©BIVB/Aurélien IBANEZ
文/山田 靖
今年も猛暑になりそうだ。
こう暑い日が続くと、ワイン好きでも「今日は赤じゃない」と感じる日が増える。では白ワインなら何を選ぶか。
ソーヴィニヨン・ブランでも、リースリングでもいい。しかし、この季節になると改めて飲みたくなるのがシャブリだ。
キリッとした酸、透明感のある果実味、口の中を洗い流してくれるようなミネラル感。魚介はもちろん、和食にも寄り添い、暑さで落ちた食欲まで呼び戻してくれる。
そんなシャブリはいま、大きく変わりつつある。
「昔飲んだシャブリ」のイメージだけで語るには、あまりにも惜しい存在になっているのだ。
去る3月、ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)コミュニケーション委員会委員長アンヌ・モロー氏を迎え、日本市場向けに開催されたシャブリセミナーでは、プティ・シャブリからグラン・クリュまで6種を試飲しながら、その”現在地”を体験した。

来日したブルゴーニュワイン委員会(BIVB)コミュニケーション委員会委員⾧
アンヌ・モロー(Anne Moreau)氏
「シャブリ」はブルゴーニュの入り口
シャブリという名前は知っていても、実はその産地を詳しく知る人は少ない。
フランス・ブルゴーニュ地方最北端。
ブルゴーニュの”黄金の扉”とも呼ばれる場所である。
ここで造られるワインはすべてシャルドネ100%。

©BIVB/Sébastien BOULARD
しかし、世界中で造られるシャルドネとはまるで違う表情を見せる。
その理由は、約1億5000万年前のキンメリジャン土壌。
石灰岩と泥灰土が重なるこの古い地層が、シャブリ独特の火打石を思わせるミネラル感と、凛とした酸を生み出す。しかもシャブリには
・プティ・シャブリ
・シャブリ
・プルミエ・クリュ
・グラン・クリュ
という4段階のアペラシオンが存在する。同じシャルドネでも価格も味わいも大きく変わる。
つまり、「シャブリ」という名前は一つでも、中身は実に多彩なのである。
若い人ほど、まずプティ・シャブリを飲んでほしい
セミナーで最も印象に残ったのは、アンヌ・モロー氏のこんな言葉だった。
「若い世代はワインに興味がないのではありません。そもそもシャブリを知らないのです。」
これは日本だけではなく世界共通の課題だという。
だからこそ彼女は、最初の一本としてプティ・シャブリを薦める。
価格は手頃。品質は高い。ブルゴーニュの入口として、これほど優れたワインはないというのである。
ブルゴーニュワイン委員会も、日本はシャブリにとって重要市場であり続ける一方、ワイン離れの影響は避けられないと分析している。2025年の日本向け輸出は世界第4位(輸出額)、第5位(輸出量)を維持したものの、数量は前年を下回った。それでも日本はブルゴーニュ白ワインの重要市場であり、白ワイン志向の高まりはシャブリにとって追い風になると見ている。
シャブリは「魚介のワイン」だけではない

今回のセミナーでは、各アペラシオンに合わせた料理も供された。
鮑と帆立。サーモン。平目。仔牛。チーズ。最後にはデザートまで。
興味深かったのは、「魚介専用ワイン」という固定観念が覆されたことだ。シャブリといえば代名詞の生牡蠣との相性は抜群だろう。しかしプルミエ・クリュになると肉(赤身肉)料理も受け止めるさらに熟成感を持つワインはチーズとも見事に調和する。
シャブリの魅力は「万能」であることではない。料理に寄り添いながら、それぞれのアペラシオンが違う表情を見せてくれることだ。
この多層性こそ、世界中の料理人がシャブリを愛する理由なのだろう。
【この夏おすすめしたい5本】
今年の夏も猛暑らしい。少しでも快適な気分にしてくれるシャブリを5本オススメしよう。
今回のラインナップは3月のセミナーで提供された中から5本を選んだ。なぜならば、ブルゴーニュワイン委員会がいまのシャブリを知るならと特別にセレクトしたワイン。ならば、お墨付きのあるシャブリを飲んでみるのが良いのじゃないか!?
プティ・シャブリ 2023 ジャン=マルク・ブロカール
Petit Chablis, 2023, Jean-Marc BROCARD

土壌:主に石灰岩からなるポートランド土壌
醸造・熟成:大樽発酵、ステンレスタンク澱と共に 6 ヶ月熟成
品種:シャルドネ
参考価格:3,800円
キンメリジャン土壌ではないのでヨード感が弱い分、ミネラルよりも果実味のほうが前面に出たフルーティーな味わい。果実の酸味にも合い、飲みやすく、シャブリファーストコンタクトに最適。
シャブリ 2023 クロティルド・ダヴェンヌ
Chablis, 2023, Clotilde DAVENNE

土壌:キンメリジャン石灰質土壌
醸造・熟成:ステンレスタンクにて野生酵母のみを使い発酵、マロラクティック発酵。同容器内にて 10 ヶ月熟成。
品種:シャルドネ
参考価格:8,600円
ステンレスタンクと野生酵母由来の非常にピュアで豊かなミネラル感が特徴。柑橘系の爽やかな酸味とフレッシュな果実味が魚介料理と好相性。
シャブリ 2023 ジャン=ポール・エ・ブノワ・ドロワン
Chablis, 2023, Jean-Paul et Benoît DROIN

土壌:キンメリジャン石灰質土壌(石灰岩と泥灰土の互層)
醸造・熟成:ステンレスタンクで発酵、澱と共に 8~10 ヶ月
品種:シャルドネ
参考価格:6,800円
果実のまろやかさとフルーティでバランスの良い落ち着き、酸とミネラル感もあり、しっかりしたコクがあるハイレベルなシャブリ。
シャブリ・プルミエ・クリュ モンマン 2023 シモネ=フェブル(左岸)
Chablis Premier Cru, Montmains, 2023, SIMONNET-FEBVRE (rive gauche)

土壌:キンメリジャン粘土石灰岩土壌
醸造・熟成:17~21℃に温度管理されたステンレスタンクにて発酵後、
10~12 カ月間澱と共に熟成。
品種:シャルドネ
参考価格:7,600円
柑橘や火打ち石のアロマ、ピュアでクリーンな長い余韻が印象的。シモネ・フェブルが「ミネラル感豊かなワインのお手本」と言われるスタイルを表現したプルミエ・キュヴェ。柔らかな肉質(赤身肉)にも合うワイン。
シャブリ・プルミエ・クリュ モンテ・ド・トネール 2023 ドメーヌ ジャン・コレ・エ・フィス(右岸)
Chablis Premier Cru, Montée de Tonnerre, 2023,Domaine Jean COLLET et Fils (rive droite)

土壌: キンメリジャン(石灰質の粘土)
醸造・熟成:228L の小樽を使用し発酵・熟成。新樽の使用率は 30%。熟成期間は 16 ヶ月間。
品種:シャルドネ
参考価格:7,400円
果実味の中に、しっかりとしたミネラル分が感じられる。長期熟成によって味わいは更に複雑味を増す。熟成の旨味、ナッツの香り、さわやかな酸味は個性豊かなチーズにも相性◎。
