生70/阿久津87/宮本75)4位
産地/フランス:ボルドー ポイヤック     
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド             
参考価格/5,800円


シャトー・ラトゥール・マルティヤック 2018
平均点91.25(中野98/稲生92/阿久津90/宮本85)1位
産地/フランス:ボルドー ペサック・レオニャン 
使用品種
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロ32%、プティ・ヴェルド8%        
希望小売価格/8,000円


KWV(ケイ・ダブリュー・ヴィ) メントーズ オーケストラ 2021

産地/南アフリカ:西ケープ州         
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン39%、プティ・ヴェルド29%、カベルネ・フラン12%、マルベック10%、メルロー5%、カルメネール5%

参考価格/4,400円

中野「若くイキイキした印象。メントール系の香りがあり、酸が高く、飲み心地が軽やか」(予想価格2,500円)/稲生「フレッシュなカシス、リコリス、シナモン、ミントが香る。ドライながら、温暖な産地を思わせる果実感の強さがある。カジュアルなBBQなどに」(予想価格4,300円)/阿久津「しっかりと黒系果実に加え、墨汁のような香りも。ベリー系ソースを添えた鹿肉ソテー、胡椒を効かせたビーフステーキに」(予想価格3,800円)/宮本「爽やかさと凝縮感が融合、ミントやユーカリ、ダークチェリー、ブラックベリー、ブラックペッパーのニュアンスあり」(予想価格5,000円)

ロバート・モンダヴィ  カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2021          
平均点79.5(中野78/稲生85/阿久津85/宮本70)2位
産地/アメリカ   カリフォルニア/ナパ     
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン        
参考価格/8,415円

Flight3: やっぱり最高得点は南ア! ソムリエ評価と一致で評価確定

左から:ブレッド&バター/カベルネ・ソーヴィニヨン 2023、ケイ・ダブリュー・ヴィ/カセドラル・セラー カベルネ・ソーヴィニヨン 2022カルベ/マルゴー 2020

ブレッド&バター カベルネ・ソーヴィニヨン2023
平均点78.75(中野68/稲生70/阿久津87/宮本90)3位

産地/アメリカ:カリフォルニア          
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン100%      
参考価格/3,980円


KWV(ケイ・ダブリュー・ヴィ) カセドラル・セラー カベルネ・ソーヴィニヨン 2022

産地/南アフリカ/西ケープ州         
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン100%           
参考価格/2,700円


中野「ラズベリーやサワーチェリーのような赤系果実が香る。ボリュームある口当たりだが、タンニンは緻密、酸がしっかりしているので重くなりすぎない。カスレなどの煮込み料理、BBQなどの焼く料理どちらにもOK」(予想価格4,500円)/稲生「重心低めの、ドライな赤。酸は中程度で、重厚かつフレッシュながら、やや熟成感もある。すでに飲み頃に達しつつ、今後さらに熟成させることもできそう」(予想価格5,500円)/阿久津「胡椒、ハーブ、リコリスが香る。ほどよく熟れた黒系果実のニュアンスがあり、タンニンはしっかり。濃厚で骨太な赤ワイン好きにオススメ」(予想価格5,000円)/宮本「ブラックベリー、乾いた土、萎れたバラ、ナツメグなどが香る。凝縮感があり、中盤から力強いタンニンが主張。ゴルゴンゾーラたっぷりのピザ、二日間マリネしたバルバッコアなどと」(予想価格 8,000円)

カルベ 
マルゴー 2021

平均点89.5(中野83/稲生95/阿久津95/宮本85)2位
産地/フランス  :ボルドー マルゴー         
使用品種/カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、マルベック、プティ・ヴェルド
参考価格/5,230円

