文/山本ジョー 写真/篠原宏明 レシピ提案/料理家・林“グー”幸子
長い夏の終わりに、猛暑疲れをリセット。体と心を整えるには、酸味と果実味がやさしいドイツのピノ・ノワールがピッタリ……となると、ドイツ産ピノに合う料理も欲しくなるわけで……そんなとき頼りになるのは、テレビや雑誌でお馴染み、料理研究家の林幸子先生。ちょっとした素材や調味料選びで食卓がランクアップする、絶妙なレシピを伝授してくれました。おうちで簡単に作ったなんて信じられない、完成度の高い料理は必見です!

林“グー”幸子先生
料理研究家。東京・青山の料理教室「アトリエ・グー」を主宰し、“グー先生”との愛称でテレビ番組や雑誌に登場。『10分つまみ』(宝島社)『みんな満足 ご馳走おつまみ』(二見書房)などなど書籍でもワインとの相性抜群なレシピを多々紹介。「『ワインが目立つ、料理が際立つ』で終わらず、結局はワインと料理を交互にどんどん行きたくなるのが理想のペアリングです」。
「好きな品種はピノ・ノワール」なら、避けて通れぬドイツ
ピノ・ノワール好きを自負する人の大部分は、もうドイツ産の実力に気づいている。世界中で高品質なピノ・ノワールへのニーズが高まり、とくに一部の地域で価格が上昇する一方、ドイツは一貫した品質と比較的安定した価格を提供し続けているためだ。
ピノ・ノワールのドイツ名「シュペートブルグンダー(Spätburgunder)」は、「シュペート:遅い」「ブルグンダー:ブルゴーニュ」と、遅く熟すブルゴーニュ産を意味する。フランス・ブルゴーニュ発祥のブドウながら、そのお隣りドイツでも9世紀にまで遡る記録が残り、現在はドイツの栽培面積ランキングで1位のリースリングに次ぐ2位。ドイツ赤には欠かせない品種である。
「ドイツのピノ・ノワールは、よく『軽やか』と表現されます。自然で爽快な酸味と、フレッシュで生き生きとしたキャラクターによるものでしょうが、 実際は産地や生産者によってバリエーションがあり、どこかの産地と比較して『ドイツ産ピノは軽め』と一括りにするのは、ちょっともったいない」
と語るのは、ン十年も世界の銘醸ワインを味わってきた料理研究家の林“グー”幸子先生。
ドイツワインはなんだかとっつきにくいと感じているピノ好きさんへは、
「まずは産地について少しでも知っておくと、すぐドイツ産ピノを把握できるようになりますよ」
とアドバイス。
なら、今回登場するワインの3産地だけでもここで軽くおさえておこう。

<ピノ好きさんは要チェック、ドイツの3地方>
・アール地方
アール川沿いの急斜面に畑が広がる、ドイツ髄随一の赤ワイン生産地。生産量の8割が赤ワインで占められ、そのほとんどがピノ・ノワールだ。
・ファルツ(プファルツ)地方
ドイツではラインヘッセン地方に次ぎ2番目に大きい生産地。全生産量の3割が赤で、温暖な気候を反映し果実味あるピノ・ノワールがお得意。
・バーデン地方
温泉保養地でも有名なバーデンは、ドイツ産ピノ・ノワールの半数を生産。フランスのアルザス地方とはライン川を隔てて南北に長く寄り添う。

ドイツ産ピノに、簡単レシピのヘルシー料理3選
タンニンや果実味が主張し過ぎないドイツ産ピノ・ノワールは、フードフレンドリーなワインだ。いっぽうで各ワインに個性があるからこそ、料理次第でユニークかつ新たな魅力がグンと増す面白さもある。
ドイツの3生産地からやってきたピノ・ノワールを前に、グー先生が提案するのは秋に食べたい癒しの料理3品。各ワインの特徴から引き出されたペアリングのポイントも抑えていこう。
アール地方のピノ・ノワールと「鮭と根菜のおかずサラダ」


