文/紫貴 あき
紫貴あきの「今夜」ワインが飲みたくなるはなし 37 the glass of wine
2006年に公開され、大ヒットした『プラダを着た悪魔』。ファッション誌「RUNWAY(ランウェイ)」の鬼編集長ミランダ・プリーストリーと、ファッションにはほとんど興味のなかった新人アシスタント、アンディことアンドレア・サックスの物語です。
メリル・ストリープ演じるミランダは、ファッション界に大きな影響力を持つ人物。一方、アン・ハサウェイ演じるアンディは、彼女のもとで働くうちに華やかな世界に染まっていきますが、最後は自分らしい生き方を選び「RUNWAY」を去りました。
それから約20年。『プラダを着た悪魔2』で再会する二人。今回も目を奪われるのは、洗練された衣装やバッグ、シューズなどのファッションです。スクリーンに映し出されるアイテムを眺めているだけでも楽しい作品ですが、ワイン好きなら、登場人物たちが20年経った今、「何を飲んでいるか」も気になりませんか。
隙を見せないミランダが「もっとロゼを」
なかでも目を引くのが、ロゼワインです。舞台は、ミランダがハンプトンズの自宅で開く華やかな週末のガーデンパーティー。有名人が集う中、アンディも招かれます。
仕事では隙を見せないミランダが、ほろ酔いで笑いながらアンディとゴシップを交わすなど、普段とは少し違うミランダの姿が描かれます。そんな肩の力が抜けたプライベートな時間に、彼女が手にするグラスにきらめくのがロゼワインなのです。そしてミランダの台詞は「もっとロゼを」。シャンパーニュや誰もが知る高級ワインでも似合いそうなミランダが、なぜロゼなのでしょうか。

ロゼは気軽なワインから食卓の主役へ
ロゼといえば、プールサイドで楽しむサマーワイン、あるいは食事の始まりに乾杯するための一杯。そんなイメージがもたれがちです。ところが映画では、ロゼが乾杯だけで終わっていません。ロゼを中心に、食事や会話をゆっくり楽しむ時間が描かれているのです。
実はロゼワインは、軽やかでフレッシュなタイプだけではありません。品種やつくり方によって、果実味や酸、ほどよいタンニンを備えたものまでスタイルはさまざま。シーフードや野菜だけでなく、肉料理にも合わせられます。こういった料理とともに楽しむロゼが「ガストロノミック・ロゼ」です。「最初はロゼ、魚料理には白、肉料理には赤」とワインを替えるのではなく、一本のロゼを軸に、前菜からメインまでペアリングしていくことができるのです。
ミランダのロゼは「Quiet Luxury」?
そして興味深いのが、このパーティでロゼを選んだのがおそらくミランダだということです。ミランダは、ファッション誌の編集長として、長年トレンドの最前線にいる人物です。そんな彼女が約20年後、仕事場を離れたプライベートな時間に手にしているのがロゼだったとはメッセージがあります。
かつてロゼには「カジュアル」「夏向き」といったイメージもありました。しかし現在は、産地や、つくり方にこだわったプレミアムロゼが数多く造られ、レストランの食中酒としても選ばれる機会が増えています。
それは、ファッションでいう「Quiet Luxury(クワイエット・ラグジュアリー)」にも少し似ているかもしれません。大きなロゴやブランド名で価値を示すのではなく、素材や仕立ての良さを知る人が、さりげなく選ぶ選択肢なのです。
ワインも「有名だから」「高いから」ではなく、自分がおいしいと思うもの、自分のスタイルに合うものを選ぶ人が増えているのです。
ミランダのグラスから見える、今どきのワイン
約20年前、「何を着るか」にも意味があることをアンディに教えたミランダ。そんな彼女が今、さりげなくロゼワインを選んでいる。映画を観るときは華やかな衣装やバッグに目を奪われるのも◎、でも、ぜひグラスに注がれたワインにも注目してみてください。今どきのワインの楽しみ方が見えてくるはずです。 「ミランダのロゼはどのワイン?」と映画ファンなの中でささやかれているのが下記の2本

シャトー・ロマサン・ロゼ
ドメーヌ・オット
CHATEAU ROMASSAN ROSE DOMAINES OTT
産地:フランス プロヴァンス
品種:ムールヴェードル60%、サンソー20%、グルナッシュ20%
参考価格:6,200円
フランスのプロヴァンスを代表するロゼワイン。フランボワーズと白コショウの香り。ボトルの形が特徴的。

ル・ロゼ
シェーヌ・ブルー
Le Rosé Chêne Bleu
産地:フランス プロヴァンス
品種:グルナッシュ、シラー、サンソー、ムールヴェドル、ロール
フランスの南ローヌ地方のヴァントゥでつくられるロゼ。畑は標高の高い位置にあり、柔らかな果実味とすっきりとした酸が味わえる。
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