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シャンパーニュ・ランソン「Noble Champagne」 の熟成可能性 ~シェフ・ガルヴァンとのコラボレーションディナー~

Texts=Yuri Shima Photo=Lanson (@JB Delerue) & Yuri Shima

My wine journey by Yuri Shima ~世界のワイン便り Vol.19

1760年設立で、ランスを拠点とする歴史あるメゾン、シャンパーニュ・ランソン(Champagne Lanson)。以前、本連載では同メゾンが誇る偉大なバック・ヴィンテージのコレクションについて紹介しましたが、今年はランソンの最上級キュヴェ「Noble Champagne(ノーブル・シャンパーニュ)」をテーマにした特別なコラボレーションイベントが開催されました。
『シャンパーニュ・ランソンの新しい「プライベート・コレクション」プログラム』に記事を読む。

このイベントを特別に演出したのが、フランスで革新的なレストランとして注目を集める、ジェレミー・ガルヴァン・シェフ率いるレストラン「220 BPM」。同レストランはリヨン郊外の森の中にあり、斬新な没入型のダイニング体験で知られています。同レストランの世界観をそのままメゾン・ランソンへと移し、ノーブル・シャンパーニュとの融合による異例のガストロノミー体験が創り出されました。

Noble Champagneは、醸造責任者のエルヴェ・ダンタン(Hervé Dantan)氏の言葉によると、「卓越した自然、人の熟練した技、そして時が織りなすシャンパーニュの最も気高い表現」で、特級村のシャルドネ70%とピノ・ノワール30%をブレンドして造られます。1978年に試作を作り、正式な最初のヴィンテージは1979年。その後、1983年にシャルドネ100%で造られるブラン・ド・ブランが誕生しました。例えば、Noble Champagne 2013(未リリース)は、アヴィーズ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェ、クラマンのシャルドネ70%に、ヴェルズネイのピノ・ノワールを30%ブレンドして造られています。その魅力は、果実の深み、フレッシュさと繊細さ、そして卓越した熟成能力にあります。

今回のイベントでも、その熟成ポテンシャルは、存分に披露されました。2008年/1996年、1990年/1989年、1988年/1985年、1983年/1979年という4組、計8つのヴィンテージが、それぞれ4皿の料理に合わせて供され、参加者たちは時を経て変化するノーブル・シャンパーニュの魅力を体験しました。

フランソワ・ヴァン・アール(François Van Aal)社長(右)と醸造責任者のエルヴェ・ダンタン(Hervé Dantan)氏(左)

参加者に事前に詳細は知らされていなかったのですが、ホストを務めたフランソワ・ヴァン・アール(François Van Aal)社長が開会時に「いくつかのサプライズを用意しています」と語った通り、驚きに満ちた夜となりました。

まずは、ランソンの珠玉の古いヴィンテージボトルが眠る地下カーヴに案内されました。ここでは、目の前に設置された森を模したオブジェにシェフたちが料理を完成させていくというデモンストレーションを眺めているなか、アペリティフとして最新リリースのNoble Champagne 2012が供されました。

そして、地下カーヴから階段を上がり、メゾンのダイニング・ルームに入り、参加者は長いテーブルに着席。テーブル中央には森と自然をイメージした装飾が施され、これから始まる体験への期待感を高めます。コース料理は、照明や音楽による演出とともに、統一されたコスチュームをまとったスタッフたちによって提供されます。その様子は、まるで一つの舞台作品の中で食事を楽しんでいるかのようでした。

シェフによるアペリティフ時のデモンストレーション

料理は「Air(空気)」「Feu(火)」「Terre(大地)」「Eau(水)」の4要素をテーマに構成され、それぞれの皿に対して前述の2つの異なるヴィンテージのNoble Champagneが対比する形で供されました。独創的な料理とともに、ヴィンテージごとの個性や熟成による変化を体感できる、五感が刺激される知的で印象的なガストロノミー体験でした。

