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「ドイツワインをここまで変えた」、若き生産者たち団結の20年

取材・文・写真/山本ジョー

35歳以下のドイツワイン生産者が所属する団体「ジェネレーション・リースリング(GenR)」が、2026年に創立20周年を迎えた。ごくわずかな人数でスタートしたこの団体も、随時メンバーの若返り更新を続けながら今や500人規模の大所帯に成長している。ドイツ全土でワイン造りに携わる若者たちがお互いの悩みやプランを共有し、ワイン好きを惹きつけるようなイベントを次々開催。そんな活動を通じて、彼ら自身のワイナリーだけでなくドイツワイン全体の消費底上げに貢献してきた。
しかし、なぜ若者だけの生産者団体がドイツで発足したのだろう?

ナーエのワイナリー「バウムベルガー(Baumberger)」では、7代目となる姉弟が「手に取りやすい自然派ワイン」を目指し「グロー・グロー(GLOW GLOW)」ブランドを新設。アルコール離れの進む消費者に対しては、ワインらしい飲み応えを持たせたアルコール・フリーも提供する。

ローリング・ストーン誌とコラボする感性
ワイン造りの歴史が長いドイツでは、多くのワイナリーが親から子へと代々引き継がれてきた。「親の敷いたレールを子が走るなら、将来は安泰」? いやいや、親と同じ働き方をなぞるだけでワイナリーは存続しない。畑を取り巻く自然環境も、世界中のワイン消費者ニーズも、わずか数年で目まぐるしく変化する。
ワイン生産者は、先祖代々続いた稼業を自身の代で無残に終えられないプレッシャーのなか、時流を読む術を身につけなければならないのだ。と同時に、自らワイナリーを建ち上げた若者にもまた、資金、情報、人脈の不足が常に付きまとう。

GenR発足前から、若い生産者たちは各地域で自発的に小さな勉強会を開き、未来設計図を模索していた。そこで、彼らがスムーズにタッグを組める手伝いをしたのが、ドイツワイン全般の広報活動を行う組織「ドイツワイン・インスティテュート」である。GenRが誕生してからは、ワイン見本市へのブース出展といったオーソドックスな活動だけでなく、音楽カルチャー雑誌『ローリング・ストーン』やベルリン・ファッション・ウィークなど他分野とのコラボレーションにも挑戦。アルコール離れの傾向が強まる若年消費者層にも、同年代の生産者によるイマドキなアプローチはよく響くのだ。

2026年6月マインツにて、GenRの20周年を記念しイベントが開催された。生産者たちはRenRの新スローガン「one for all, all for wine」がプリントされたシャツを着用。三銃士の名フレーズ「ひとりは皆のため、皆はひとつの目的のため」をもじり、「~皆はワインのため」と遊び心はバッチリ。

日本でも第一次ワインブームの先入観から脱却へ

日本でドイツワインが最初に持てはやされたのは、かれこれ半世紀前。1970年の大阪万博などを機として欧米の食文化への興味が高まった頃、ワインビギナーでも飲みやすい甘口ドイツワインが多数出回るようになった。いわゆる「第一次ワインブーム」の到来だ。 ところが、ブームの功罪として「ドイツワイン=甘口」のイメージが強烈に残ってしまう。果汁糖度と連動し「糖度が高いほど等級が上がる」というドイツワイン独自の格付けもまた、辛口の白や赤ワイン、スパークリングがスルーされる流れに拍車をかけた。
こういったドイツワインへの先入観がなかなか払しょくできなかったのは、諸外国も同じ。しかし、昨今の気候変動が冷涼な産地へ目を向けるきっかけを作り、自然派ワインブームは、ネームバリューにこだわらずワイン単体の実力を見定める風潮を後押し。地味なポジションながら産地のポテンシャルと醸造技術の高さは揺るぎないままであったドイツワインが、若者の情熱と創造性で、ようやく時流にうまく乗りつつある。

restaurants
フランクフルト空港から車で30分の町・マインツには多国籍料理店があちこちに。大手スーパーには寿司コーナーが設置され、「おいしいものは世界中からどんどん受け入れる」懐の深さが見て取れる。

ともすれば、ドイツ人には「頑固で古めかしい」とのステレオタイプがついてまわる。しかし、実際はユーモア好きで、人生を豊かにするワインと美食を愛し、必要に応じて新しい知識や文化を吸収する柔軟性がある人が多い。そしてまた、新しい試みへ果敢に挑む精神が顕著なことも、若いドイツワイン生産者から伝わってくる。

しばらくドイツワインから離れていたワイン好きは、ワインショップで「今って、こんなドイツワインがあるんだ」と驚かされるはず。家飲みワインの産地選びがマンネリ化している皆さん、次はドイツワインに狙いを定めてみて。


GenR20周年記念イベントにて。(左上から時計回りに)白の銘醸地としてよく知られるモーゼルだが「赤もアリなんです!」と胸を張る「マルガレーテンホフ」のニコラ・ウィーバー氏。(上段・左)。
ナーエ「マテルン」のヘニンヒ・マテルン氏は、火山性土壌でパワフルなリースリングを造る。(上段・中央)。
ラインヘッセン「ドクトル・ヒンケル」のペーター・ヒンケル氏はシラー種をあえて新世界のつづり「Shiraz」とし、モダンさをアピール。(上段・右)。 
メルローのボトルを手に、「『このワインの産地はどこ?想像つかない!』と驚かせたいです」と笑うファルツ「ドクトル・ヨゼフ・コーア」クリストファー・コーア氏。(下段・左)。 
モーゼル「ショルテス」のアンナ・ショルテス氏は、旧来の白ベースから藍&金色の新ラベルに変更。(下段・中央)。
フランケンの伝統的なボックスボイテル型ボトルながら「中身のワインはモダン」と語る、「バルダウフ」のヤニック・バルダウフ氏。(下段・右)。


バーデンからやってきた「ノル」のファビアン・ノル氏は、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、シャルドネをブレンドした白でオリジナリティを出す。(左上)。 
ピノ・グリのオレンジワインにアメリカンオークを使用するなど、ラインガウでパワフルな造りを実践する「クレッパー」のトビアス・クレッパー氏。(左下)。 
ラインヘッセン「シュテンナー」のマレンカ・シュテンナー氏。「ブドウのタイプに準じた色とかたちで、それぞれの味わいをイメージできるデザインです」と、カラフルなボトルを紹介。ワインの知識がなくてもインスピレーションで選べるのが、ワインビギナーにもありがたい。(右)。

ジェネレーション・リースリング 公式サイト
https://www.generationriesling.de/

Wines of Germany公式サイト
https://jp.winesofgermany.com/

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山本ジョー

ライター。2000年よりワインや食にまつわるテキスト制作を請け負ってきたが、ときおりタレント本や鉄道本にも携わる。 畑で細々と野菜を作り、猟師から獲物を分けてもらうカントリーライフを堪能中。 好きなものは旅、犬、カジュアル着物。 小型船舶免許1級を取得して以来、船の操縦経験ゼロ歴を更新し続ける「なんちゃって船長」でもある。

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