マイヤー・ネーケル
シュペートブルグンダー 2023
参考税抜価格:4,800円(エノテカ)
ドイツの最北ワイン産地の一つであり、ピノ・ノワールの銘醸地でもあるアール地方で、ブルゴーニュを意識した醸造法にいち早く取り組んだマイヤー・ネーケル。クローンや遺伝子に着目、詳細なデータに基づいたアプローチも取り入れ、ピノ・ノワールの第一人者に。
グー先生のペアリングコメント
若いアメリカンチェリーのニュアンスと引き締まった酸で、涼やかな印象のワイン。ピノ・ノワールには濡れ落ち葉のような土っぽさがあり、似たような香りを持つごぼうやれんこんなどの根菜がよく合います。
ワインの強い酸を丸くしてくれる塩気を料理に持たせたいとき、ストレートな塩だけでは味がケンカしがちなので、ふくよかさのある発酵調味料を。また、ワインの果実味が収まった後に広がる青い香りに合わせ、料理に複数のハーブをプラスしました。甘さがあり酸味がまろやかなバルサミコも、ワインの酸の鋭さを『飲みやすさ』に変えてくれる効果がありますよ。
アーシーなピノに、根菜が合わないはずがない! 「鮭と根菜のおかずサラダ」
●材料(2人分)
刺身用サーモン・・・・・・・・120g
根菜・・・・・・・・・・・・・200~250g(れんこん・ごぼう・さつまいもなど)
白菜・・・・・・・・・・・・・2枚
<マリネ液>
ハーブのみじん切り・・・・・1/4カップ(バジル、タイム、ディル、イタリアンパセリなど)
コルニション・・・・・・・・3本※(小さなきゅうりのピクルス)
バルサミコ・・・・・・・・・大さじ2
中辛味噌・・・・・・・・・・大さじ1
オリーブ油・・・・・・・・・大さじ2
●作り方
①サーモンは塩を振ってペーパーで包んで1~2時間おき、5~6mm厚さに切ってリネ液をからめ、冷蔵庫で休ませます。
②根菜は薄切りにしてサッと茹で、ザルにあけてそのまま冷まします。

③白菜は一口大にちぎり、水切りします。
④1・2・3を盛り合わせ、残ったマリネ液をかけます。
★サーモンは、お手頃価格の養殖物でOK! もし合わせるドイツ産ピノがよりパワフルなら、スモークサーモンを使うのもアリです。

「鮭と根菜のおかずサラダ」
ファルツ地方のピノ・ノワールと「豚肉のきのこ包み照り焼き」


ヴァイングート・フォン・ウィニング
フォン・ウィニング ピノ・ノワール ロワイヤル トロッケン 2022
参考税抜価格:5,300円(モトックス)
伝統とモダンを融合させたタイポグラフィが印象的なラベル同様、18世紀から続く栽培の歴史に環境保全やワイン・ツーリズムといった現代的な哲学を加え運営されるワイナリー。こちらのワインは一部新樽を含む樽熟成18カ月でボリューム感あり。
グー先生のペアリングコメント
華やかな香りに個性が光るピノ・ノワール。まだまだフレッシュな果実味もあり、そこを活かすには、きのこと肉の旨みを口中で合わせ、すべてが一体となった複雑味を楽しんでもらう趣向に辿り着きました。「合わせる料理に豚肉の旨味は必要。でもタンニンの穏やかなワインには、余計な脂分をそぎ落とさなきゃ」ということで、ワインで蒸し焼きするレシピに。
実際にワインと合わせてみたら、ワインの果実味がより引き立てられましたね。ドイツ産ピノの様々な表情が時間とともに主張しては消えていく間、料理は片栗粉のとろみで旨味が持続し、ひと口で様々なペアリングが楽しめます。
シットリきのこの旨みでワインがランクアップ♪ 「豚肉のきのこ包み照り焼き」
●材料(2人分)
豚バラ薄切り・・・・・・・・・200g
きのこの粗みじん切り・・・・・1カップ(エリンギ・シメジ・舞茸など)
バター・・・・・・・・・・・・大さじ1
赤ワイン・・・・・・・・・・・大さじ4
みりん・・・・・・・・・・・・大さじ1
水・・・・・・・・・・・・・・大さじ2
オイスターソース・・・・・・・大さじ1/2
片栗粉・塩
●作り方
①きのこはざく切りにし、片栗粉を大さじ1/2振って絡めます。

