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WINE

シャンパーニュを「飲む」から「体験する」へ アンリ・ジローが提案する究極のシャンパーニュ・エクスペリエンス

文・写真/島悠里

My wine journey by Yuri Shima ~世界のワイン便り Vol.20

text & photo by Yuri Shima

シャンパーニュ地方のグラン・クリュ(特級)アイ村には、ワインを造る場所でありながら、単なる「ワイナリー」という言葉だけでは表現しきれないメゾンがあります。それが、日本でも高い人気を誇るアンリ・ジロー(Henri Giraud)です。

メゾンからはアイ村を一望できる

ここでは、ワインのテイスティングはもちろん、メゾンに隣接する「マノワール・アンリ・ジロー&スパ(Manoir Henri Giraud & Spa)」に宿泊し、スパでトリートメントを受け、さらにメゾンのシャンパーニュに合わせたペアリング・ディナーを楽しむことができます。シャンパーニュを軸に、食、滞在、ウェルネスを一体として体験する、まさに「アンリ・ジロー・エクスペリエンス」。

左)メゾンを代表する「Esprit Nature」、(右)「Arogonne」希少なロゼ

2025年に創業400年を迎えたアンリ・ジローは、アイの偉大なテロワールを背景に、特にピノ・ノワールと樽へのこだわりを貫き、独自のスタイルを築いてきた家族経営のメゾンです。イギリスやドバイなど、世界の富裕層にも多くのファンを持ちますが、とりわけ日本との縁は深く、現在の知名度とブランド力を築くうえで、日本市場からの長年にわたる支持は大きな役割を果たしてきました。

12代目当主のクロード・ジローは、樽への徹底した探究やラタフィアの復興など、独自のビジョンによってメゾンの個性を切り拓いてきました。現在はクロードの長女エマニュエルが社長を務め、醸造責任者は次女アンヌの夫、セバスチャン・ル・ゴルヴェ(Sébastien Le Golvet)が担うなど、家族それぞれが深く関わっています。

醸造責任者のセバスチャン・ル・ゴルヴェ。右側に並ぶ樽は、鏡板(両端の蓋部分)がセラミックでできている。

オーク樽への探求

アンリ・ジローのワイン造りには数々のこだわりがありますが、その中でも象徴的なのが、樽への探究です。シャンパーニュ地方のアルゴンヌの森で、樽材となる樫(オーク)の木を選定するところから始まるアンリ・ジローの樽作りは、プレステージ・キュヴェ「Argonne(アルゴンヌ)」の名にも表れているように、ワイン醸造において大事な役割を担っています。例えば、樽を作るときには、その木が森のどの場所で育ったのか、木のどの部分を使うのかまで細分化します。いわばアンリ・ジローのワインは、アイ村で育つピノ・ノワールを中心としたブドウだけではなく、そのブドウを育む土地、そして樽の素材となる樫の木が育つ土地までも表現していると言えます。 そして、さらに興味深いのが、醸造責任者セバスチャンが開発した鏡板(両端の蓋部分)がセラミックでできた独自の樽です。木材がワインに与える影響を調整しながら、より繊細でバランスの取れた熟成を目指す試みで、実際に通常の樽とセラミック製の蓋を用いた樽で醸造したワインを比較すると、その違いは明確でした。伝統的な樽を使いながらも、その構造そのものを見直し、より自分たちに理想的なワインを創り出すものを追求するという、アンリ・ジローらしい探究心が表れています。

マノワール・アンリ・ジロー

シャンパーニュを、そしてアンリ・ジローというメゾンをより深く体験したいなら、ぜひワイナリーに隣接するオーベルジュ、「マノワール」への滞在をおすすめします。ここは5室のみのアットホームな宿で、心地よいラグジュアリーと細部まで行き届いた心配りにあふれた空間です。 ウェルカム・シャンパーニュに始まり、部屋によってはブドウ畑を見渡すテラスでゆっくりと過ごすこともでき、また朝は部屋で提供される朝食とともにシャンパーニュを楽しむなど、滞在の時間そのものがアンリ・ジローの世界に包まれていきます。

オーベルジュ「マノワール」

マノワールにはスパも併設され、サウナや温水プールに加え、マッサージやフェイシャル・トリートメントなども用意されています。今年、フランスの「Best Signature Spa Treatment」の金賞にも選ばれるなど、そのクオリティも高く評価されています。

そのなかでも「Craÿothérapie®」は、シャンパーニュを象徴する土壌である石灰(チョーク)を使ったユニークなトリートメントで、現役の医師でもあるアンヌのアイデアから生まれ、医学的な知見をもとに開発されたもの。アンヌは、「自然の美をもたらす海洋植物由来のチョークと、私が専門とする温泉療法、そして栄養美容学を組み合わせ、その相乗効果によって、健やかな美しさを追求しています」と語ります。

実際にチョークで全身を包みこまれるようなトリートメントを受けると、チョークの効果によるものか、肌が柔らかくしっとり保湿されたように感じられました。最後は、湯船で温まりながら、シャルドネ100%のアンリ・ジロー「Blanc de Craie」(Craieはフランス語でチョークのこと)を楽しむことができます。

シャルドネ100%の「Blanc de Craie」と石灰(チョーク)を使ったユニークなトリートメント

そして、旅のハイライトの一つである食事も、ここならではの体験「ターブル・エクスペリエンス(Table Experience)」が待っています。アンリ・ジローのシャンパーニュそれぞれに緻密に料理を合わせた、このペアリング・ディナーでは、メゾンのソムリエが、各ペアリングのコンセプトを丁寧に解説してくれます。食事の最後は、シャンパーニュ地方の甘口酒精強化ワインである自家製ラタフィアで締めくくり、シャンパーニュの余韻に浸りながら一日を終えることができます。

ワイン、食、宿泊、ウェルネス。そのすべてにアンリ・ジローのこだわりが込められており、シャンパーニュを味わうだけでは得られない、シャンパーニュとアンリ・ジローのエスプリに深く没入できる時間でした。

マノワール・アンリ・ジロー&スパ(Manoir Henri Giraud & Spa)
https://www.manoir-henri-giraud.com/en

(右)アンリ・ジローのコマーシャル・ディレクターStéphane Barlerinさん、(中央)筆者、(左)Guillaume Jourdanさん

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島 悠里

大学卒業後、外資系投資銀行勤務、米国ロースクール留学。その後、国際弁護士事務所勤務を経て、パリの国際機関で勤務(国際貿易・投資法が専門)。 ワインが日常にある、フランスやカリフォルニアに住んだことがきっかけでワインに魅了され、2018年にサンフランシスコでWSET Diplomaを取得。2019年のロンドンでの卒業式では、総合上位の成績でInternational Wine and Spirits(IWSC)賞を受賞。 ワインの分野では、国内外のメディアでのワイン記事執筆、ワインセミナーでの講師、ワインイベントのオーガナイザー、国際的なワイン品評会でジャッジを務めるなど幅広く活動。特にシャンパーニュに力を入れている。 米国ニューヨーク州弁護士 WSET® Level 4 Diploma WSET® Certified Educator&Level 3 Internal Assessor J.S.A. 認定ワインエキスパート IWSC ジャッジ(シャンパーニュ・スパークリングワイン部門)

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