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贅沢の意味が変わった時代に。エストニア生まれの「NOVAキャビア」が教えてくれること

文/山田 靖

少し前、「NOVAキャビアとワイン、日本酒のマリアージュ検証会」という企画に参加した。

世の中には魅力的なイベントタイトルが数多くあるが、これはなかなか強い。

キャビア、シャンパーニュ、ワイン、日本酒。

それぞれ単独でも十分に主役を張れる存在が一堂に会するのだから、断る理由など見当たらない。

当日は、アンリ・ジローのシャンパーニュや秋田の金紋秋田酒造の酒、南アフリカ・ステレンボッシュのワイナリーGraffエステートとともに、エストニア生まれの「NOVAキャビア」を味わった。

だが印象に残ったのは、その味わいだけではない。

いま私たちが「良いもの」と呼ぶ基準が、確実に変わりつつあることだった。

かつてラグジュアリーとは、希少で高価なものを所有することだった。しかしいまは違う。

その背景にどんな思想があり、どのように作られ、未来に何を残すのか。そこまで含めて価値を選ぶ時代になっている。そんな価値観の変化を象徴する存在が、エストニア生まれの「NOVAキャビア」だ。


バルト三国のひとつ、エストニア。森と湖、湿原が広がる自然豊かな国として知られる。その西部、パルヌの豊かな自然環境の中でNOVAキャビアは生まれている。

特筆すべきは、その生産哲学だ。

チョウザメは世界的に絶滅危惧種として知られている。かつて野生のチョウザメから採取される天然キャビアは富裕層の象徴でもあったが、その一方で乱獲による資源減少という深刻な問題を抱えてきた。

NOVAキャビアは、そうした歴史を繰り返さない。

最新の循環式養殖システム(RAS)を導入し、水資源の消費を最小限に抑えながら高品質なチョウザメを育てる。魚の健康状態はもちろん、飼料や水質管理まで徹底的に管理されている。

これは単なる養殖技術の話ではない。

未来の世代にもチョウザメという生き物を残していくための選択であり、「美味しいものを楽しみたい」という欲求と、「環境を守りたい」という意識を両立させる取り組みでもある。

いまの若い世代は、商品の背景まで含めて購入を決めることが多い。

フェアトレードのコーヒーを選ぶように。

環境負荷の少ないワインを選ぶように。

NOVAキャビアもまた、「何を食べるか」だけでなく、「どう作られたものを食べるか」という視点から選ばれるべき食材なのかもしれない。

さらに興味深いのは、その味わいである。

一般的なキャビアは塩味が先行することも少なくない。しかしNOVAキャビアは塩分を極力抑え、卵そのものの甘みや旨味を前面に引き出している。

口に含むと粒がゆっくりと弾け、海ではなく淡水魚ならではの繊細な旨味が広がる。ナッツのような香ばしさとクリーミーな余韻も印象的だ。

まるで上質な日本酒や熟成したシャンパーニュを味わうときのように、その余韻を楽しみたくなる。

だからこそペアリングも面白い。

今回のテイスティングでは、シャンパーニュ、日本酒に加え、南アフリカの名門デレール・グラフ・エステートのワインも用意された。

まずはアンリ・ジローの「フュ・ド・シェーヌ MV 2020」。

シャンパーニュとキャビアは古典的な組み合わせだが、NOVAキャビアの場合は単なる定番以上の心地よさがあった。泡が塩味を洗い流すというよりも、キャビアが持つ繊細な旨味やナッティーな余韻を次の一口へと運んでくれる。まるで長年連れ添った名コンビのような関係だ。

続いて試したのが、デレール・グラフ・エステートの「テラスド・ブロック・シャルドネ」。

南アフリカ屈指のワイン産地ステレンボッシュの冷涼な区画で育ったシャルドネから造られる一本で、豊かな果実味と上品な樽香が特徴だ。NOVAキャビアと合わせると、キャビアのクリーミーな質感にワインのふくらみが寄り添い、味わいに美しい奥行きを与えてくれる。シャンパーニュよりも少しゆったりと、キャビアそのものの旨味を味わいたい人におすすめしたい組み合わせだった。

そしてこの日の驚きは、「バンフック・リザーブ・メルロ」だった。

正直に言えば、試す前は半信半疑だった。魚卵と赤ワイン。一般的なキャビアなら生臭さが強調される可能性もある。しかしNOVAキャビアは違った。

塩味よりも卵そのものの甘みと旨味が際立つフレッシュなスタイルだからこそ、メルロが持つやわらかな果実味や穏やかなタンニンと見事に呼応したのである。

キャビアのナッティーなニュアンスとメルロの熟した果実香が重なり合い、双方の魅力を引き出していく。シャンパーニュとは異なる方向性だが、思わず「なるほど」と膝を打ちたくなる組み合わせだった。

その後に日本酒パートとして、

しかし、日本人としてさらに興味深かったのは日本酒との相性だ。

秋田の金紋秋田酒造による「kinmon X3」シリーズは、通常の約3倍の麹米を使用することで豊かな旨味を生み出した酒。X3 Black、X3 Rose、そしてChardonnay Cask(黒麹仕込み)を試したが、どれもキャビアとの距離感が近い。

「kinmon X3 Rose」は柔らかな果実感が特徴で、キャビアの繊細な甘みをふわりと持ち上げる。

そして「kinmon Chardonnay Cask(黒麹仕込み)」は、樽由来の香ばしさがキャビアのナッティーなニュアンスと共鳴し、より立体的な味わいを描き出す。

どれがベストというより、その日の気分によって選びたくなる組み合わせだ。


キャビアは確かに安価な食材ではない。

けれど、それは単なる贅沢品とも少し違う。

誰かの誕生日。

結婚記念日。

久しぶりに会う友人との食卓。

あるいは、自分自身がひとつの節目を迎えた夜。

そんな人生の小さなハイライトに寄り添う存在だ。

そして、その一匙の向こう側に、自然環境を守ろうとする生産者の努力や、未来へ資源を残そうとする思想があると知れば、その味わいはさらに豊かなものになる。

贅沢とは、高価なものを手に入れることではない。

本当に良いものを知り、その背景ごと味わうこと。

NOVAキャビアは、そんな現代的なラグジュアリーを静かに教えてくれる。


NOVAキャビアの詳細サイト(外部サイト)

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山田_yamada 靖_yasushi

Why not?マガジン編集長。長くオールドメディアで編集を担当して得たものをデジタルメディアで形造りたい。座右の銘は「立って半畳、寝て一畳」。猫馬鹿。年一でインドネシア・バリのバカンスはもはやルーティン。

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