※画像は2020年ビンテージ

「試飲を終えて」
そこにあるのは、旧世界と新世界が融合した「第三のワイン」

かたやビジネスになるほど真贋を見極める能力に長けたソムリエ、かたや美味いワインを飲みたい一心で舌を磨いてきたワイン愛好家。彼らが最終フライトで同じワインに最高得点を付けた事実から、双方の評価は深くリンクすると気づかされ、また「いいワインは、やっぱりいいもんだ」と納得もできた。
さて、一般人である4名に試飲ワインの種明かしをしたところで、南アフリカワインのイメージについて尋ねてみよう。

稲生 私はちょうど最近、普段使い用に南アフリカワインを選ぶ機会が多くなったところです。特にフランス産が高騰している今、フランス好きにとってが南アフリカは有力な選択肢の一つですよね。
中野 私も、KWVのワインを飲む機会なら度々あります。でも、多くのワイン好きにとってのKWVは、遠い昔のイメージ「安いワインを大量生産していた協同組合」が強いのでは。さらにワインビギナーなら、「南アフリカって、ワイン造ってるんだ?!」のレベルにいるはず。
阿久津 南アフリカワインで私がとくにハマっているのはスパークリングワイン。香りが高く、価格も高すぎないからすごく好きなんです。
宮本 南アフリカワインの世界へ、スパークリングから入っていくのはいいですね。レベルが高いから、誰もが「すごい」と感動できる。そこから他の品種へも進みやすいはずです。
稲生 今回登場した「KWV カセドラル・セラー シャルドネ2024」は、ちょうど生産者の個性が出てくる絶妙な価格帯。なんでもないときでもすぐ開けられるよう、常に冷蔵庫で冷やしておきたくなりました。
中野 きっとリッチなスタイルに仕上げたかったんだろうな、という造り手の心意気も感じましたし。
阿久津 ボリュームがあるのに飲みやすくて、記念日のランチでいただくとうれしいワインでした。3組目のフライトで1位となった「KWV カセドラル・セラー カベルネ・ソーヴィニヨン 2022」は、カジュアルなBBQからエレガントなポルケッタ(ロースとポーク)まで、シーンを選ばず肉料理と合わせやすい点に好感を持てます。
宮本 それは、「旧世界のような、新世界のような」南アフリカワインならではの特質からきているのでしょう。旧世界のワインと同じ香りがするのに、新世界のワインが持つ果実感や凝縮感を味わえます。
稲生 以前は、南アフリカワインと言えば赤なら「焼いたタイヤ」、白なら「マヨネーズ」といった香りや特徴があると言われていましたが、皆さんどうでしたか?
宮本 少し専門的になりますが「レノスターボス」という南ア特有の植物の香りが共通しているとの話もあります。でも、今日テイスティングした南アフリカワインには、どの特徴もさほど感じられませんでしたね。
阿久津 今現在の南アフリカらしさといえば、コスパのよさ。概ねコスパがよいとされる新世界のカテゴリーに南アフリカが入っていても、そのなかで他国より「この価格で、この奥行きと熟成感が味わえるの?」と驚くワインばかりです。
稲生 「品種特性、土壌、気候を反映させながら、トゥーマッチな造りをしない」のが、今の私が抱いている南アフリカワインのイメージ。親近感が持てます。
中野 ワインがこれだけ高評価なのだから、もっと産地のPRプロモーションしてほしいですね。
宮本 ビギナーでしたらピノタージュの前に、より馴染みのあるシャルドネ、カベルネなどからゆっくり飲み始めては。総じて言えるのは、優しさ優先の旧世界ワインと違うし、分かりやすい新世界ワインとも違うのが南アフリカワイン。そこで、新世界と旧世界が融合した第三の新ジャンルとして捉えていくと、ワインを飲みなれた人も先入観抜きで楽しめる。


  • 記事を書いたライター
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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

  1. ラベルを外したら、ワインの序列は変わるのか。ワインエキスパート4人が挑んだブラインドテイスティング

  2. KWVで読み解く、シュナン・ブランとピノタージュの活用法

  3. ラベルを外したら、ワインの序列は変わるのか。若手ソムリエ4人が挑んだブラインドテイスティング

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