取材・文/山本ジョー 写真/小松勇二
~若手ソムリエたちのやさしい解説で丸わかり~
南アフリカを代表するブドウ品種を白と赤ひとつずつ挙げるなら、白はシュナン・ブラン、赤はピノタージュ。ロワール起源のシュナン・ブランも、栽培面積の広さと収量の多さでトップをキープしているのは今や南アフリカだ。そして、南アフリカで一番栽培されている黒ブドウはカベルネ・ソーヴィニヨンなれど、ほぼ南アフリカでしか見かけないピノタージュのほうがダントツのユニークさを誇る。
これらの南アフリカ代表品種、日本ではどのように使いこなすべき? 未来のワイン業界を背負って立つソムリエの若手ホープたちに、南アフリカワインならではのメリット、シュナン・ブランとピノタージュの使い勝手を語ってもらった。

KWVのワインを飲み比べながら南アフリカ産の魅力を語る、(左より)山本麻衣香さん(「マンダリンオリエンタル東京」ソムリエ)、柳澤はるかさん(「コンラッド東京」ソムリエ)、等々力竜輝さん(ワインコンサルタント、ソムリエ)、松田悠希さん(「銀座レカン」アシスタント・シェフ・ソムリエ)。全員まだ20代ながら、一流の勤務先やコンクール受賞でその実力は証明済み。
「リーズナブルすぎ」??ソムリエのゼイタクな悩み
南アフリカは、農業国である。ヨーロッパとアジアを結ぶ交易路の中継地として、現地で生産する食料やワインを船の乗組員に供給する重要な役割を果たしてきた。気候については「アフリカだから暑い」「南極に近いから寒いだろう」と誤解されやすいが、とくにワイン生産が盛んな西ケープ州はフツーの(?)地中海性気候である。日本全国の平均気温と比べると全体的に高めながら、夏(南半球なので日本では冬の時期)には「ケープドクター」と呼ばれる冷たい強風がインド洋から吹き付け、ブドウ畑を軽くクールダウンさせつつ湿気を取り除いてもくれる。
恵まれたワイン産地・西ケープ州に点在する50以上の栽培農家と契約し、南アのワイン産業を長年司ってきたのがKWVだ。歴史ある産地だけに樹齢30年以上はザラ、古樹でしか表現できない凝縮感あるワインには絶対の自信を持つ。
デイリーワインから高級ワインまで多様なラインナップを展開しているなかから、今回ソムリエたちに試してもらったのは、白と赤それぞれ2ブランドずつ、そしてスパークリング1種。ひと通り試飲を終え、まずはKWVすべての共通項を洗い出してもらおう。
「クオリティとコストのバランスがとれていること。南アのほかの生産者と比べても、KWVはコスパがいい」(柳澤)
「低価格だからニュートラルなままで終わるかと思いきや、どれも骨格があり、しっかりした味わいです」(等々力)
「どのワインも言葉ひとつで片付けられない深みがあります。高い熟度と引き締まったテクスチャーは、他の産地ではなかなか見られません」(山本)
「ソムリエとしては熟度や酸味の部分を厳しく見ますけど、南アらしい酸が果実味によく溶け込んでいます」(松田)
コスト・パフォーマンスの良さには全員一致。しかし各々が絶賛コメントを出し合っていくうちに一瞬、数人の顔が曇り、残念そうに呟いた。
「……この白は2000円か。赤も安いしなぁ」
おや、価格が安くて何か問題でも?
「自分の勤める店では、いくらクオリティが高くても、あまりに安いと売りづらい」
「ストーリー性のあるペアリング提案として、料理とグラスワインとを合わせる切り口なら、深掘りもできてアリなのですが」
今回試飲したKWVのワインは正直、ハイクラスのレストランや星付きホテルのバーなどでは、「非日常の体験を求めるリッチなお客様には提供しづらい」価格設定なのだとか。「安すぎて困る」と言われた側にしてみれば、「……(どーしろっつーの)」と黙ってしまうしかない……が、しかし、いや待てよ。逆にとらえれば、品質に対して安いどころか安すぎるワインはカジュアルレストランや家飲みにもってこい、ではないか!
常にお買い得ワインを探しまわっている庶民な消費者のテンションが静かに獏上がりしたところで、今回の試飲ワイン詳細をじっくり見ていくとしよう。
KWVシュナン・ブランの2アイテムはこう使い分けるのが吉
KWV ヘリテージ・コレクション/シュナン・ブラン 2024