シェフ

特に印象に残ったペアリングを2つご紹介します。

Feu (火)
Noble Champagne Blanc de Blancs 1990 & Noble Champagne 1989

ホロホロ鳥胸肉の燻製-タバコと炭香るジュ、モミで香りづけしたエリンギのコンフィ、タバコ風味のきのこのクリーム、そばの実のパフ

1990年は熟した果実味と滑らかな質感、包み込むような柔らかさが印象的で、完成度の高いバランスを備えたヴィンテージ。一方の1989年は、より引き締まった印象で、柑橘や柑橘の皮を思わせる生き生きとしたニュアンスとともに、複雑さと緊張感を感じさせました。

燻製したホロホロ鳥肉や濃厚なきのこのソースは、熟成シャンパーニュが持つスモーキーな香りや旨味、さらに熟成由来の森の下草やトリュフを思わせる複雑な風味と見事に共鳴していました。特に1990年ヴィンテージは、料理の塩味や旨味、クリーミーな質感と調和していました。

Data:
Noble Champagne Blanc de Blancs 1990: シャルドネ100%(Avize, Le Mesnil-sur-Oger、Oger)MLF 100%。 Noble Champagne 1989: シャルドネ70%(Avize, Le Mesnil-sur-Oger、Oger、Chouilly)、ピノ・ノワール30%(Verzenay、Bouzy、Ay、Ambonnay)。MLF 100%。

Eau(水)

Noble Champagne Blanc de Blancs 1983 & Noble Champagne 1979

イクラのプラリネとルバーブのアイスクリーム、エスプーマとストロベリーウォーターを添えて

ノーブル・シャンパーニュとノーブル・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン、それぞれの初ヴィンテージという歴史的なボトルに合わせられたのはデザート。甘さを抑え、セイボリーな要素を取り入れたこの一皿は、熟成シャンパーニュが持つきのこや湿った土、森を思わせる複雑な熟成香と絶妙な相性を見せていました。イクラの塩味とルバーブの酸味がワインのフレッシュさを引き立て、エスプーマやストロベリーウォーターが軽やかさと透明感を添えていました。

特に印象的だったのは、40年以上の歳月を経たワインでありながら、なお鮮やかなフレッシュさを保っていたこと。この時代のランソンはマロラクティック発酵(MLF)を100%おこなっていますが、それでも生き生きとした酸とエネルギーを失わない姿に、メゾンが追求する長期熟成とフレッシュネスの哲学が表れていました。

Data:
Noble Champagne Blanc de Blancs 1983: シャルドネ100%(Avize, Le Mesnil-sur-Oger)MLF 100%。

Noble Champagne 1979: シャルドネ70%(Avize, Cramant、Le Mesnil-sur-Oger、Oger、Chouilly)、ピノ・ノワール30%(Verzenay、Bouzy)。MLF 100%。

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島 悠里

大学卒業後、外資系投資銀行勤務、米国ロースクール留学。その後、国際弁護士事務所勤務を経て、パリの国際機関で勤務(国際貿易・投資法が専門)。 ワインが日常にある、フランスやカリフォルニアに住んだことがきっかけでワインに魅了され、2018年にサンフランシスコでWSET Diplomaを取得。2019年のロンドンでの卒業式では、総合上位の成績でInternational Wine and Spirits(IWSC)賞を受賞。 ワインの分野では、国内外のメディアでのワイン記事執筆、ワインセミナーでの講師、ワインイベントのオーガナイザー、国際的なワイン品評会でジャッジを務めるなど幅広く活動。特にシャンパーニュに力を入れている。 米国ニューヨーク州弁護士 WSET® Level 4 Diploma WSET® Certified Educator&Level 3 Internal Assessor J.S.A. 認定ワインエキスパート IWSC ジャッジ(シャンパーニュ・スパークリングワイン部門)

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