~TENDREとTHE BUSKERが奏でた「Triple Sessions」第二弾~
文/山田 靖
ウイスキーと音楽。
考えてみれば、ずいぶん昔から相性のいい組み合わせだ。バーのカウンターでグラスを傾けながらジャズを聴いたり、好きなレコードをかけて夜更けに一杯を楽しんだり。けれど、「このウイスキーだから、この音楽」というところまで意識することは、案外少ない。
そんな酒と音楽の関係を、ひとつの“体験”として仕立てたイベントが、アイリッシュウイスキー「THE BUSKER(ザ バスカー)」による「THE BUSKER Triple Sessions」だ。

2026年9月2日、渋谷のTHE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-で開催された第二弾。その夜のゲストとして迎えられたのは、アーティストのTENDREだった。
「3」という数字から生まれた、音楽とのセッション
そもそも、なぜ「Triple Sessions」なのか。
THE BUSKERを語るうえで重要なのが、「3」という数字である。
アイルランドのロイヤルオーク蒸溜所で造られるTHE BUSKERは、バーボン樽、シェリー樽、マルサラワイン樽という3種類の樽で熟成した原酒をブレンド。その「トリプル・カスク熟成プロセス」によって、ブランドが「トリプル・スムース」と表現する味わいが生まれる。
ならば、その「3」を音楽でも表現してみよう。
「3つの楽曲・3つの物語・1つの忘れられない最高の夜」。
そんなコンセプトから生まれたのが「THE BUSKER Triple Sessions」だ。6月に開催された第一弾に続き、第二弾ではTENDREの音楽の原点から現在、そして彼のサウンドを形づくってきたルーツを辿っていく。
つまりこれは、人気アーティストのライブを観ながらウイスキーを飲むだけのイベントではない。
グラスの中に異なる樽の個性が重なってひとつの味わいが生まれるように、ひとりのアーティストの現在にも、さまざまな音楽や経験、時間が重なっている。その二つの「重なり」を同じ空間で味わおうというわけだ。

TENDREの音を、ウイスキーとともに辿る
TENDREは、河原太朗によるソロ・プロジェクト。ベースだけでなくギター、鍵盤、サックスなどを操り、演奏のみならず楽曲提供やプロデュースまで手掛けるマルチプレイヤーだ。
そんなTENDREだからこそ、「音楽の軌跡を辿る」という今回のテーマが面白い。

完成された一曲だけを聴くのではなく、その音楽がどこからやってきたのかを知る。そして再び音を聴く。
すると、同じ曲でも少し違って聞こえてくる。
これはワインやウイスキーにもよく似ている。何も知らずに飲んでもおいしい。しかし、どんな土地で、どんな原料から、どんな造り手によって生まれたのかを知ってからグラスに戻ると、さっきまで気づかなかった香りや味わいが見えてくることがある。
音楽にも、そんな瞬間があるのだ。
しかも舞台は、音を聴くために設計されたTHE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-。上質なサウンドに身を委ねながら、手元にはTHE BUSKERのグラス。
音を「聴く」、酒を「味わう」という二つの感覚が、いつの間にかひとつの時間になっていった。


音楽は、ウイスキーを少しおいしくする?
THE BUSKERが造られるロイヤルオーク蒸溜所は、アイルランド・カーロウで2016年に操業を開始。「シングルモルト」「シングルポットスチル」「シングルグレーン」の3タイプを生産できる蒸溜所で、THE BUSKERはトロピカルフルーツを思わせるフレーバーも特徴としている。
もちろん、ウイスキーはウイスキーだけで楽しめる。
音楽もまた、音楽だけで成立する。
けれど、この夜に感じたのは、異なるものを組み合わせることで、それぞれの魅力が少し違った角度から見えてくる面白さだった。

料理とワインを合わせることを「ペアリング」と呼ぶなら、音楽とウイスキーにだってペアリングがあっていい。
グラスを口に運び、音に身を委ねる。TENDREの奏でる音楽を追いかけながら、またひと口飲む。
そこでは、いつもの一杯が少し違って感じられ、いつもの音楽にも新しい表情が見えてくる。
「THE BUSKER Triple Sessions」第二弾は、そんな音楽とウイスキーの幸福な関係を楽しむ一夜となった。
そして会場に集まった人たちもまた、思い思いにグラスを傾けながら、その“ペアリング”を楽しんでいた。
いい音楽がある夜には、いい一杯が欲しくなる。
そして、いい一杯があると、音楽はもう少し深く心に残る。
THE BUSKERが提案したのは、もしかするとそんなシンプルで贅沢な夜の過ごし方だったのかもしれない。