産地:南アフリカ・西ケープ州
品種:シュナン・ブラン 100%
参考価格:2,000円前後(税抜)
※日本未発売
味わいコメント:
山本「ガストロノミックなワイン。熟したアプリコット、オレンジピール、かりんの香りにバニラやカシューナッツなどの香ばしさが重なります。活き活きとした酸と果実味、心地よいミネラル感が奥行きを与え、余韻を引き伸ばします」
等々力「メントーズと比べると重いのは、樽由来ですね。落ち着きがあり、気品や格を感じさせるほど。白桃や白バラが華やかに香り、味わいには乳製品を連想させる柔らかさがあります。温度が上がると、さらにふくよかに」
おすすめペアリング:
等々力「鶏肉の白ワイン煮などボリュームある料理と。前菜から飲み進め、メインまで時間をかけて楽しめるワインです」
山本「記念日などの大切な食事会に登場させたい。フレンチなら舌平目のパン粉焼き・焦がしバターソース、和食なら太刀魚の西京焼を」
KWV ザ・メントーズ シュナン・ブラン 2023

産地:南アフリカ スワートランド
品種:シュナン・ブラン 100%
参考価格:3,753円(税抜)
味わいコメント:
等々力「軽やかな口当たりで、アルコール感は控えめだから、まだワインを飲みなれていない人にも最適。グレープフルーツ、梨、りんごの蜜が香る。みずみずしい果実味があふれ、エネルギッシュな印象です」
山本「洋梨、桃、アプリコット、アカシアの花が香り、ミネラルのニュアンスやオイリーなアロマが深みを与えてくれます。クリーンでフレッシュ、甘さを感じさせながらもドライで親しみやすいワインです」
おすすめペアリング:
山本「女子会などのパーティでは、アプリコットのブラータサラダ、フルーツトマトのカッペリーニなどと。しっかり冷やしてビーチでいただくのもいいですね」
等々力「酸にキレがあり甘味はおだやかなので、とくに夏の魚介料理とは親和性が高いはず。真鯛とリンゴのカルパッチョなどと合わせたくなります」
柳澤「個人的に『南アのシュナン・ブランは日本食に合う』とずっと考えていました。家庭料理でも懐石料理でも、みりんの甘さが品種由来の甘さにリンクしやすいんです。家で生姜焼きを作るなり、パックで魚の幽庵焼きを買ってくるなりして、あとはKWVのシュナン・ブランを合わせれば、ワインの価格と用途がマッチ」
等々力「みずみずしいメントーズなら、ピクニックなどのアウトドアで。落ち着きがあってエレガントなメリテージなら、レストランで。シチュエーション別に使い分けるのも楽しいですよ」
ビギナーに、醤油味の料理に、アウトドアに、ピノタージュ
KWV カセドラル・セラーピノタージュ 2020

産地:南アフリカ・西ケープ州
品種:ピノタージュ 100%
参考価格:2,700円(税抜)
味わいコメント:
松田「渋味や苦みが苦手な方に飲んでいただきたい赤。赤い果実から黒い果実まで、様々なフルーツをベースに、スパイスのニュアンスが穏やかに溶け込んでいます。しっかりした甘味と伸びやかな酸が上品にまとまったテイスト」
柳澤「火入れしたラズベリーやチェリー、清潔感のあるハーブ加え、干し肉を思わせるニュアンスも。爽やかな酸が長く続きエレガントな余韻に。収れん性のあるタンニンがボディを引き締めてくれるドライなワインです」
おすすめペアリング:
松田「家でのカジュアルな食事シーンでより輝くタイプかと思います。ハンバーグ料理、カレー風味の料理のお供に」
柳澤「赤すぐりのコンフィを添えた鹿肉のロティといったジビエ料理と。ワインのきめ細かいタンニンは赤身肉と合わせたくなります」
KWV ザ・メントーズ ピノタージュ 2021