②フライパンにバターを入れて火にかけ、バターが溶けてきたら1を入れて炒め合わせ、しんなりすれば塩で淡く味付けし、冷まします。
③豚バラ肉を少しずつ重なるように並べ置いてシート状にして塩をふり、2を横一文字において巻き込み、表面に片栗粉をまぶし、爪楊枝を数カ所刺します。



④フライパンを中火で熱して3を入れ、出てくる油をペーパーで吸い取りながら転がして表面に焼き色をつけ、赤ワイン・みりん・水を廻し入れて蓋をし、蒸し焼きにします。
⑤汁気がなくなれば蓋を外し、オイスターソースを肉にかけて絡めます。
★爪楊枝の間に包丁を入れた後、一串ずつ小皿に取り分けてから食卓に並べても。

「豚肉のきのこ包み照り焼き」
バーデン地方のピノ・ノワールと「茄子ボートグリル 餃子風味」


マルティン・ヴァスマー
マルクグレーフラーラント シュペートブルグンダー 2022
参考税抜価格:4,400円(ヘレンベルガー・ホーフ)
もともと野菜農家だったマルティン・ヴァスマーは、37歳でワイン造りを志しブルゴーニュへ。「安旨ワイン」の産地として知られるバーデン最南の地元に戻り、数々の賞を受賞する本格派ピノ・ノワールの生産を果たした、遅咲きの花だ。
グー先生のペアリングコメント
重量を感じるワインですね!タンニンと果実味のバランスがとれていて複雑味もあります。合わせる料理はそれほど複雑な味に仕上げなくても、ワインの複雑さが常に前面に出ていてくれるタイプです。あとは、その重い味わいに料理をどう沿わせていくかが考えどころ。
挽肉とチーズの油脂でワインとボリューム感を揃えつつ、そのままだと最後まで重いだけで終わってしまうので、こしょうを思いっきりきかせました。すると、後味が軽くなるんです。ワインが持つ草のような爽やかさにも、こしょうはよく合うんですよ。
複雑なピノに、ねぎと生姜とこしょうの香る肉詰めを 「茄子ボートグリル 餃子風味」
●材料(2人分)
茄子・・・・・・・・・・・・・2本
豚挽肉・・・・・・・・・・・・160g
長ねぎ(みじん切り)・・・・・・1/2本分
生姜(みじん切り)・・・・・・・10g
ミックスチーズ・・・・・・・・25g
パン粉・・・・・・・・・・・・大さじ2
オリーブ油・・・・・・・・・・大さじ1/2
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オリーブ油・・・・・・・・・大さじ1/2
しょうゆ・・・・・・・・・・大さじ1
粗挽きこしょう・・・・・・・小さじ1/2
●作り方
①茄子は縦2等分に切り、所々切り込みを入れて中身をスプーンでくり抜きます。
②茄子のケースの内側にオリーブ油を塗り、オーブントースターで10分焼きます。
③茄子の中身はみじん切りにして塩を軽く振り、揉んで汁気を絞ります。
④、③・豚挽肉・長ねぎ・生姜・ミックスチーズと合わせて練り、「A」で味付けして4等分にし、それぞれ細長い形に成形して②に詰めます。

⑤パン粉にオリーブ油を絡めて4にふりかけ、オーブントースターで10~12分焼きます。
★パン粉はそのまま載せて焼くと焦げやすいので、オリーブ脂を絡めます。満遍なくカリッと仕上がりますよ。

「茄子ボートグリル 餃子風味」
飲み疲れしないドイツ産ピノには、食べ疲れしない料理がよく似合う。加えて、どのレシピも手順が想像以上にシンプルなので、料理の負担も大きく軽減。
秋の夜長、疲れ知らずの食卓でゆったり過ごそう。
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Wines of Germany公式サイト
https://jp.winesofgermany.com/