産地:南アフリカ・ステレンボッシュ
品種:ピノタージュ 100%
参考価格:4,231円(税抜)
味わいコメント:
松田「香りはフルーティーでチャーミング。タンニンがしなやかで、クリーミーなテクスチャーです。ブルーベリーや黒すぐりのようなピュアな果実味とジャムのようなニュアンスが合わさり、飲み応えがあります」
柳澤「熟したラズベリーやプラムといった赤い果実と、ナツメグ、クローブの甘やかでスモーキーなニュアンスを持つキャラクター。酸は穏やかで、中盤にはドライハーブやナツメグ、余韻には心地よい苦みが複雑さを生みます」
おすすめペアリング:
松田「酸を感じやすいので、脂ののった料理に合わせやすい。すき焼き、焼鳥など甘味のある醤油だれ味がペアリングしやすいでしょう」
柳澤「八角やローレルのきいた豚の角煮などに合わせると、ワインの果実味とバランスがとれ、スパイシーな香りが調和してくれます」
松田「ピノタージュは、シラーのようなしっかりしたストラクチャーがあるというより、もっと包容力としなやかさがある品種。とはいえ、凝縮感があるピノタージュなら、数日たってもおいしいまま。1日で飲み切れないときは、堂々と次の日までとっておいてください」
山本「ピノタージュは、ほぼ南アフリカ産しか飲めないという特色が強みになるいっぽう、一般の方には馴染がなくて手に取りづらい。ただ、ちょっとスモーキーなニュアンスがあるため、キャンプファイヤーやBBQなどのアウトドアにはとてもマッチするワインなんです。これからは、グランピングなどと結びつけて意識してもらっても、可能性が広がりますね」
「このポジションが空いてた!」にドンピシャなスパークリング
KWV ラボリー スパークリング・ブリュット NV

産地:南アフリカ・西ケープ州
品種:シャルドネ61%、ピノ・ノワール31%、ピノ・タージュ8%
24ヶ月瓶内二次発酵
参考価格:2,700円(税抜)
味わいコメント:
柳澤「赤りんご、かりん、マイヤーレモンといったフレッシュな果実、コリアンダー、フェンネルのようなハーブのニュアンス、さらに生のアーモンドを連想させる香り。口中では快活な酸、柔らかな泡が全体を引き締めます」
山本「果実やスパイス、ナッツ、トースト、白カビチーズなどの香りが広がり、奥行きを与えています。タイトな酸ときめ細かくクリーミーな泡は赤りんごやアプリコットのフレーバーを引き立たせ、心地よいミネラルが余韻を形成」
おすすめペアリング:
等々力「白身魚のマリネやカプレーゼのような前菜、桃やりんごのデザートとも相性がいいはず。夏のスターターとしてもオススメです」
松田「魚貝と旬のフルーツと合わせたカクテルサラダと。ワインのテクスチャーが柔らかく、クリームチーズケーキのようなクリーム系も合います」
山本「日本のワイン愛好家はシャンパーニュが大好きなわけですが、家飲み文化が広がってくると、今度はシャンパーニュ以外のスパークリングを探すでしょう。すると、そこで一気に価格とクオリティを下げたワインを選んでしまう。もっと家飲みの日常を輝かせてくれる、このラボリーのようなラインに光を当てるべきです」
柳澤「高価格なシャンパーニュには手が届かないけれど、シャンパーニュに近いクオリティは保ちたいとき、ほどよい価格のラボリーという選択肢がちょうどいい。そのあたりのレンジって、市場でもちょうどポッカリ空いてしまっていたんです」
等々力「ピノ・ノワールやピノタージュという黒ブドウのおかげで味わいはしっかりしているし、南アフリカならではのクオリティの高さもあります。物価高のおかげでシャンパーニュ以外の高品質スパークリングが強く求められている今、情報がうまく消費者へ伝われば必ずヒットするでしょう」
松田「シャンパーニュはミネラル感や酸がしっかりしているのですが、もう少し酸が穏やかでアタックもスムーズなラボリーは、さらに様々な食事シーンと合わせやすいと言えます。シャープさが和らいでいるからこそ、『1本を2人でゆっくり』なんて家飲みにはピッタリなはずです」
今回の試飲会でさらに再確認できたのは、歴史ある生産者による品質の安定性、そして食事との親和性の高さだ。今まではワインを積極的に提供してこなかった中国料理やエスニック料理と合わせてみるなど、「新しいワインとの出会いを提供する場でも、KWVはとても扱いやすい」とのこと。さらに「そこから、日本のワイン愛好家の増加にもつなげていける!」と若きソムリエたちは意気揚々と会を締めくくったのだった。

